著者
赤羽 優燿 能城 裕希 櫻井 浩子 益山 光一
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.69-78, 2019 (Released:2019-05-31)
参考文献数
18

わが国において導入が検討されているリフィル制度が臨床現場で定着するためには, その前提となる一定の長期処方が実施されている必要がある. 本稿では比較的長期に処方がされていると考えられる高血圧患者において, 現在の通院頻度を調査することで, 長期処方の実態を明らかにすることを目的とした. また, リフィル制度に関する患者の期待を調査する目的で, 患者の通院負担についても調査を行い, 今後の課題について検討した. 保険薬局チェーン店において2017年5月の6日間に来局した患者のうち, 有している疾患が高血圧症のみで, コントロール良好な降圧薬を1~2剤服用する患者を対象 (n=172) に, 現在の通院頻度と患者の希望する通院頻度や血圧の自己管理についての基礎データを収集した. 調査の結果, 79.7% (n=137) が1カ月に1回通院していることがわかった. 全体の4人に1人が頻度を減らしたいと考えており, その理由として 「血圧が安定しているから」 と回答した人は半数を超えていた. また90.7% (n=156) の患者は血圧計を所持しているが, 毎日測定しているのは32.0% (n=55) であった. 服薬アドヒアランスについて年齢との比較分析を行った結果, 66歳以上では飲み忘れがない人が有意に少なかった. 本調査により安定な高血圧患者において, リフィル処方の対象となる長期処方は少ないことが明らかとなった. 患者の負担を軽減し, 適切な長期処方治療を実施するためには, 薬剤師には患者に服薬の重要性を指導し, 家庭血圧の管理とともに自己管理をサポートすることが期待される.
著者
平田 恭洋 尾上 洋 藤岡 要彰 西尾 洋紀 孫 尚孝 益山 光一 北垣 邦彦
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.3-15, 2022 (Released:2022-01-31)
参考文献数
15

薬局薬剤師は,病院薬剤師をはじめとした医療従事者と連携することにより,切れ目のない医療を地域全体で支える地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を担っている.入退院時における患者の服薬状況などの情報共有は,連携の重要な一つであり,医療従事者の業務負担軽減や医療の質向上につながる可能性がある.本研究は,薬局薬剤師が入院前の患者の服薬状況などの情報を提供することが,病院薬剤師の負担軽減や円滑な業務遂行につながるかを検討することを目的とした.病院薬剤師を対象として入院患者の持参薬管理の現状と薬局薬剤師からの情報提供の有用性などについて質問紙調査し,その結果をCS分析に付した.薬局薬剤師による情報提供は病院薬剤師業務に対する有用性が高いことが示唆された.しかし,薬局薬剤師が提供する文書を使用する病院薬剤師は20%にとどまり,お薬手帳に比べて信頼性が低かった.その課題解決には,患者の服薬情報を一元的・継続的に把握する「かかりつけ薬剤師・薬局」を一層推進していくことと,その情報が薬局薬剤師・病院薬剤師間でスムーズに共有される連携体制の構築が求められる.
著者
森田 務 井手 眞喜雄 赤羽 優燿 能城 裕希 益山 光一
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.165-174, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
8

医療用医薬品から一般用医薬品への移行について日本の新たな仕組み (スイッチOTC成分の新評価システム) が2015年5月に了承され, 本システムで一般用に転用が適当なものとして公表された成分を製造販売承認申請する際には, 原則として, 添付文書理解度調査の結果を提出することとなった. 本調査の目的は, 2016年1月21日に発出された 「要指導医薬品の添付文書理解度調査ガイダンス案」 を実施するための課題を明確にすることである. 本調査は, ガイダンス案にもとづいてパイロットスタディの位置づけで実施された. 有効成分が実在しない医薬品について添付文書記載要領にもとづき, 模擬添付文書を作成し, 理解度調査をインタビュー方式で実施した. 調査の結果, 合格基準を満たさなかったものの, 本試験において見いだされた注意点をふまえ, 運用上の工夫をすることで, ガイダンス案を遵守した調査実施は可能であると推察された.