著者
梅澤 敬 野村 浩一 山口 裕 小林 重光 安田 允
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.144-148, 2005-05-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

背景: 高カルシウム血症型小細胞癌は若年者に好発する予後不良の卵巣腫瘍であるが, その細胞像は十分理解されていない.症例: 25歳, 女性. 下腹部膨満感を主訴に来院した. 卵巣癌が疑われ, 右附属器摘出+左卵巣部分切除+大網切除+リンパ節郭清術が施行された. 右卵巣は19×11×95cm, 灰白~黄色調, 充実性部分と嚢胞状部分が混在していた. 腫瘍の捺印標本では, 核/細胞質比の高い小型細胞が孤在性に出現していた. 核は円~類円形で比較的均一, クロマチンは細~一部粗穎粒状で増量に乏しく核小体は小型であった. また, ライト緑淡染性で豊富な細胞質を有する大型多辺形細胞の結合性の弱い小集塊や少数の印環細胞がみられた. 一方, 腹水では核のmoldingを示す裸核様小型細胞がみられた. 組織学的に核/細胞質比の高い小型細胞が主としてびまん性に増生していた. 濾胞様構造がみられたが, 核溝やCall-Exner bodyはみられなかった. 大型多辺形細胞や印環細胞がみられた. 免疫組織化学的にcytokeratin陽性, epithelial membrane antigen陽性, α-inhibin陰性であった. 再発のため術後9ヵ月で死亡した.結論: 小細胞癌の細胞像の把握は, 若年女性の腹水細胞診やstagingのための術中腹膜捺印細胞診に有用である。