著者
守屋 俊夫
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.114-119, 2020-12-30 (Released:2021-01-13)
参考文献数
30

生体高分子の近原子分解能での構造決定において,クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法が現在急激に発展している.特に,本手法は構造のサイズ,構造の不均質性,組成の変動性のために他の構造決定手法が適用できなかった対象でも直接的な可視化を実現した.単粒子解析は画像処理ヘビーな手法であるため,多種多様なアルゴリズムが試されて既に多くの手順が自動化されており,着々とその手順のルーチン化が進んでいる.しかし,過去の構造解析経験に基づいている人の汎用的な視覚認識や総合的な判断だけは自動化することがこれまでできていなかった.ところが近年になりAI分野に革命をもたらした深層学習技術がこの状況を打破しつつある.そこで本稿では,単粒子解析の様々な処理ステップにおける深層学習技術の応用例を紹介し,その中でも全自動化が実用レベルまで達している粒子ピッキングの代表例としてcrYOLOとTopazを少し掘り下げて説明する.
著者
守屋 俊夫
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.37-42, 2020-04-30 (Released:2020-05-09)
参考文献数
14

近年,加速電圧が200 kVのクライオ電子顕微鏡を使用した単粒子解析で複数のタンパク質構造が3.0 Åより高い分解能で決定された.300 kVに対して200 kVの粒子画像コントラストは高いため,100 kDa未満のタンパク質でも大きなデフォーカス量や位相板を使用せずに高分解能構造を得ることができる.これは,200 kVが小さなタンパク質の構造決定により適していることを意味する.しかし,これまで発表された近原子分解能構造の大多数は300 kVを使用したものである.そこで本講座では,特にコントラスト伝達関数に関連する入力パラメータを見直し,200 kVデータセットに最適なボックスサイズと粒子マスク直径を見つけるための理論と決定手順を紹介したい.また,デフォーカス分布を考慮してこの二つの設定値を最適化するだけで,200 kDa未満のタンパク質の単粒子解析で3.0 Å前後の分解能から顕著な向上を得た実例も紹介する.
著者
藤本 敬介 守屋 俊夫 中山 泰一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.1031-1040, 2008-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

陰関数表現から三角形メッシュを生成する手法としてMarching Cubes 法(MC 法)がよく知られているが,本論文ではその改良手法について述べる.従来のMC 法は,等間隔にグリッドを設定し,格子点に対して境界面との内外判定を行うことでメッシュを生成するため,(1) 格子に対して細い物体が存在するときにそれが欠損してしまう可能性がある,(2) 物体の鋭角部が鈍った形状に変換されてしまう,といった問題が発生していた.本論文では,これらの問題に対し各格子点の位置を物体の形状に対して適応的に移動させ各格子の形状を変形させるDeformed Marching Cubes 法(DMC法)を提案する.DMC 法では,各格子点の周辺を探索して重心点を求め,また格子と等値面の関係から鋭角の頂点座標を求め,それぞれ求めた座標に最も近い格子点を移動させる.これにより,少なくとも格子内に物体が1 つしか存在しない場合においては,(1) 探索精度以上の細い物体の非欠損性の保証,および(2) 鋭角部の再現,を同時に実現した.実験により,MC 法における格子の1 辺の長さに対し1/5 以上の幅を持つ物体の非欠損性を保証する場合でも,従来に対し約25%の計算時間増だけで処理されることを確認した.We describe an algorithm that improves the ability of detailed expression of the Marching-Cubes (MC) method. The MC method is a technique for generating triangular meshes from implicit function. It sets the uniform grid, and generates mesh with the judgment whether the lattice point is on the inside to the boundary. Therefore, it has two problems. First, there is a possibility that the thin part of the object is lost. Second, the sharp part is converted into the smooth shape. In this paper we present a Deformed-Marching-Cubes (DMC) method that changes the shape of the grid form by moving lattice points. The steps of the DMC method are: 1) detecting a thin part by searching for surroundings of each lattice point, 2) calculating coordinates of the sharp part, 3) moving a lattice point that is nearest from each calculated point. As a result, when only one object exists for the grid interval, this method realized guaranteeing the non-loss of an object that is bigger than the search accuracy, and reproducting the sharp part. Consequently, we proved that the method guarantee non-loss of the object of the width of 1/5 compared with the grid size only by the overhead of only about 25%.
著者
塩尻 史子 守屋 俊夫 武田 晴夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, 1997-09-24

映画やテレビなどの映像制作の分野において、撮影の困難なシーンや仮想のシーンを制作する手段として特殊撮影だけでなく、CGや実写の合成も多く用いられており、CG技術に対する期待は大きい。そこで本稿では、撮影困難なシーンのひとつである自然現象として、実写映像に対してCGの虹を合成する一手法について述べる。本方法では虹の物理法則および背景実写映像撮影時のカメラパラメータを考慮した。また、人間の感性を付加するための演出性も考慮し、実写に近い虹から、それをアレンジして得られるファンタジックな虹まで表現することが可能である。本方法を利用して開発したツールは映画の虹出現シーン制作に適用された。