著者
大川 優子 安部 義一 鈴木 正義
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.22-30, 2022 (Released:2022-06-23)
参考文献数
6

起立性調節障害(OD:orthostatic dysregulation)は,自律神経系による循環調節不全が主要原因であり,心身症としての側面も強く不登校を伴うこともある。今回我々は,心身症としてのOD診断チェックリスト陽性OD患者のうち,不登校の原因とコロナ禍での問題点を調査した。期間は2020年4月1日から2021年10月31日に当院小児科外来を受診したOD患者67例を検討した。対象は平均年齢13.7±2.4歳,男20例:女47例であった。ODの各サブタイプの内訳は体位性頻脈症候群43例,遷延性起立性低血圧15例,起立直後性低血圧1例,起立直後性低血圧を伴う血管迷走神経性失神1例,他に従来の診断基準で陽性が7例あった。患者67例のうち,心身症としてのチェックリスト陽性が37例,不登校が22例であった。COVID-19(Coronavirus disease 2019)流行に伴い子供達の生活環境も一変し,変化に適応出来ず不登校になった症例や,体調不良を訴えると感染を疑われ,保健室で休養出来ず早退させられた症例もあった。また外出自粛による生活リズムの乱れや,運動不足も症状悪化の原因と考えられた。当院では自律神経調節機構の病態の説明や生活指導を患者本人や家族へ行ない,不登校の期間や心身状態の程度に応じて環境調整など学校と連携を取り,他医療機関の精神科と連携し心理療法を行なった。コロナ禍におけるOD患者を診察する上での問題点を考察した。
著者
仲野 恭助 安部 義一 武田 憲雄 平野 千里
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.17-27, 1961-03-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
10
被引用文献数
11 16

山形県河北町の溝延地区では例年ニカメイガによる水稲の被害が,同町の北谷地地区よりも著しく多いことが経験的に知られていたので,その原因を明らかにするため一連の調査を行なった。両地区に生息しているニカメイガについて調べたところ,その形態,生態的性質,加害習性などに明りょうな差を認めることができず,両地区の生活環境にちがいのあることが示唆された。両地区の土壌を山形農試に運び,水稲を栽培して幼虫を飼育したところ,現地での観察と全く同様の結果が得られたので,両地区における生活環境のちがいは土壌に基因するものであることがわかった。両地区の土壌について詳しく調査した結果,溝延土壌は北谷地土壌に比べ可給態ケイ酸含量が低く,それに応じてここに生育した水稲体のケイ酸含量も低く,その結果として(1)成虫による産卵選好性や幼虫による食入選好性が高く,(2)幼虫に対する抗生作用が少なく,(3)幼虫の加害に対する耐性が低いことが明らかになった。すなわち土壌のケイ酸供給力のちがいが,両地区水稲のニカメイガ抵抗性の強弱を決定し,これがニカメイガの発生量や水稲被害量の多少となって現われていると結論できる。以上の結論に基いてケイ酸供給力の低い溝延地区水田にケイ酸石灰を施用し,ニカメイガによる被害を減少させることに成功した。更に溝延地区水田がケイ酸供給力の低い原因について検討し,この地帯の土壌が朝日連峰より流出堆積した花こう岩を母材とする土砂からなっていることに基因していると推定した。