著者
植田 満美子 舟島 なをみ 中山 登志子
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.23-36, 2018-03-31 (Released:2018-04-27)
参考文献数
58

本研究の目的は、潜在看護師の離職から再就職に至る経験を表す概念を創出し、その特徴を明らかにすることである。研究方法論には看護概念創出法を用い、1年以上の離職期間を経て再就職した看護職者18名への半構造化面接によりデータを収集した。分析の結果、潜在看護師の離職から再就職に至る経験を表す17概念が創出された。それらの概念とは【看護職放棄による自適生活実現と新たな興味探索】【新たな地位への一時的満足と看護職放棄への後悔】【看護職帰還勧奨への追従と却下】【就労条件適合施設探索と探索難渋】【看護職帰還に向けた就労条件設定と現実への迎合による条件緩和】等である。考察の結果は、再就職に至った潜在看護師の経験が、「自由な時間を持つことを通して再就職に向けた活力を得る」「離職後の地位に傾倒したり職業を問い直したりしながら、看護職を価値づけ再就職に至る」「再就職への契機を獲得する」「再就職の準備過程において多様な問題に直面するものの、それらを解決し再就職に至る」「再就職の実現に向け、現実と折り合いをつけながらの継続的な準備を必要とする」の5つの特徴を持つことを示唆した。現在、潜在看護師を対象とする研修の多くは、再就職への不安解消を目的とした看護技術の確認を中心に実施されている。本研究は、再就職実現のために必要とする準備や予測される問題の解決に向けた知識の提供もまた重要であることを示唆した。
著者
松田 安弘 定廣 和香子 舟島 なをみ
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-22, 2004
被引用文献数
1

本研究の目的は、男性看護師の職業経験の説明概念を創出することにより、その総体を明らかにし、看護職集団における少数者である男性看護師の職業経験の特徴を考察することである。研究方法論には、看護概念創出法を適用し、病院に就業する男性看護師23名を対象とした半構造化面接によりデータを収集した。持続比較分析の結果は、男性看護師の職業経験が次の6概念により説明できることを示した。その6概念とは、【I.他者関係の円滑化による孤立回避】【II.期待・関心の享受と喪失による存在意義の模索】【III.付加価値獲得の試みと失敗】【IV.職業選択への迷いと価値づけ】【V.問題克服による看護職者としての自立と役割の拡大】【VI.職業活動と私的活動の均衡維持】である。この内、I、II、IIIは、男性看護師が、大多数の女性看護師とは異なる存在であることを自覚し、自己の異質性の抹消や特異性の発揮に翻弄されるという「看護職集団における性の異なる少数者ゆえの職業経験」をすることを示す。また、IV、Vは、男性看護師が、職業活動を通し、改めて看護職を選択すると共に、様々な問題を克服しながら看護職を価値づけ、自立していくという「性差に関わらない看護師に共通する職業経験」をすることを示す。さらに、VIは、男性看護師が、どのような状況にあっても職業を続けていくことを第一に考え、それを中心に職業活動と私的活動の充実を目指し、安定した生活を築いていくという「成人期の就業男性に共通する職業経験」をすることを示す。
著者
松田 安弘
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-5, 2016-03-31 (Released:2016-08-01)
参考文献数
17

病院で働く看護職者は、多くの場合、チームで看護を提供している。看護系大学の急増、社会人入試制度の導入、男性看護師の増加、外国人看護師の受け入れ等、わが国の看護職の社会は年々変化し、看護チームは様々な背景を持つ看護職者によって構成されるようになった。このような変化に伴い、同一の背景を持つ多数者と、多数者とは異なる背景を持つ少数者が協働して質の高い看護を提供することが求められる。そのためには、まず、多数者、少数者の両者が相互に理解し合う必要がある。そこで、本稿は、少数者の経験の理解に資する研究成果を紹介し、看護職者として豊かに職業活動を展開していくための示唆を提示する。
著者
塚本 友栄 舟島 なをみ
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.22-35, 2008-03-31 (Released:2016-11-10)
被引用文献数
11

本研究は、就職後1年以内に退職した新人看護師の経験と、1年以上就業を継続できた新人看護師の経験の比較を通して、退職した新人看護師の経験の特徴を明らかにし、看護基礎および看護継続教育の課題を考察することを目的とする。本研究の第1段階は、看護概念創出法を適用し、半構造化面接法により退職者18名からデータを収集した。持続比較分析の結果、退職した新人看護師の経験を表す60カテゴリからなる15概念を創出した。第2段階も看護概念創出法を適用し、半構造化面接法により継続者20名からデータを収集した。持続比較分析の結果、就業を継続できた新人看護師の経験を表す53カテゴリからなる14概念を創出した。第3段階は、メタ統合を用いて、退職した新人看護師の経験を表す60カテゴリと就業を継続できた新人看護師の経験を表す53カテゴリを比較・統合した。その結果、退職した新人看護師の経験と就業を継続できた新人看護師の経験が、共通する経験、退職者のみに存在する経験、継続者のみに存在する経験の3つに分類できることを明らかにした。考察の結果は、早期退職防止に向けた看護基礎及び看護継続教育の課題として、看護専門職者としての自律的な態度の獲得、自己の客観視、自立した社会人としての責務の理解、問題を解決可能な具体的なレベルで捉えられる能力獲得のための支援が必要であることを示唆した。
著者
鹿島 嘉佐音 舟島 なをみ 中山 登志子
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.31-43, 2019-03-31 (Released:2019-04-26)
参考文献数
64

本研究の目的は、病院に就業するスタッフ看護師が職場の「働きやすさ」の評価に活用可能な尺度を開発することである。スタッフ看護師が「働きやすい」、「働きにくい」を判断するための根拠として用いる基準に基づき38質問項目を作成、尺度化した。内容検討会とパイロット・スタディにより尺度の内容的妥当性を確認した。この尺度を用いて全国の病院に就業するスタッフ看護師を対象に質問紙調査を実施し有効回答459を分析した。分析の結果、クロンバックα信頼性係数0.935、再テスト法の信頼性係数0.872であった。既知グループ技法により、5つの仮説全てが支持された。また、尺度総得点と職務満足測定尺度総得点および、「働きやすさ」を問うために設定した質問への回答より得られた得点の間に有意な正の相関を認めた。以上より、「職場の『働きやすさ』評価尺度-病院スタッフ看護師用-」の信頼性と妥当性が検証された。
著者
山下 暢子 舟島 なをみ 中山 登志子
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.51-65, 2018-03-31 (Released:2018-04-27)
参考文献数
69
被引用文献数
4

本研究の目的は、看護学実習中の学生が直面する問題の全容を明らかにし、その特徴を考察することである。全国の看護基礎教育機関のうち、研究協力に承諾の得られた41校に在籍する看護学生2,291名を対象とする調査を行った。測定用具には、看護学実習中の学生が直面している問題を問う自由回答式質問を含む質問紙と対象者の特性を問う質問紙を用いた。回収された質問紙は717部(回収率31.3%)であった。看護学実習中に問題に直面したと回答した学生345名のうち、看護学実習中の学生が直面している問題を問う自由回答式質問に回答した335名の記述を、Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した。結果は、【知識量の乏しさと活用度の低さによるクライエント状態に応じた看護過程展開難航】【看護を学ぶ学習者としての素養の乏しさと欠落による自信喪失】【不適確な指導による指導者との相互行為諦念と厭悪】など、看護学実習中の学生が直面する問題を表す37カテゴリを明らかにした。Scott, W.A. の式に基づくカテゴリへの分類の一致率は90%以上であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。また、37カテゴリから、6種類の特徴が見いだされた。本研究の成果は、看護学実習中の学生が自身の直面している問題を客観的に理解することを可能にし、その問題の解決手段を導くために活用可能な知識となる。また、看護学教員にとって、学生の能動的学修支援に有用である。
著者
伊藤 正子 舟島 なをみ 野本 百合子 鈴木 美和
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-75, 2006

本研究の目的は、患者の安全保証に向け看護師が講じている対策と実践を明らかにし、その特徴を考察することである。測定用具には、日々の実践の中、看護師が患者の安全保証に向けて何を実践しているかを問う自由回答式質問からなる質問紙を用い、郵送法により全国の病院に就業する看護師1056名に質問紙を配布した。回収された質問紙622のうち、自由回答式質問に回答した588名分の記述をBerelson,B.の内容分析の手法により分析した。その結果、対象者の記述は患者の安全保証に向け看護師が講じている対策と実践38カテゴリを形成した。この38カテゴリとは、【与薬・処置・検査などを確実に行うために最適な確認方法を選択すると共に、状況に応じて複数の確認方法を組み合わせて用いる】【可能な限りクライエントと直接関わることを通して個別状況を把握し、危険が予測される場合には頻繁に訪室し要点を捉えた観察を緻密に行う】などであった。Scott, W.Aの式によるカテゴリへの分類の一致率は76.7%,72.5%,71.3%であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。考察の結果は、看護師の講じている安全保証対策と実践が8つの特徴を持つことを示唆した。これらの38の対策と実践、その特徴は、安全教育の系統的な知識の提供や、安全に関する実践を自己評価できるための指標として活用可能である。
著者
松浦 一恵 亀岡 智美
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.69-84, 2015-03-31 (Released:2016-11-10)

研究目的は、手術室配属となった新人看護師が、何に対し「仕事に関する就職前のイメージと就職後の実際の相違」を知覚しているのかを解明し、その知覚の特徴を考察することである。全国196病院に勤務し、新人看護師として手術室配属となった経験を持つ臨床経験4年未満の者954名を対象に、郵送法による調査を行なった。測定用具には、対象者背景と「仕事に関する就職前のイメージと就職後の実際の相違」に対する知覚を問う自由回答式質問を含む質問紙を用いた。454名(回収率47.5%)から質問紙を回収し、自由回答式質問に回答していた186名の記述をBerelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した。その結果、【患者や家族との相互行為機会や時間の多少、その獲得の難易】等の手術室配属となった新人看護師が知覚する「仕事に関する就職前のイメージと就職後の実際の相違」を表す30カテゴリが形成された。Scott, W. A.の式に基づき算出したカテゴリ分類の一致率は、看護学研究者2名ともに92.3%であり、30カテゴリが信頼性を確保していることを示した。30カテゴリと文献との照合は、手術室配属となった新人看護師による「仕事に関する就職前のイメージと就職後の実際の相違」の知覚が、6つの特徴を持つことを示唆した。周囲の看護師や医療従事者がこのような特徴を理解し支援することは、手術室配属となった新人看護師の学生からの役割移行、職場適応や就業継続を促進する。