著者
長谷川 由美 宮下 実
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.43-53, 2015-09-01

[要旨]北米を原産地とするアライグマは今や日本全国に分布し特定外来生物にも指定されている. 日本に定着して50年を越えたが, ヨーロツパではその侵略の歴史はすでに80年の歴史を有する. わが国では生能系の撹乱, 農業被害, さらには各地の神社仏閣等での文化財被害など多くの問題をアライグマは引き起こしているが, これからのアライグマ防除を考えて行く上で, ヨーロッパでの侵略状況および現状, 対策等の先例を知ることは重要と考え, 本調査を行った. 1995年当時, 原産地以外でアライグマの生息が確認されていたのはヨーロッパではドイツ, ポーランド, オランダ, フランス, ロシアなど9力国に過ぎなかったが, 今回の調査ではアルプスを越えてスイス, イタリアヘの侵入, ドーバー海峡を渡って英国ヘの侵入, 東ヨーロッパでの分布拡大, バルト諸国, スカンディナヴィア半島への拡大と, 33カ国を調査した結果, 25カ国にも広がってアライグマが定着していることが判明した. [Abstract]Raccoons, native to North America, are distributed across Japan and designated as an invasive alien species now. Raccoons have also been an invasive species for over 80 years in Europe. They have colonized areas in Japan over 50 years and have caused ecological, agricultural and cultural property damage (to places such as shrines or temples). The reason we launched this research is that it is essential for raccoon control to study the European precedents, including the process of habitat invasion and also the current situation. In 1995, raccoons were found in only nine countries outside of their countries of origin, such as Germany, Poland, The Netherlands, France, and Russia et cetera, but this research found that they had expanded to 25 countries including Italy, and over the Alps to Switzerland, across the Straits of Dover to England, to the Baltic states, the Nordic and Eastern European countries, to a total of 33 nations.
著者
宮下 実 仲 幸彦 藤吉 圭二
出版者
近畿大学先端技術総合研究所
雑誌
Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University (ISSN:13468693)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-13, 2013-03

本研究は平成23年度和歌山県大学等地域貢献促進事業の助成を受けた。[要旨] 特定外来生物に指定されているアライグマProcyon lotorは今や日本全国に分布し、生態系の撹乱や農作物被害などに大きな影響を与えている。6年ほど前からは各地の神社仏閣、城等においてアライグマによる文化財被害が目立ち始めた。果実類の一大産地として知られる和歌山県はアライグマによる農作物被害が甚大であり、有害鳥獣駆除による捕獲数も年間1500頭を超えるものの、社寺におけるアライグマ被害は知られていなかった。歴史的に貴重な文化財をアライグマから防除することを目的に、県下の社寺の現状を調査することとし、まず県下300の社寺にアライグマ被害に関するアンケート調査を行った。それをもとに県下24市町191の社寺におけるアライグマの侵入・被害状況を現地に赴き実地に調査した。被害は90の社寺に認められ、被害率は47%であった。本調査をするに当たって、社寺の柱に残る爪傷がアライグマのものかどうかについては、独自に判別基準を設けて行った。 [Abstract] Invasive alien raccoons have already naturalized all prefecture in Japan. Raccoons have many ecological effects and threaten biological diversity. They compete with native fauna, give serious damage to farm products and be important vector of zoonosis. Besides such ecological effects, raccoons began to invadesome historical temples, shrines and castle some years ago. The damages to cultural assets caused by raccoons are enormous in Japan. Many raccoons inhabit in Wakayama prefecture and give serious damages to farm products, such as fruits and corns. About 1500 raccoons were captured in Wakayamaprefecture in a year. As the damages of temples and shrines by raccoons were not known in Wakayama, we survey 191 temples and shrines in Wakayama prefecture and find 90 temples and shrines are damaged by raccoons.
著者
宮下 実
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.157-160, 2007 (Released:2007-08-29)

当院のNSTは“全科型”で活動している。NST介入の依頼があると、まずはNST管理栄養士が栄養アセスメントを実施し、モニタリング項目等の栄養管理計画を検討していく。今後のfollow upに有効なモニタリング項目を判断し、提言する。管理栄養士はその判断について論拠とともに伝える。NST報告書はそのツールの1つとなる。栄養ケアのモニタリングを進めていく場合、すべての患者を基準値の範囲内に導く必要はなく、種々の栄養指標の改善や疾病悪化の防止が患者のQOLの向上にもつながる。臨床の場では、個々のセットポイントを考慮した栄養管理やモニタリングが必要である。
著者
森本 委利 宮下 実
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.67-71, 1997-02

1994年10月, 当園で検疫中の若齢アルダブラゾウガメ(雌)1頭が死亡した。病理学的ならびに細菌学的検査の結果, 当該動物の死因は, Aspergillus fumigatus感染を伴った非定型抗酸菌Mycobacterium nonchromogenicum complex(M.terrae complex)感染によることが判明した。感染はまず抗酸菌に始まり, それによる衰弱後, アスペルギルス感染に至ったと病変から推察された。しかし抗酸菌の感染時期は推定できなかった。本症例は, アルダブラゾウガメにおけるM.nonchromogenicum complex(M.terrae complex)感染の最初の報告である。