著者
近藤 雅樹 佐々木 史郎 宇野 文男 宮坂 正英 熊倉 功夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

平成17年度は北欧・東欧・ロシア(サンクトペテルブルグ)に所在する博物館のコレクションを重点的に調査し、近藤・佐々木・水口千里(研究協力者)・宮坂がその中心となり、コペンハーゲンとストックホルムでの調査に伊藤廣之(研究協力者)・藤井裕之(同)が参加した。また宮坂と小林淳一(研究協力者)がライデンとミュンヘンにおいて川原慶賀の作成した動植物の標本画と風俗画の調査をおこなった。ストックホルムでは国立民族学博物館が所蔵するツンベリーの収集資料(100点余)を調査し、金属製ボタン12点などを確認した。彼が持ち帰ることができた資料は小さなものばかりだった。日本資料とされる秤量器具の中には干の中国製品が混在していた。彼以後の収集に係る能面約50点をはじめとする工芸品類、和蝋燭、刻煙草、海藻などの産業資料も確認した。コペンハーゲンでは国立博物館において非公開資料の特別閲覧が許可され、和紙のコレクションや人力車とその乗客の生人形1体などを確認した。同館の常設展示は目本展示が非常に充実している。これは、同館のカイ=ビルケット・スミスと岡正雄の親交が深かったことにもよるが、民族学・考古学資料に限らず美術工芸資料と科学・産業技術資料にも見るべきものが多い。ドレスデンでは民族学博物館と衛生博物館に20世紀初期の衛生博覧会に日本が出品した資料が多数残されていた。明治時代末期に坪井正五郎が三越百貨店と提携して開発した教育玩具もあった。サンクトペテルブルグでは前年度に続きクンストカメラの所蔵資料を調査した。駅舎や鉄橋など近代初期の建造写真を多数収録した大阪製の「のぞきからくり」を発見したほか、江戸時代の望遠鏡などを確認した。ヨーゼフ・クライナー(海外研究協力者)は国際シンポジウムの成果を編集し『ヨーロッパ博物館・美術館収蔵の日本関係コレクション』2巻を刊行した。
著者
宮坂 正英 久留島 浩 青山 宏夫 日高 薫 小林 淳一 松井 洋子
出版者
長崎純心大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ヨーロッパ各地の博物館、大学、図書館ならびに末裔宅に所蔵されるシーボルト関係文書並びにシーボルトが日本滞在中に収集した日本産業・生活文化資料を横断的に調査・研究し、シーボルトがヨーロッパでどのような構想をもとに日本を紹介しようと試みたのか、その一端を復元的に研究しようする試みであった。今回の調査でミュンヘン国立民族学博物館にシーボルトが死の直前まで行っていた日本展示の構成を具体的に示す目録が発見され、これをもとに展示品を抽出した。その結果、シーボルトの日本紹介は従来の美術・工芸を中心とした日本紹介と異なり、日本の産業とその産業に従事する日本人の生活文化の紹介に主眼が置かれていることが分かった。このことから、シーボルトが意図した日本紹介は、独自の発想にる異民族およびその文化の理解の方法に基づいて行われていることが分かり、今後シーボルトの民族学的な思想を解明する手がかりを得ることができた。また、本研究を通じて、ヨーロッパ各地の関係諸機関に分散して所蔵されているシーボルト関係資料を横断的に調査・研究する方法が必要不可欠であることが認識された。このためには、画像付きデジタル・データベースの共有化が最適であるため、最初の試みとして、ミュンヘン国立民族学博物館所蔵のシーボルト・コレクションおよびシーボルトの末裔フォン・ブランデンシュタイン家所蔵のシーボルト関係文書の画像付きデジタル・データベースの構築を開始した。