- 著者
-
宗岡 寿美
- 出版者
- 帯広畜産大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1999
本年度は調査の最終年度にあたるため,調査事例の少ない十勝地方を対象として,水田地域における農業用水(畑作流域河川)・水田排水および畑作地域における雨と雪の水質成分について調査した。また,釧路・根室地方における酪農流域河川の土地利用と水質環境についての経年調査をもとに,北海道東部の畑作・酪農流域河川の水質水文的評価に供した。なお,本研究では,主として窒素とリンを指標として評価・考察を進めた。まず,水田地域における農業用水(畑作酪農流域)はT-N濃度≒0.41〜3.7mg/L,T-P濃度≒0.11〜0.5mg/L,一方,水田排水はT-N濃度≒0.24〜5.0mg/L,T-P濃度≒0.06〜0.54mg/Lとなり,施肥・代かき直後を除いて,水田は河川水質を汚濁するものではないと考えられる。帯広畜産大学構内における降水中の窒素・リンについてみると,降水量は1170.0mm,T-N濃度=0.55mg/L,T-P濃度=0.021mg/L,pH=5.8であり,降水からの窒素のインプットはT-N=643.5kg/km^2・yである。酪農流域河川の水質濃度は,酪農流域・改修河川の2流域でT-N濃度=1.36mg/L・1.64mg/L,酪農流域・自然河川ではT-N濃度=1.03mg/L,林野流域・自然河川ではT-N濃度=0.29mg/Lとなった。北海道東部における畑作・酪農流域河川の水質環境を保全するとき,汚濁負荷発生源の除去・抑制が優先課題となる。しかし,汚濁負荷発生源が同程度の場合には,自然河川が有する水質浄化機能や河畔域の緩衝帯による汚濁物質の河川への流入抑制効果などを積極的に発揮すべく,土地利用を再構築していくことが必要であろう。