著者
伝野 隆一 平田 公一 八十島 孝博 宍戸 隆之 浦 英樹 山口 浩司 水口 徹 佐藤 文彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.974-978, 1998-04-01
参考文献数
11

胃癌の転移・浸潤機序を解明するためにヒト胃癌細胞株AZ521からヌードマウスの肝臓に高率に転移するAZ-H5cを作製し, 両者を比較することにより転移・浸潤の各ステップについて検討した.(1)E-カドヘリン, αカテニン, βカテニンについて, (2)MMP2, MMP9について, (3)インテグリン, CD44について検討した.AZ-H5cはAZ521に比べ, 高い運動能をもち, MMP-9, インテグリンα1, α2, α3, α4, α5, インテグリンβ1, CD44v3の発現量が増強していた.胃癌の臨床材料での検討ではインテグリンα2の発現とリンパ節転移が関係し, インテグリンα3の発現と肝転移が関係していた.MMP-9に関してはこれまでの病理学的因子と関係はみられなかった.今後胃癌の転移・浸潤に関する機序が解明されることにより機能を温存した縮小手術の適応を拡大できるものと考えられる.