著者
宮坂 等
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.334-339, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
30

遷移金属錯体は,中心金属イオン周りの配位子場を調整することで,その酸化還元特性やd電子スピン軌道を変えうる.その特徴を基に,酸化還元活性架橋配位子と連結することで,d-p軌道が共役した電荷移動型の錯体多次元格子,いわゆる,電子ドナー(D)と電子アクセプタ(A)の交互格子を構築できる.このようなDmAn格子でも,D部位のイオン化ポテンシャルとA部位の電子親和力と電子対反発エネルギーを分子・配位子修飾による可変数として捉えることで格子内電荷移動を制御することが可能である.同時に,格子で囲まれた“空間”を利用することで,ゲストの脱挿入による構造変調や格子‐ゲスト相互作用をトリガーとする動的な電荷移動を誘起できる.本稿では,主に電荷移動型錯体格子の電子・スピン制御について,格子上の電荷移動設計と空間利用という観点から解説する.
著者
山下 正廣 宮坂 等 伊藤 翼 高石 慎也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

超常磁性化合物に対して、外場を印加することにより、新規物性や機能性の発現を目指すものである。これまでに、単分子量子磁石Pc2TbとPc2Dyを用いて電界トランジスター素子を作成し、前者はp型を、後者はアンバイポーラーを示すことを明らかにした。また、STSを用いてPc2Tbの近藤ピークを観測することに初めて成功した。さらに、電子注入により近藤ピークの出現と消去を可逆的に行なうことに成功し、単分子メモリーの基礎を実現した。一次元鎖構造を持つ単分子磁石[Pc_2Tb]Cl_0.6は8K以下で世界で初めて負の磁気抵抗を示した。