著者
中本 大介 上地 利征 戸塚 智子 丸山 潤 相羽 孝亮
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.104, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】ポテトサラダの様な惣菜は日持ちが短い点が課題となっている。日持ちを延長するために一般的に加熱処理が用いられるが,タンパク質の変性や酸化等による風味劣化が生じるため惣菜本来のフレッシュ感が失われる。そこで加熱処理の代替として高圧で処理する手段が提唱されている。しかしながらポテトサラダを高圧処理した場合酢酸の酸味酸臭が損なわれるという新たな課題が発見された。ポテトサラダにおいてはフレッシュな食味が好まれ,酢酸による適切な酸味が求められる。そのため,酢酸以外の有機酸を併せて配合することにより高圧処理に伴う酢酸の酸味酸臭低減防止効果が得られるか検討した。【方法】調味液中の酢酸含有量に対してフィチン酸を様々な割合になるように配合量を調整した調味液と具材を和えたポテトサラダを作成し,袋詰めした状態で静水圧にて600MPa,3分間の高圧処理を実施した。それぞれのサンプルに対し処理前と処理後の風味比較を実施し,酢酸の酸味酸臭低減防止効果が得られているか確認した。【結果および考察】調味液中の酢酸に対して一定量のフィチン酸を配合することにより高圧処理に伴う酢酸の酸味酸臭の低減を抑制することが可能であった。仮説の一つとしてフィチン酸はキレート作用を有するため,高圧処理時の酢酸成分の変化を抑制している可能性が考えられる。この結果から同様の作用を持つ特定の有機酸を配合することにより日持ちが長く,かつ高圧処理時における酢酸の変化を抑制し適切な酸味を有するポテトサラダを得ることができると考えられる。また,当効果はポテトサラダに限らず具材と酢酸含有調味液を和えた惣菜に広く応用が可能な技術であると考えられる。
著者
柴田 圭子 高見 朋子 渡邉 容子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.134, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】食品添加物として市販されるホタテ貝殻焼成カルシウム(以下,貝殻Ca)は,主成分が酸化カルシウムで,水と反応すると強いアルカリ性を呈し,野菜・果物類の抗菌洗浄に利用される。この貝殻Caの特性を利用し,洗米に使用することで貯蔵米の食味の向上を図ることが可能と考え,その有用性を検討した。【方法】貝殻Caは洗浄用に0.03% (w/v)の水溶液(以降,貝殻Ca水)に調製して使用した。試料米にはコシヒカリ(2013年度,山形県産)を用い,実験は2017〜2018年に実施した。米300gを脱イオン水1L/回×5回洗浄したものを対照試料,同じ5回洗浄のうち2回目のみ貝殻Ca水を用いたものを貝殻Ca水洗浄試料とした。飯は米の1.5倍加水して60分浸漬後,電気炊飯器で炊飯した。米粒のSEM観察および脂肪酸度の測定,飯粒の力学的測定(テクスチャー解析),飯の食味評価は分析型と嗜好型の官能評価を行い,更に飯のテクスチャーと味の評価はTDS法,におい評価はTI法を用いた。【結果および考察】貝殻Ca洗浄水はpH11.9だが,炊飯直前の浸漬液はpH7.4となった。米粒表面の構造は,貝殻Ca水洗浄試料と対照試料に顕著な差はないが,米の脂肪酸度は前者が有意に低値であった。飯の炊上り倍率・飯粒の形状に有意差はなかった。飯粒を80%圧縮した際,貝殻Ca水洗浄試料は最大荷重と凝集性で低値,付着性は高値の傾向がみられ,飯粒外周がかため,内部はやわらかめである事が示唆された。TDS法では,貝殻Ca水洗浄試料はもちもちして,後味の甘味が持続する傾向であった。TI法による対照試料と比較した貝殻Ca水洗浄試料の古米臭の強度は,約45%と評価され,低減効果が認められた。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子 山澤 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.86, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】セロリは18世紀中頃からサラダとして食されるようになった。現在は生食だけでなく,シチューなどの香味野菜や炒め物のアクセントとして幅広く利用されている。しかし,セロリは一般的に好まれない傾向がある。本研究では,セロリについて,生および加熱調理法別の嗜好性を明らかにし,好まれるセロリの調理法について検討した。【方法】セロリは中央部分を5mm幅に切って試料とした。試料は生と茹で・蒸し・焼き・揚げの各方法で火が通るまで加熱した。官能評価は,N女子大学生27名(平均年齢21.6歳)をパネルとして,5点尺度で色,香り,硬さ,味,歯触り,総合の6項目について分析型官能評価を採点法で,嗜好型官能評価を順位法で行った。データの統計処理は多重比較検定のTukey法とNewell & MacFarlaneで行い,統計的有意水準を5%で示した。さらに官能評価の結果に基づき,好まれるセロリ料理4品を提案した。【結果および考察】官能評価の採点法では,生と比較して茹で加熱は有意に色が薄かった。4種類の方法で加熱したセロリは生より有意に軟らかく,味が薄く,歯触りがないと評価された。香りと総合に有意差はなかった。嗜好型分析評価の順位法では,生と比較して茹で加熱の色と硬さが有意に好まれ,茹でと揚げ加熱の味が有意に好まれた。香り,歯触りおよび総合に有意差はなかった。したがって,セロリの色と味を薄くし,歯触りを弱く,硬さを軟らかくする茹で加熱法が,セロリの生および4種類の加熱法において最も好まれることが示された。この結果に基づき,セロリと豆のリボリッタ・鶏手羽元とセロリのトマト煮・夏野菜の冷やし茶わん蒸し・セロリのかき揚げを好まれるセロリ料理として提案した。
著者
金井 美惠子 安谷屋 倭子 深作 貴子 大迫 早苗
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.160, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】乳製品,食肉加工食品,魚肉練り製品の安全を踏まえた品質管理法は既に確立されているが,真空調理の安全性についての科学的な報告は少ない。多分,真空調理を開発した当初のシェフの興味は,食品の味覚等にあったと推察される。真空調理食品は食中毒細菌であるボツリヌス菌やウエルシュ菌の増殖があると厳しい結果をもたらす可能性があるので,ウエルシュ菌等を用いて微生物学的な検討を行った。【方法】真空調理の適切な加熱温度を明らかにするために,次の検討を行った。第1:ウエルシュ菌を魚すり身に接種・混和し,種々の温度で湯煎加熱した。第2:生の鶏肉および加熱調理後の微生物汚染について検討した。第3:ホテルレストランで提供されている牛肉ステーキ,カキの真空調理食品,ついて実験し,残存菌をどのようにコントロールするかを考察した。【結果および考察】1)生活型ウエルシュ菌は一般的な真空調理温度である60℃の加熱で検出されなくなった。2)ウエルシュ菌芽胞は80℃,60分の加熱後も残存した。3)0℃のチルド冷蔵庫に7日間保存後の残存芽胞数の変化はなく,二次加熱による菌数変化もみられなかった。4)真空調理した鶏肉からは,大腸菌,大腸菌群,低温細菌は検出されなかった。5)食肉の焼き色と風味づけのための事前加熱は汚染菌を減らすのに効果的であった。6)ホテルレストランにおけるビーフステーキ,カキの調理食品および調理過程での実験成績も同様の傾向であった。7)低温真空調理食品はチルド保存をすることが望ましい。8)真空調理過程における香辛料の利用はウエルシュ菌など,芽胞形成菌の汚染をもたらすと考えられた。
著者
佐川 敦子 笹原 由雅 鎌形 潤一 青木 仁史 大橋 きょう子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.96, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】減塩につながる調味方法としては,食品内部に塩味を拡散させず,食べる直前に食品表面に塩味をつける方法がある。これまでに,うま味や酸味を添加することで塩味強度が強まるという報告はあるが,油を添加した場合の塩味の感じ方についての報告は見当たらない。そこで,油添加に着目し,調製時における塩および油添加タイミングの違いによる塩味の感じ方について検討した。【方法】塩および油添加タイミングを変えた飯表面に塩味をつけた試料(塩味表面試料)と,塩水で炊飯した試料(塩味均一試料)の塩むすびモデル系試料を調製した。塩添加量は米重量の1.15 w/w%(飯の0.5w/w%),油添加量は米重量の2.0 w/w%とした。試料の形状測定(マイクロスコープVHX-6000),物性測定(レオナーRE2-33005C)を行った。また,官能評価により,同一塩分濃度下における塩味の感じ方について,呈味強度(塩味,甘味,うま味)および味の好ましさを5段階評点法により評価した。【結果および考察】1. 形状測定:米飯対角幅,周囲長,面積において,塩味表面試料は,塩味均一試料よりも高値を示した。2. 物性測定:硬さにおいて,塩味表面試料は,塩味均一試料よりも有意に低値を示した。3. 官能評価:塩味表面試料は,塩味均一試料に比べ塩味強度は有意に高かった。また,炊飯前油添加試料は,炊飯後油添加試料よりも塩味強度は有意に高かった。炊飯前に油を添加し炊飯後に飯表面に塩味を付与すると,塩味の感じ方は強くなることが示唆された。官能評価の塩味強度と物性測定の凝集性および付着性で負の相関が認められた。結果,米飯の凝集性,付着性が小さいほど,塩味強度は高くなることが示唆された。
著者
佐藤 真実 森 恵見 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.214, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】本州の中央部にあり,日本海に面す福井県は,嶺北と嶺南地区に分けることができる。嶺北は,平野を中心に米づくりが盛んであり,嶺南は,海に面して滋賀,京都に隣接する。日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」で実施した聞き取り調査に基づき,昭和30〜40年代の福井県における家庭料理「副菜」の特徴を明らかにし,現在でも作られている家庭料理について紹介することを目的とした。【方法】聞き取り調査の結果および福井県の食に関する出版物から副菜を抽出し,特徴および地域性についてまとめた。【結果および考察】県内の聞き取り調査によると,昭和30〜40年代の海岸地域を除いた福井県の日常食としては,3食ともに米飯,野菜や山菜料理が主なものであった。日本海に面することから海からの恵みもあったが,魚介類は時々食べるご馳走であった。春には,山菜を収穫し,保存する。秋冬には,だいこんや芋を用いた料理を作った。これらの野菜には,大豆・大豆加工品(打ち豆,油揚げ,豆腐),北前船の影響で入荷される乾燥ニシンなどが組み合わせ食材として使用された。中でも,だいこんは,葉っぱを「あえもん飯」,根を「から大根」「たくあん・たくあんの煮たの」「長寿なます」「こじわり」「みがきかぶし」などに利用した。「だいこんおろし」は,おろしそばや油揚げ飯にも利用される。山菜は,「こごみ」「わらび」「ぜんまい」等を「こごみの胡麻和え」「わらびのおひたし」「ぜんまいの煮物」「ぜんまいの白和え」「にしんと水ぶきの煮もの」などに利用した。とくに「ぜんまい」は現在でも高価であり,ごちそうとして,春祭り,秋祭り,報恩講などに利用される。
著者
山澤 和子 荒井 七海 井田 有香 稲垣 花歩 犬飼 陽南子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.128, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】昨今,緑茶は利便性の高い加工飲料の頻用が一般化し,日本の緑茶文化「急須でお茶を淹れ風味を味わいながら寛ぐ」に接する機会は減少してきている。愛知県の伝統工芸「常滑焼」産地では「常滑焼急須で淹れた緑茶は苦渋味が弱く,口当たりがまろやかで美味しい」と言い継がれている。本報告は,急須材質が緑茶浸出液の呈味成分含量に及ぼす影響について検討した。【方法】試料緑茶葉:1mmの篩上の煎茶葉(静岡県産)を用いた。急須:容量500ml程度の常滑焼(赤(A)および黒(B))・有田焼(C)・鉄製(D)・銅製(E)・ステンレス製(F)・ガラス製(G)を用いた。緑茶浸出液の調製:AからGの急須に,試料緑茶葉 2gを入れ,85℃のイオン交換水100mlを注ぎ1.5分間浸出した後,濾過液を分析に供した。成分分析:ポリフェノール(PP)量は酒石酸鉄法,抗酸化能はDPPH法,アミノ酸量はニンヒドリン比色法で測定した。なお,糖量は糖度,有機酸量はpH値で検討した。【結果および考察】A とDで淹れた浸出液100ml中のPP量(73mg)は,その他急須の場合に比し顕著に少なかった。これはPPが急須材質中の鉄と結合体を形成した結果と推察され,苦渋味が弱まる一因と考えた。ラジカル消去能はPP量の多少と概ね同傾向であった。アミノ酸量は,Dで淹れた場合が最も多く,A・BのそれらはDの約80%,Cでは約70%であった。糖量や有機酸量に著しい差はなかった。以上から,鉄を含む朱泥を原材料とする常滑焼急須で淹れた緑茶は,PP量の減少により苦渋味が弱まり,アミノ酸による旨味が程よく保たれて味質バランスが整ったことが「まろやかで美味しい」の評価と関係すると推察した。
著者
野坂 隆文 石原 佑希子 藤江 未沙 池野 潤 永瀬 敬顕 上田 恭己
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.165, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】天ぷらは一般に人気の日本料理であるが,大量調理においては,作業工程の複雑さや,栄養管理面,さらには時間経過により衣の状態が変化し,品質が低下するという問題が知られている。この劣化現象は温蔵による適温保存の際にも発生するため,出来たての提供が難しい大量調理では敬遠されることが多い。本研究では,適温保存により劣化した天ぷらをより質の高い状態で提供するための調理方法を考案し,給食で提供される料理の質の向上を目指す。【方法】えび・さつまいも・なすを検討試料とし,衣には市販の天ぷら粉を用いた。170℃に設定したフライヤーで調理後,2時間温蔵保管した各試料をコントロールとした。調査対象として,同様の温蔵保管後にスチームコンベクションオーブンを用いて(1)コンビ180℃湿度100%5分,(2)コンビ180℃湿度100%2分,(3)コンビ150℃湿度100%5分の加熱処理をそれぞれ実施し,官能検査による比較を行った。対象者は当校教員7名とし,6項目において採点法による評価を行い,合わせて固さ・テクスチャー・品質についての質問も実施した。【結果および考察】えびでは(1)が全体を通して高評価が多く,質問より全員が天ぷらとしての品質を保っていると返答した。風味においては,全方法で評価が高く,加熱処理によってより香ばしく感じられたと考えられる。さつまいもではえび同様(1)が高評価で,食感・風味・ぱさつきが改善され柔らかく感じたとの評価が多かった。なすでは高評価は(1)の食感のみで,(2)(3)では低評価も多数見られた。全試料において加熱処理により余分な油が一部排出していたが,なすは構造上油を吸着しやすく,(2)(3)では加熱不十分で油っぽさが改善されなかったことが示唆された。
著者
渡部 真子 鈴木 彩日 松村 知歩 水 梨恵 石橋 ちなみ 岡田 玄也 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.36, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】戦国期毛利氏の食に関しては,1549年に毛利元就が元春,隆景を伴い大内義隆を訪問した際に毛利氏が用意した6回の饗応献立が「元就公山口御下向の節饗応次第(以下,饗応次第)」に記されている。また,毛利氏の家臣,玉木吉保が当時の食材や調理法を「身自鏡」に記している。我々はこれまでに「饗応次第」において,雁や雉に加え,白鳥や鶴,獺が供されていたこと,「身自鏡」において調理法のみでなく,青黄赤白黒の視点が記されていること等を報告している。本研究では,「饗応次第」の献立再現を通して,当時の食について考察した。【方法】「饗応次第」の献立再現では,料理のレシピ(食材量,調理法,盛り付け,器等)の決定が必須である。そこで「饗応次第」「身自鏡」をさらに読み解くとともに,吉川元春館跡発掘調査(記録,出土遺物),同時期の料理書である「大草家料理書」,「明応九年三月五日将軍様御成雑掌注文」からの再現事例等を確認し,「饗応次第」に記された6回の饗応食のうち折敷や器が記された三月五日の饗宴献立の再現を試みた。【結果および考察】「饗応次第」には十二文あしうち,三度入り,小中等と記され,上記発掘調査において側板0.5cm程度の足付折敷,6〜8cmの土師器皿が多く出土されていることから,食材量は器の大きさに併せて決定した。また,当時の饗宴は食さないとの解釈もあるが,白鳥や鶴等の渡り鳥や,鷹のものと思われる獺等,極めて貴重な多様多種の食材が30〜35人分が用意されていることから食されたと解釈した。再現した献立にはぞうに等の儀礼的な料理がある一方,料理の組み合わせや順序への配慮がうかがえた。今後,当時の人々の食への価値観等も含め,検討したい。
著者
島田 沙織 石田 一晃 石田 亘
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.39, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】近年,自然解凍冷凍食品の需要が高まっている。しかし,根菜類は凍結すると解凍時に離水を伴って食感が軟化,スポンジ化し品質が悪くなる。これは凍結により生成した氷結晶が成長し,組織を損傷することが原因だと知られている。我々は,これまでに液体窒素凍結が根菜の離水抑制や自然解凍後の食感の維持に効果があることを報告した。本研究では冷凍根菜の品質向上を目的に,液体窒素凍結より簡便なブライン凍結の有用性について検討した。【方法】根菜類(ニンジン,ゴボウ,ダイコン,ジャガイモ)を用いて凍結速度による品質の違いを評価した。各食材を一辺30mmの立方体形にし,喫食可能な硬さになるまでボイルした。放冷した食材をエアブラスト凍結(-40℃),ブライン凍結(-10,-20,-30℃)液体窒素凍結(-196℃)し,0〜-10℃に達する時間を測定した。10℃に設定した恒温機でサンプルの解凍を行い,食味,ドリップ量,破断強度を未凍結品と比較した。【結果および考察】ニンジンの凍結時間は,エアブラスト凍結では17分,ブライン凍結(-30℃)では3分であり,ブライン凍結の方がより凍結速度が速かった。しかし,ドリップ量,破断強度に差はみられなかった。食味においても差はなく,未凍結品と比較して食感の軟化とスポンジ化がみられた。凍結時間が数秒である液体窒素凍結では,食味,ドリップ量,破断強度ともに未凍結品に近い品質が維持された。自然解凍後の根菜類の品質向上のためにはブライン凍結以上の凍結速度が必要であると考えられた。
著者
駒田 聡子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.13, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】家庭科は,「日常生活に必要な基礎的知識および技術を身につける」ことを目的としているが,大学生の様子を見ると「缶切りが使えない」「(青菜ゆで)お湯の沸騰が分からない」「親指を使って桂むきができない」など,小学校から始まる家庭科で学ぶべき内容が定着していないと感じる場面が多い。そこで将来小学校教員となる教育学部学生を対象にアンケートを採り,これまでの学びの中で食に関わる基礎的・基本的知識がどの程度身についているのかを知り,そこから課題をみいだし教科教育に活かすことを目的とした。【方法】二大学の教育学部学生を対象として家庭科教育の初回授業時に,衣食住に関わる基礎的知識を問うアンケートを実施した。回答者数202名。【結果および考察】各項目の正解率は,1カップの容量 43%,大さじ1 55%,小さじ1 64%,水からゆでる食材 40%,食品群 約55%,1合 9%,消費・賞味期限 92%,食糧自給率語句の意味 54%・数値 11%,密度の違い 63%,廃棄率計算 36%だった。この結果より,実生活に必要な各教科での学びが知識として定着していないことが示唆できた。今後は各教科での学びを「実生活の具体的などの場面にどう活かすのか」,「どう活かせるのか」をより実感を伴って理解されるように教え,小学校での教科教育に活かせる教員養成を行っていく必要性を強く感じた。