著者
金井 美惠子 安谷屋 倭子 深作 貴子 大迫 早苗
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.160, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】乳製品,食肉加工食品,魚肉練り製品の安全を踏まえた品質管理法は既に確立されているが,真空調理の安全性についての科学的な報告は少ない。多分,真空調理を開発した当初のシェフの興味は,食品の味覚等にあったと推察される。真空調理食品は食中毒細菌であるボツリヌス菌やウエルシュ菌の増殖があると厳しい結果をもたらす可能性があるので,ウエルシュ菌等を用いて微生物学的な検討を行った。【方法】真空調理の適切な加熱温度を明らかにするために,次の検討を行った。第1:ウエルシュ菌を魚すり身に接種・混和し,種々の温度で湯煎加熱した。第2:生の鶏肉および加熱調理後の微生物汚染について検討した。第3:ホテルレストランで提供されている牛肉ステーキ,カキの真空調理食品,ついて実験し,残存菌をどのようにコントロールするかを考察した。【結果および考察】1)生活型ウエルシュ菌は一般的な真空調理温度である60℃の加熱で検出されなくなった。2)ウエルシュ菌芽胞は80℃,60分の加熱後も残存した。3)0℃のチルド冷蔵庫に7日間保存後の残存芽胞数の変化はなく,二次加熱による菌数変化もみられなかった。4)真空調理した鶏肉からは,大腸菌,大腸菌群,低温細菌は検出されなかった。5)食肉の焼き色と風味づけのための事前加熱は汚染菌を減らすのに効果的であった。6)ホテルレストランにおけるビーフステーキ,カキの調理食品および調理過程での実験成績も同様の傾向であった。7)低温真空調理食品はチルド保存をすることが望ましい。8)真空調理過程における香辛料の利用はウエルシュ菌など,芽胞形成菌の汚染をもたらすと考えられた。