著者
安部 彰
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-10, 2012-09-30 (Released:2018-02-01)

This study had two objectives. First, we examined the possibility of animal infectious diseases being caused by humans, clarifying specific links between anthropogenic changes to freshwater ecosystems and the emergence(or spread) of Koi Herpes Virus disease(KHVD). Second, we considered related ethical problems. We concluded that there is no ethical justification for the KHVD case from a utilitarian perspective. Furthermore, we should endeavor to promote precautionary environmental management to decrease the number and spread of animal(and human) infectious diseases.
著者
安部 彰
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.30-42, 2011

ケアにおける承認について考える。そのさい本稿はケアとパターナリズムの関係を軸にその考察を進める。ケアにおいて承認されるべきはケアされるひとの自己決定である、多くのひとがおそらくそう思っている。だがケアという相互行為は、いわばその構造的な必然として、パターナリズムとわかちがたくむすびついている。そしてそのパターナリズムは、ケアされるひとの「存在」を承認する場合、つまり自己決定がそのひとの「存在」の不可逆的な毀損をまねく場合には正当化されるといわれ、それは支持できるように思える。しかるに、まさにそうしたケースであるはずの「安楽死」を我々は容認することがある。とすれば、これは矛盾であるようにみえるが、「存在」理解を吟味すると、その消息があきらかになる。我々は快苦を「存在」のきわめて重要な契機と考えているのだ。だからその「存在」を承認するがゆえに「安楽死」に道をひらくことになるのだ。だが、そうしてみちびかれる帰結は、死の自己決定を認めることとおなじではある。かかる帰結の是非を本稿は問わないけれども、ケアにおける承認の問題をさらに追究するうえですくなくとも考慮にいれておくべき論点を最後に提起する。