著者
神谷 知至 本田 孝也 鈴木 修 桐生 恭好 高橋 伸 角本 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.759-765, 1985-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性甲状腺炎・慢性膵炎を合併した原発性胆汁性肝硬変(PBC)の男性症例を報告する.症例は66歳男性,全身倦怠感と肝腫大あるため入院となった.検査成績で血清Al-P値が28.5K-Auと高く,軽度の肝機能障害も示した.血清抗ミトコンドリア抗体および抗甲状腺抗体は陽性であった.免疫二重拡散法にて抗ミトコンドリア抗体のCおよびDが確認されたが,特にDの検出は本邦で初例である.甲状腺生検は慢性甲状腺炎像を呈し,肝楔状生検像は典型的な慢性非化膿性破壊性胆管炎を示した.膵機能は中等度に障害され,ブドウ糖負荷試験は糖尿病型であった.Sicca症候群も後に出現した.結局本症例を慢性甲状腺炎・慢性膵炎・sicca症候群を合併したPBCと診断した.多臓器障害を強く示唆し,しかも今までにほとんど検出されたことがない抗ミトコンドリア抗体Cおよび特にDが認められた男性のPBC例を報告した.
著者
土屋 雅春 石井 裕正 宮本 京 荒井 正夫 奥野 府夫 山内 浩 海老原 洋子 高木 俊和 神谷 知至 陶山 匡一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1606-1613, 1980-12-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
13
被引用文献数
2

肝細胞固有の機能の一つとして重要視されている糖新生能を,糖原性アミノ酸であるL-Alanine (以下Ala)を負荷したときの血糖上昇度および糖代謝調節諸因子の動態を観察することにより判定し,本検査の肝細胞予備能判定法としての有用性につき検討した.対象は慶大内科において確診した肝硬変症17例(代償期8例,非代償期9例)および健常対照例6例の計23例である.15時間絶食後に10% Ala溶液300mlを30分間で静注し経時的に180分まで血糖, IRI,乳酸,アラニン,IRG値を測定した.Ala負荷後,対照群では,点滴終了直後に約10mg/dlの血糖上昇を認め,以後速やかに下降したが肝硬変代償期群では血糖上昇度は7mg/dlと低下傾向をみたが有意差はなかった.これに対して非代償期群では血糖上昇度は全くみられず,むしろ低血糖傾向すら示した.この非代償期群ではAla負荷後の血中乳酸・アラニン値も停滞しAlaの利用障害が示唆された.Ala負荷後血糖上昇のみられなかった群の予後は不良であり,本試験は肝細胞予備能判定の手段として有用であることが示唆された.