著者
大井 信夫 三浦 英樹
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.45-50, 2005-02-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
7

北海道北部稚内市恵北における恵北層上部,ガラス質テフラ直下の泥炭層の花粉分析を行った.このガラス質テフラは,阿蘇4(Aso-4)に対比される.泥炭層の花粉群は,トウヒ属が優占,カラマツ属,モミ属,カバノキ属などを伴い寒冷乾燥気候を示唆する.この花粉群の特徴は,北海道の他地域のAso-4直下における花粉群と一致する.したがって,本地点の恵北層は後期更新世,最終氷期前半の堆積物と考えられる.Aso-4降下頃の恵北においては,カラマツ属が多産する花粉群ではカヤツリグサ科が,少ない花粉群ではミズバショウ属,ミズゴケ属が多産する.これは,スゲ湿原上にグイマツ林が成立し,ミズゴケ湿原にはミズバショウが伴うという湿地の局地的環境を示していると考えられる.
著者
古宮 成 土生田 晴比古 北浦 英樹 土居 由佳子 高橋 克幸 中村 敦史 宮川 直康 西内 健一 山田 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.466, pp.11-16, 2007-01-11

我々は、記録材料Te-O-Pdを用いた追記型ブルーレイ・ディスクBD-Rの応用検討を行った。500Mbpsを超える高速データ記録チャネルに必要なレーザパルス条件を示して単層BD8倍速記録で実用的な再生ジッタを達成し、また、記録膜材料の透過率設計の自由度を活かして片面4層で100GBの大容量を実現した。更に、メディアに記録したデータの高温高湿環境の加速試験により推定寿命100年以上の長期安定保存が可能なことを示し、本記録材料が、高速化/多層化/保存信頼性のすべての面で優れたポテンシャルを有することを実証した。
著者
奥野 淳一 三浦 英樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

南極周縁域の大陸棚の深度は,一般的な大陸棚の深度より著しく深いことが知られている.この原因は,南極氷床が地球表層における荷重として作用することで,その縁辺域を沈降させているという仮説がある.本研究では,地球の粘弾性的変形を考慮したグレイシャルアイソスタシーのモデルを用いて,南極氷床荷重を変動が大陸棚深度に与える影響を調査した.数値シミュレーションの結果,現在の氷床分布を表面荷重と仮定すると,南極縁辺域の大陸棚深度の異常を説明することができないことが判明した.しかし,過去に現在の氷床分布より拡大した時期があると仮定した場合,南極縁辺域の大陸棚深度異常を説明できる可能性を示した.
著者
杉浦 英樹
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.133-157, 2002-10 (Released:2015-06-17)

合衆国では1910年頃からモンテッソーリシステムが熱心に紹介され,注目を集めた。小稿では,この時期になされたキルパトリックのモンテッソーリ批判(1913&1914)の内容を,後の彼の70ロジュクト法の提起(1918)にどのような意味を与えたかという視点から検討した。この批判によって彼は進歩主義の立場から当時の合衆国の幼稚園運動を擁護しようとしたが,同時に批判の対象であるモンテッソーリの思想や実践にヒントを得ながら,彼自身がそれまで教師として培ってきた発想に教育学的な表現を与えている。その内答には,すでにプロジェクト法の理論的な萌芽も見出される。 In the U.S., after around 1910, the Montessori System was zealously introduced and was focused the attention. Kilpatrick's severe criticism of this system appeared in 1913 and 1914. His criticism is generally sited as a strong reason for decline of the Montessori Movement today. This paper examines his criticism from the viewpoint of what effect it had for his project method theory, proposed in 1918. By the criticism, Kilpatrick, as a progressive thinker, intended to defend the Kindergarten Movement in the U.S. in those days from the Montessori System. He had just become a scholar of education at Teachers College, could give pedagogical expression to his way of thinking that had already been gained thorough his own experience as a school teacher. He was much influenced by Dewey and Thorndike, and got ideas through criticism of the Montessori's educational thought and practice. We can find several original conceptions of the project method theory in his criticism.
著者
菅沼 悠介 三浦 英樹 奥野 淳一 Yusuke Suganuma Hideki Miura Jun'ichi Okuno
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.85-90, 2012-07-31

宇宙線生成核種を用いた表面露出年代測定法は,地球表層における様々な現象を理解するために非常に重要な年代測定法である.この年代測定法には,年代決定精度が試料形状に依存するという特徴があり,試料採取の際に試料の厚さと形を高精度で測定することが必要となる.しかし,ハンマーやタガネを用いた従来の手法では,このような要求を満たす試料採取は時として困難であった.そこで本研究では,新たに携帯型電動カッターを用いた試料採取手法を提案する.この手法は,迅速かつ精密な試料採取および形状測定を可能とすることから,結果として年代測定精度の向上につながるものである.簡単な理論計算に基づき不完全な試料形状に起因する年代差を求めたところ,試料の採取深度が大きくなるにしたがって年代差が大きくなることが分かり,表面露出年代測定法における精密な試料形状測定の重要性が示された.
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
富田 克利 上野 孝幸 河野 元治 三浦 英樹 北村 良介 大場 孝信
出版者
日本粘土学会
雑誌
粘土科学 (ISSN:04706455)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, 2003-03-28

第38次南極地域観測隊(1996-1997)によって採取されたリーセルラルセン山地域の地表から140cmの深さまでの試料について,粘土鉱物学的研究を行った.本研究では,粘土鉱物の種類や性質について,垂直的な変化や,風化の違いによる平面的な変化があるかを考察した.
著者
池田 英史 西浦 英樹
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.9-18, 2013-03-20 (Released:2015-08-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

近年,敏感肌を自覚する女性が増えており,敏感肌をターゲットにした市場も広がっている。しかし,敏感肌化粧品の安全性評価は明確なin vitro試験法が存在しないことから,実際の敏感肌者で評価を行っていることが現状である。そのため,敏感肌を想定したin vitro試験法の確立が望まれている。また,化粧品業界では,動物愛護の観点から動物を使用しない動物実験代替法を用いることが増えている。このような背景から,今回われわれは敏感肌の症状の一つであるバリア機能の低下に着目し,3次元培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL 13日培養品および6日培養品を用いて,敏感肌を想定した安全性評価ツールとしての可能性を検討した。6日培養品は13日培養品に比べ,角層が薄く,セラミド量も顕著に低い値を示し,TEWL値も高い傾向を示した。また,in vitro皮膚刺激性試験の結果から,角層の薄い6日培養品はほとんどの化学物質および化粧品製剤において,13日培養品よりも高い刺激感受性であることを示した。さらに被検物質の暴露時間を長くすることで,より明確な結果になることを確認した。これらの知見は,LabCyte EPI-MODEL 6日培養品を用いることで,化学物質および化粧品製剤の潜在的な皮膚刺激レベルを評価することができ,敏感肌化粧品開発における安全性評価ツールの一つになり得る可能性を示唆している。
著者
杉浦 英樹
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.87-99, 2010-02-28

明石女子師範学校付属校園は主事及川平治のもとに大正自由教育の実践を展開したことで教育史上有名である。同校園では1904(明治37)年の創設当時からすでに幼小間に職務上、研修上の交流があり、1924(大正13)年には及川の指導によってプロジェクト法に基づくカリキュラム連携が試みられようとしている。筆者の目的はその経緯を明らかにすることにある。本稿では「保育方針並ニ幼稚園内規」を含む付属幼稚園所蔵史料の内容をめぐる解釈を通して、明治期における幼稚園カリキュラムの開発過程を保姆の視点から記述する。そして幼小教員が対等に交流するという当時としては稀有な状況で、同園のカリキュラムがどのようなものであったかについて、付属小学校の教育方針や及川の見解との関係において検討する。
著者
伝野 隆一 平田 公一 八十島 孝博 宍戸 隆之 浦 英樹 山口 浩司 水口 徹 佐藤 文彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.974-978, 1998-04-01
参考文献数
11

胃癌の転移・浸潤機序を解明するためにヒト胃癌細胞株AZ521からヌードマウスの肝臓に高率に転移するAZ-H5cを作製し, 両者を比較することにより転移・浸潤の各ステップについて検討した.(1)E-カドヘリン, αカテニン, βカテニンについて, (2)MMP2, MMP9について, (3)インテグリン, CD44について検討した.AZ-H5cはAZ521に比べ, 高い運動能をもち, MMP-9, インテグリンα1, α2, α3, α4, α5, インテグリンβ1, CD44v3の発現量が増強していた.胃癌の臨床材料での検討ではインテグリンα2の発現とリンパ節転移が関係し, インテグリンα3の発現と肝転移が関係していた.MMP-9に関してはこれまでの病理学的因子と関係はみられなかった.今後胃癌の転移・浸潤に関する機序が解明されることにより機能を温存した縮小手術の適応を拡大できるものと考えられる.