- 著者
-
玉田 祐介
雫田 享佐
厚芝 源太郎
平田 健太郎
石川 博規
工藤 慎一
- 出版者
- 応用生態工学会
- 雑誌
- 応用生態工学 (ISSN:13443755)
- 巻号頁・発行日
- pp.22-00009, (Released:2023-07-07)
- 参考文献数
- 36
フクジュソウ Adonis ramosa は,主に落葉樹林に生育するキンポウゲ科の多年草で,北海道中央部から南部,本州,四国に分布し,多くの都道府県で絶滅危惧種となっている.フクジュソウの保全対策を効果的かつ効率的に実施するためには,生育環境について知見を蓄積することが重要な課題の一つである.フクジュソウの生育環境については,光条件による影響を報告した研究は存在するが,フクジュソウの生育に影響を与える局所スケールの環境要因及びその相対的重要性を明らかにした研究は見られない.そこで,本研究では,北海道中央部及び南部において,光条件,土壌条件,リター層,周辺植生といった環境要因に着目してフクジュソウの生育環境を調査した.北海道中央部及び南部のフクジュソウの開花結実期にあたる2021 年 4~ 5 月において,各調査地域(計 7 地域)のフクジュソウ生育地に方形区(1 m×1 m)を 5 個設置し,計 35 個の方形区でフクジュソウの個体数を記録した.また,フクジュソウの生育に関係し得る環境要因として,相対照度,土壌硬度,リター層の厚さ,林床被度,樹冠被度を計測した.その結果,相対照度が高く,リター層が薄く,かつ林床被度が低いほど,フクジュソウ個体数は多かった.そのため,フクジュソウの保全対策を実施する場合には,相対照度が高く,リター層が薄く,かつ林床植生が少ない環境に着目することが重要であり,開発事業によりフクジュソウ生育地を改変せざるを得ない場合は,そのような環境へ移植を実施する必要があると考えられる.また,フクジュソウ生育地のモニタリングや維持管理を実施する場合には,草刈りや落ち葉かきが有効と考えられる.