- 著者
-
安永 薫梨
- 出版者
- 福岡県立大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究では精神疾患を持つ患者が看護師に暴力を振るってしまった状況や引き金,感情を明らかにし,暴力を振るってしまった患者に必要な看護ケア,また再び暴力を振るわないようにするための取組みについて検討することを目的して,質問紙調査と面接調査を実施した。質問紙の回収数は157部,回収率は87.7%であった。収集したデータについては,量的と質的に分析した。その結果,看護師に暴力を振るってしまった患者の体験については,精神疾患を持つ患者157名中,過去に看護師に暴力を振るったことが「ある」と答えた人は,29名(18.5%)であった。患者が看護師に暴力を振るった状況では,看護師の状況判断,接遇,注意や説明の技術,アセスメント能力の問題が明確になった。また,具体的な暴力の種類については,「にらむ」が29名中14名,患者が看護師に暴力を振るった引き金としては,「看護師の対応が気に入らなかった」が29名中9名,患者が看護師に暴力を振るった際の感情については,「悪いことをしたと後悔した」が29名中14名,その後に取った患者の行動については,「謝った」が29名中13名と最も多かった。看護師がどのように対応してくれれば,殴ったり,ひどいことを言わずにすんだと思うかという問いに対しては,「優しく接してくれる」が29名中10名,看護師に暴力を振るいたくなった時の対処法については,「いらいらしている自分に気づく」が29名中11名と最も多かった。以上より,暴力を看護師に振るってしまった患者に必要な看護ケア旨としては,患者に暴力を受けた看護師が辛い思いをしているのは当然だが,それと同時に暴力を振るってしまった患者も辛い思いをしていることを念頭におき,まずは患者一看護師関係の修復から始めることが大切と考える。また,再び患者が暴力を振るわないようにするための取組みとしては,患者を一人の人間として尊重し,優しく思いやりを持って接することが最も重要と考える。