著者
松田 安弘 定廣 和香子 舟島 なをみ
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-22, 2004
被引用文献数
1

本研究の目的は、男性看護師の職業経験の説明概念を創出することにより、その総体を明らかにし、看護職集団における少数者である男性看護師の職業経験の特徴を考察することである。研究方法論には、看護概念創出法を適用し、病院に就業する男性看護師23名を対象とした半構造化面接によりデータを収集した。持続比較分析の結果は、男性看護師の職業経験が次の6概念により説明できることを示した。その6概念とは、【I.他者関係の円滑化による孤立回避】【II.期待・関心の享受と喪失による存在意義の模索】【III.付加価値獲得の試みと失敗】【IV.職業選択への迷いと価値づけ】【V.問題克服による看護職者としての自立と役割の拡大】【VI.職業活動と私的活動の均衡維持】である。この内、I、II、IIIは、男性看護師が、大多数の女性看護師とは異なる存在であることを自覚し、自己の異質性の抹消や特異性の発揮に翻弄されるという「看護職集団における性の異なる少数者ゆえの職業経験」をすることを示す。また、IV、Vは、男性看護師が、職業活動を通し、改めて看護職を選択すると共に、様々な問題を克服しながら看護職を価値づけ、自立していくという「性差に関わらない看護師に共通する職業経験」をすることを示す。さらに、VIは、男性看護師が、どのような状況にあっても職業を続けていくことを第一に考え、それを中心に職業活動と私的活動の充実を目指し、安定した生活を築いていくという「成人期の就業男性に共通する職業経験」をすることを示す。
著者
舟島 なをみ 定廣 和香子 亀岡 智美 鈴木 美和
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.9-14, 2002-03

本研究の目的は,現実適合性が高く信頼性・妥当性を確保した看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度を開発することである.尺度の質問項目作成には,質的帰納的研究の成果である学生が知覚する看護学教員のロールモデル行動を示す35カテゴリを基盤として用いた.また,内容的妥当性の検討に向け,専門家会議とパイロットスタディを実施し,その結果に基づき,56質問項目の5段階リカート型尺度「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度(試作版)」を構成した.さらに,この試作版を用いて全国の看護学教員1457名を対象に本調査を実施した.本調査から得た有効回答815部に対する項目分析の結果に基づき35質問項目を選定し「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度」を構成した.自己評価尺度のクロンバックα係数は0.955であり,因子分析の結果は,尺度が質問項目の作成基盤とした35カテゴリを反映していることを示した.これらの結果は,開発した自己評価尺度が信頼性・妥当性を確保していることを示唆した.
著者
舟島 なをみ 杉森 みど里 定廣 和香子 亀岡 智美
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.37-45, 1996-03
被引用文献数
1

本研究は,看護教育制度が大学教育へと移行しつつあるオーストラリア・カナダ・アメリカを対象にその促進要因と阻害要因とを明らかにすることにより,わが国における看護婦養成教育制度改革の基礎資料とすることを目的としている。歴史的研究のデザインを用い,上記3ヶ国の1960年度以降の教育制度改革に関わる文献を分析した。その結果,看護教育制度大学化の促進要因としてオーストラリアから7要因,カナダから4要因,アメリカから4要因が抽出された。また,阻害要因としては,オーストラリアからは7要因,カナダから4要因,アメリカから4要因が抽出された。これらの促進要因のうち,【看護と看護婦養成教育に関する調査・研究報告】【看護婦職能団体の活動】【財政援助を含めた行政府の協力】といった3要因は,3カ国すべてに共通していた。一方,阻害要因においては,【医師をはじめとした他職種および病院協会からの反対】,【看護職能団体を含めた看護職内部の意見対立】といった2要因が3カ国すべてに共通していた。これらの結果から,今後,看護婦養成教育施設や,看護職能団体の活動に関する調査研究の必要性が示唆された。