著者
酒井 佳奈紀 宇津 貴 近森 康宏 難波 倫子 原田 環 竹治 正展 高原 健 山内 淳
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1793-1797, 2005-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1 2

症例1は保存期腎不全で通院中の68歳の男性. 2005年2月, 左膝の疼痛, 腫脹のため, スリンダクの内服を開始した. スリンダク開始10日後より, 食欲低下, 全身倦怠感が出現. 全身倦怠感が強く, 腹痛, 嘔吐を伴ったため当科紹介. 腎不全の進行, アシドーシス, 高カリウム血症を認め, 直ちに血液透析を施行した. 血液透析中より腹痛が増強, 透析後の腹部CTにてfree airを認めたため, 緊急開腹手術を行い, 回腸末端より120cm口側に穿孔を伴った小腸潰瘍を認めた.症例2は72歳の男性. 2004年10月, 急性心筋梗塞を契機に血液透析に導入され, 近医で維持血液透析を行っていた. 2005年1月末より両下肢の安静時疼痛のため, ロキソプロフェンを内服していた. ロキソプロフェン開始5日後, 突然腹痛が出現し持続し, 近医でイレウスと診断され, 当院に緊急受診した. 腹部全体の圧痛, 筋性防御, Blumberg徴候, 炎症反応の上昇より, 消化管穿孔を疑い腹部CT施行. 肝前面に少量のfree airを認めた. 保存的治療に反応しないため, 翌日開腹術施行. トライツ靱帯より40cm肛門側の空腸に, 径8mmの穿孔を認めた.近年, 非ステロイド性抗炎症薬の使用者に小腸潰瘍が多発することが明らかにされてきた. 腎不全患者は, さまざまな合併症による疼痛を訴えることが多いが, 安易な非ステロイド性抗炎症薬の使用を慎むとともに, 非ステロイド性抗炎症薬の投与中に貧血低アルブミン血症, 腹痛などを生じた場合, 小腸の潰瘍や穿孔も考慮する必要がある.
著者
磯野 哲一郎 國津 侑貴 増田 恭子 平 大樹 荒木 久澄 荒木 信一 宇津 貴 寺田 智祐
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.601-609, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

The proper use of drugs with renal excretion and nephrotoxicity is an urgent problem due to the increase in CKD patients. We have been sharing renal function data on CKD patients among medical staff, including community pharmacists, using the CKD sticker since March, 2012 in Shiga. The CKD sticker is affixed to the medication log book of CKD patients. We performed questionnaire surveys of all community pharmacies in Shiga for five years from 2012 to 2016, and examined the utility of the CKD sticker. The CKD sticker was recognized at 98.6% of pharmacies in 2016. Pharmacies attended by patients with the CKD sticker increased to 68.8% in 2016. In addition, there were no local differences among 9 branches in the Shiga Pharmacist Society in 2016. The number of pharmacies that performed questionable inquiries based on the CKD sticker increased from 7.7% in 2012 to 24.7% in 2016. Pharmacies that inquired about patients with CKD stickers greatly increased in 2016, and the number of prescription changes increased. The spread of CKD stickers was observed throughout the prefecture, and this study demonstrated that the CKD sticker was a useful tool for questionable inquiries. The CKD sticker helped to avoid the use of drugs in cases with nephrotoxicity and to reduce the quantity of drugs in cases with renal excretion, allowing for safe medication of CKD patients.
著者
宇津 貴志 伊藤 弥生
出版者
九州産業大学 人間科学会
雑誌
人間科学 (ISSN:24344753)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-26, 2019 (Released:2019-03-29)
参考文献数
16

自閉症児の母親の長期的心理過程の探索的理解を試みた。先行研究を精査し,①子の発達や将来への不安,②情緒的混乱,③とらわれ,④否認/気にしない,⑤努力/あがき,⑥障害の認知/あきらめ,⑦手ごたえ,⑧安堵,⑨受容という心理変数を用意し,それぞれ三つずつを否定,中間,肯定的心理とした。仮説Ⅰ:①~⑨の流れで展開する。仮説Ⅱ-A:常に肯定・中間・否定の多層的心理が存在する。Ⅱ-B:徐々に肯定的心理が多い状態へ移行する。Ⅱ-C:肯定的感情が多い状態に移行後は発達の節目に否定的感情が強まる。自閉症児の母親8名に半構造化面接を実施した。その結果,仮説Ⅰ:概ね支持されたが,誕生直後から障害が強く疑われる場合には障害告知が『安堵』をもたらし『障害の認知』を速やかに生じさせたことが想定外であった。仮説Ⅱ-A,C:概ね支持されたが,自閉症児とその母親に適したサポートを必ずしも専門家が提供しなかったことがⅡ-Cの特筆点であった。仮説Ⅱ-B:安心できない状態は続き,肯定的心理が多い状態へ移行する時期は定め難かった。