著者
小井戸 一光 向谷 充宏 水口 徹 福井 里佳 木村 康利 信岡 隆幸 平田 公一
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.607-613, 2004

胆嚢,総胆管に同時に発生した重複早期胆道癌の1例を報告した.症例は70歳, 女性.当科に入院の2年前から指摘されていた胆嚢壁肥厚が腫瘤様となったため,精査目的に当科入院となった.US,CT,EUSの画像所見から固有筋層にとどまる早期胆嚢癌と診断し手術が施行されたが,術中ゲフリールにて胆嚢管断端陽性のため肝外胆道切除術D2郭清と胆管空腸吻合が施行された.膵・胆管合流異常は認められなかった.病理組織学的に胆嚢体底部と胆嚢管,さらに中部胆管に,それぞれ独立した早期乳頭状腺癌を認めた.胆嚢体底部,胆嚢管と中部胆管病変は,それぞれ大きさが3×1.5cm,0.7×0.5cm,0.2×0.2cmで,胆嚢管と中部胆管病変は画像・肉眼上確認できなかった.これらの病変問に連続性はなかった.胆嚢癌に遭遇した場倉,重複胆道癌を念頭において診断を進める必要がある.
著者
伝野 隆一 平田 公一 八十島 孝博 宍戸 隆之 浦 英樹 山口 浩司 水口 徹 佐藤 文彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.974-978, 1998-04-01
参考文献数
11

胃癌の転移・浸潤機序を解明するためにヒト胃癌細胞株AZ521からヌードマウスの肝臓に高率に転移するAZ-H5cを作製し, 両者を比較することにより転移・浸潤の各ステップについて検討した.(1)E-カドヘリン, αカテニン, βカテニンについて, (2)MMP2, MMP9について, (3)インテグリン, CD44について検討した.AZ-H5cはAZ521に比べ, 高い運動能をもち, MMP-9, インテグリンα1, α2, α3, α4, α5, インテグリンβ1, CD44v3の発現量が増強していた.胃癌の臨床材料での検討ではインテグリンα2の発現とリンパ節転移が関係し, インテグリンα3の発現と肝転移が関係していた.MMP-9に関してはこれまでの病理学的因子と関係はみられなかった.今後胃癌の転移・浸潤に関する機序が解明されることにより機能を温存した縮小手術の適応を拡大できるものと考えられる.