著者
祖父尼 淳 森安 史典 佐野 隆友 藤田 充 糸川 文英 土屋 貴愛 辻 修二郎 石井 健太郎 池内 信人 鎌田 健太郎 田中 麗奈 梅田 純子 殿塚 亮祐 本定 三季 向井 俊太郎 糸井 隆夫
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.199-209, 2015-04-20 (Released:2015-05-08)
参考文献数
18

High intensity focused ultrasound(HIFU)治療は,その超音波発信源を多数取り付けた発信源から超音波を腫瘍の目的部位の1点に集束させ,体外から組織の焼灼を行う治療法である.焦点領域のみを80~100度に加熱し,熱エネルギーおよびキャビテーションの作用により組織を凝固壊死させ,焦点領域以外の介在組織にはほとんど影響を与えないという治療法である.われわれは切除不能膵癌に対するHIFU治療の安全性と有効性を検証するため,Yuande Bio-Medical Engineering社のFEP-BY02 HIFU Systemを用いて臨床試験を2008年12月より行った.膵癌に対するHIFU治療は問題点もあり,さらなる検討や症例の蓄積が必要であるが,われわれの検討では切除不能膵癌に対し安全にHIFU治療を行うことが可能であり,今後,予後不良な膵癌への低侵襲治療のひとつとなりうる可能性が示唆された.
著者
辻 修平
出版者
岡山大学
巻号頁・発行日
1998

宇宙空間から地球に入射する放射線のことを宇宙線と呼ぶ。この宇宙線は,地球に入射する1次宇宙線とそれが大気圏内の原子核と相互作用して生み出された2次宇宙線との2つに大別される。1次宇宙線は約90%が陽子,9%がα線である。これら1次宇宙線が大気に入射すると大気中の陽子,あるいは中性子と強い相互作用を起し主に多数のπ(パイ)中間子が発生する。そのうち中性のπ(0)は2つのγ線に崩壊し,さらにこのγ線は対生成を起しe(-)(電子)とe(+)(陽電子)を生成する。また電荷を帯びたπ(+),π(-)中間子は,μ粒子(ミューオン)とυμ(ミューオン・ニュートリノ)に崩壊する。μ粒子はレプトンなので大気の核子と強い相互作用はしない。また,μ粒子はe(電子または陽電子)とυe(エレクトロン・ニュートリノ)とυμに崩壊するがπ中間子に比べ寿命が長いため,地表に到達する2次宇宙線の約70%がμ粒子である。1950年代から1980年代にかけてμ粒子の強度,および電荷比の理論的,実験的研究がなされてきた。これによりμ粒子の生成に関与したπ中間子やK中間子の割合を求めることができる。さらに,これから1次宇宙線のエネルギースペクトルや1次宇宙線が大気と相互作用するプロセスを導き出すことができる。また天体宇宙物理学的見地からは,地表にどの程度μ粒子が降り注いでいるかを知っておくことは必要である。最近では,ニュートリノ・フラックスの理論的計算を確かめるためにμ粒子のエネルギースペクトル及び電荷比がきわめて重要な指標となっている。というのは,最近のニュートリノ地下実験の報告によると,地下実験のニュートリノの観測値とニュートリノフラックスの理論計算に大きなずれが生じているためである。この意味においても十分な精度のミューオン強度の地上観測結果が要求される。理論的には全天頂角方向から到来するμ粒子のエネルギースペクトルが計算されているにも関わらず,実験では主に鉛直近辺と大天頂角近辺(75°~90°)しか報告されていない。これは,巨大なμ粒子観測装置を垂直か水平に設置することは比較的容易であるが,いろいろな方向に向けることは難しいからである。これに対して,任意の方向からのμ粒子を観測できる宇宙線検出器「岡山粒子望遠鏡」の設計,建設,観測を行なった。「岡山粒子望遠鏡j は,サーボ・モータ・システムIこよる経緯儀になっており,コンピュータ制御により任意の方位角,天頂角に検出器を向けることができる。この機能は大気μ粒子の全方位測定に対して非常に有用である。さらに入射荷電粒子の電荷符号の判別,運動量の測定が可能である。本論文では,この「岡山粒子望遠鏡」を用いて天頂角毎の測定と方位角毎の測定を行い,大気μ粒子の全方位測定結果を示した。天頂角0°から81°までから到来するμ粒子を観測し,観測期間1992年から1996年,及び運動量領域1.5GeV/cから250GeV/cのデータを天頂角別に解析し,μ粒子の強度分布,電荷比(charge ratio)を運動量の関数として求めた。天頂角0°から81°まで2°刻み連続的なμ粒子強度分布はこれまで未測定であったが,本論文に示すように中間角度領域ではμ粒子強度に特異性がないことを示した。これによって,これまでに測定された狭い天頂角領域での実験や理論計算の結果を検討することが可能になり,本論文とのよい一致を見た。この一致は,理論の前提が示す全天頂角領域に対し,運動量領域1.5GeV/cから250GeV/cの範囲で,ミューオンがほとんどπ中間子からの崩壊の寄与に依存していること,K中間子の寄与は無視してよいことの恨拠を与えた。このことは1次宇宙線と空気核衝突においてK中間子が関与するような特異な反応は生じていないことを示すとともに,大気ニュートリノ・フラックスを推定する際にπ→ μυμのプロセスのみを扱えばよいことも示している。方位角毎のμ粒子測定に関しては,天頂角5°,20°,40°に対し8方位角方向を観測し,観測期間1997年から1998年までのデータを解析用に採用した。運動量領域に関して2.5GeV/cから3.5GeV/c(低運動量領域),3.5GeV/cから100GeV/c(高運動量領域)までの2領域に分け,電荷別,方位角方向別にこれらのデータを解析した。この結果,低運動量領域において,特定の方位角領域でμ粒子強度が減少した。これは,地磁気の影響のために,特定の方位角方向からのμ粒子の通過距離が延び,μ粒子が電子及び2種のニュートリノに崩壊するためである。大気ニュートリノは,μ粒子の生成(A:μ粒子強度の天頂角依存性),崩壊過程(B:電荷別μ粒子強度の方位角依存性)に1対1に対応するので, μ粒子のフラックスを求めることは,大気ニュートリノ・フラックスを求めることに対応する。このととを確証するために,本論文での解析A,Bからニュートリノエネルギーにして1GeVの,大気電子ニュートリノ,大気反電子ニュートリノ・フラックスを求め,相対変化の割合が数%であることを得た。さらに,海面位で,天頂角5°,1GeVの各々の大気ニュートリノ・フラックス比を求め,電子・反電子ニュートリノ,ミューオン・反ミューオンニュートリノ,ミューオン・電子ニュートリノ比それぞれ,1.23,1.02,2.26を得た。これらの比は,理論的に予想されるもの(それぞれ,1.24,1.04,2.48)に近い値であり,岡山粒子望遠鏡で大気二ユートリノ・フラックスを求めることができることを示した。
著者
糸井 隆夫 土屋 貴愛 栗原 俊夫 石井 健太郎 辻 修二郎
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.39-46, 2013

<b>要旨:</b>胆管ステンティングおよび胆嚢ステンティングの際の注意すべきポイントについて解説した.胆管ステンティングにおいてはステントの種類と特性を理解しておくことが肝要である.特に胆管メタルステントに関しては近年様々な種類のものが登場しており,ステントの特徴(カバーの有無,編み込み型かレーザーカット型か,再収納の可否など)を理解した上でのステンティングが極めて重要である.胆嚢ステンティングにおいてはまず胆嚢内にガイドワイヤーを送り込むことが重要であり,胆嚢管の分岐パターンを理解して効率よく確実な胆嚢管挿管を心がけることが大切である.<br>
著者
宗岡 寿美 田頭 秀和 辻 修 土谷 富士夫 矢沢 正士
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.805-809,a2, 2005
被引用文献数
1

平成15年 (2003年) 9月26日午前4時50分ごろに発生した「平成15年 (2003年) 十勝沖地震」はマグニチュードM8.0かつ最大震度6弱の大地震であり, 農地・農用施設にも多くの被害が発生した。ここでは, 十勝管内で調査された十勝沖地震の農地被害状況を報告する。<BR>この地震に伴い液状化による噴砂現象が各地の圃場で認められ, 収穫直前の作物などに被害がもたらされた。これら噴砂土の物理的性質 (とくに粒度分布) は発生地域の違いにより異なっていた。また, 農地災害地区内の圃場を試掘調査することにより, 地震に伴う地すべりや地割れに起因して暗渠管の断裂や沈下といった被害が多く発生していたことなども確認された。
著者
土谷 富士夫 松田 豊 辻 修
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

寒冷・少雪の気象条件にある十勝地域では融雪期において、凍結した土壌が完全に融解するまでの期間、凍結層が土中に残存し不透水層となり、融雪水や降雨によって土壌浸食の発生が多く、問題となっている。本研究では、寒冷、少雪である十勝地域における農地造成地、草地造成地を主な対象として現地調査、人口降雨装置による土壌侵食実験、傾斜枠試験、降雨係数の算出解析等を通して、農用地造成圃場における侵食実態、凍結土壌の浸食メカニズム、侵食予測等について検討したものである。本研究で得られた主な知見をまとめると以下のようになる。融雪期間における造成農地の土壌侵食は、圃場面よりもそれに付帯する法面において侵食被害が多く発生していることが明らかとなった。また法面方向による土壌侵食の危険性は、北向き法面が南向き法面と比較して融解時期、法面土層中に凍結層の残存する期間が長く、かつ積雪も日陰のため多く残存し、その危険性の高いことが明らかとなった。人工降雨装置を使用した凍結融解繰り返し斜面の土壌浸食実験の結果より、凍結融解繰り返し斜面では、どの勾配においても凍結融解の繰り返し回数が増加するとともに流亡土量の増加が見られ、勾配が急になるほどこの傾向が強くなることが明らかとなった。傾斜侵食観測枠を設置し土壌侵食実験を行った結果、積雪期間における降雨係数の換算係数を求めると、北斜面で7.0、南斜面で10.2となった。これより十勝勝地域のような寒冷少雪であり、土壌凍結の深い地域の融雪期における土壌侵食の危険性が非常に高いことが明らかとなった。