- 著者
-
中田 佳世
井岡 亜希子
宮代 勲
松浦 成昭
- 出版者
- 日本小児血液・がん学会
- 雑誌
- 日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.3, pp.258-262, 2015 (Released:2015-10-21)
- 参考文献数
- 33
小児と成人のはざまにある思春期・若年成人のがん患者は,診療科が統一されておらず,その実態の把握が困難な状況にある.欧米では,この世代をAYA(adolescent and young adult)という一つの集団として捉え,同世代に発生するがんの特徴や問題点が明らかにされている.すなわち,罹患数が小児に比べ多い,疾患分布が他の世代とは異なる,治療成績の進歩が乏しい,就学や就職,高額の医療費負担など社会的な問題を抱えていることなどが指摘されている.我が国の人口動態統計(2011年)によると,AYA世代(15–29歳)の悪性新生物による死亡数は年間約700人で,自殺や不慮の事故に次ぐ死因となっている.しかし,AYA世代のがんに関する疫学データはきわめて少ない.一定の地域に発生した全がん患者を登録する地域がん登録は,その地域で新たに発生したがん患者数(罹患数)および罹患率を計測できる唯一のシステムである.大阪府がん登録資料によると,AYA世代のがんの罹患率は,人口100万対約159であった.また,部位別罹患割合をみると,白血病,リンパ腫,脳腫瘍などの小児に多いがんと,婦人科がんなどの成人でみられるがんが混在しており,さらに,急性リンパ性白血病や横紋筋肉腫においては,AYA世代の5年生存率が小児に比べて低いことがわかった.我が国のAYA世代のがんについての課題を明らかにするためには,この世代に注目した調査研究を進める必要がある.