著者
平田 恭洋 尾上 洋 藤岡 要彰 西尾 洋紀 孫 尚孝 益山 光一 北垣 邦彦
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.3-15, 2022 (Released:2022-01-31)
参考文献数
15

薬局薬剤師は,病院薬剤師をはじめとした医療従事者と連携することにより,切れ目のない医療を地域全体で支える地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を担っている.入退院時における患者の服薬状況などの情報共有は,連携の重要な一つであり,医療従事者の業務負担軽減や医療の質向上につながる可能性がある.本研究は,薬局薬剤師が入院前の患者の服薬状況などの情報を提供することが,病院薬剤師の負担軽減や円滑な業務遂行につながるかを検討することを目的とした.病院薬剤師を対象として入院患者の持参薬管理の現状と薬局薬剤師からの情報提供の有用性などについて質問紙調査し,その結果をCS分析に付した.薬局薬剤師による情報提供は病院薬剤師業務に対する有用性が高いことが示唆された.しかし,薬局薬剤師が提供する文書を使用する病院薬剤師は20%にとどまり,お薬手帳に比べて信頼性が低かった.その課題解決には,患者の服薬情報を一元的・継続的に把握する「かかりつけ薬剤師・薬局」を一層推進していくことと,その情報が薬局薬剤師・病院薬剤師間でスムーズに共有される連携体制の構築が求められる.
著者
小林 江梨子 池下 暁人 孫 尚孝 櫻田 大也 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.141-150, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
9

後発医薬品への 「変更不可処方せん」 について調査を行った. 2018年7〜8月の任意の1週間における, 一般社団法人日本保険薬局協会の会員薬局2,667薬局で受けつけた全処方せん945,668枚のうち, 変更不可処方せんは103,378枚 (10.93%) であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合は, 5%以下の薬局が46.38%と最も多く, つづいて0%の薬局が17.51%であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合の平均値は10.22%であるが, 中央値は2.74%であり, 半数以上の薬局で, 変更不可処方せんの割合が2〜3%程度である一方で, 変更不可処方せんの割合の大きい薬局も存在する等, 薬局間でばらつきが大きいことが示された. 九州・沖縄地方では, 中央値が0.70%で最も小さく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局が, 75%以上を占めていた. 北海道地方では, 平均値が12.9%で最も大きく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局の割合は, 最も少なく, 61.5%に過ぎなかった. 平均値は地域によって異なっており, 北海道地方, 中部地方, 近畿地方, 四国地方で10%以上となっていた. 後発医薬品へ変更可能な処方せんにおいて, 後発医薬品へ変更しない主な理由は, 94.94%の薬局が指摘した “患者の意向” であった. そのほかの具体的な理由 (記述式) のうち, 最も多かったのは, 処方元からの口頭などによる指示であった. 過半数の薬局において変更不可処方せんの割合が小さい一方で, 変更不可処方せんの割合が大きい薬局も存在することから, このような薬局に焦点を当てた政策も必要である. 今後は, さまざまな特性の薬局を含めた調査が必要である.