著者
宮城 新吾 豊田 輝 寺村 誠治 脇元 章博 高木 康臣 吉葉 崇
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】<BR>人工股関節全置換術(以下THA)後の靴下着脱動作方法には,一般的に臨床で用いられている股関節屈曲・外転・外旋を伴う方法(以下外旋法),長坐位で体幹屈曲し行う方法(以下長坐位法),立位で膝を屈曲し行う方法(以下立位法)などがある.THA後にこれらの靴下着脱動作方法を指導する際,短期間に複数の方法を試し,安楽に動作可能な方法を理学療法士が経験的な要素から選定しているため,理解力に欠けている患者では困惑し,誤って危険な方法をとろうとしてしまうことがある.そこで本研究では,靴下着脱方法の外旋法,長坐位法,立位法の3つの動作方法の指標となる股関節関節可動域(以下ROM)を明らかにし,臨床における指導方法選定の参考角度を求めることを目的とする.<BR>【対象および方法】<BR>対象は,当院整形外科にて初回片側THA(全例セメントレス,進入方法は後側方アプローチ)後に理学療法を施行した52例.なお,関節リウマチ患者は対象から除外した.<BR>方法は,術後14病日の時点で,股関節屈曲・外転・外旋のROMを測定した.また,担当理学療法士が外旋法・長坐位法・立位法を指導後,対象がそれぞれの動作方法を実施し,最も安楽に靴下着脱可能と答えた動作を獲得方法として選定した.選定された動作方法ごとに,測定で得られた3方向の股関節ROMの各平均値を算出し,靴下着脱動作における必要可動域について検討した.併せて,選定された動作方法ごとに,3方向の股関節ROMの総和の最低値と最高値,平均値を算出した.<BR>【結果】<BR>術後14病日の時点での靴下着脱動作獲得率は100%であった.動作獲得方法別にみると,外旋法67%,長坐位法8%,立位法25%であった.外旋法における股関節屈曲角度の平均値は86.8度,外転27.1度,外旋28.2度であった.総和の最低値は105度,最高値は170度,平均値は137.5度であった.長坐位法における股関節屈曲角度の平均値は88.8度,外転20.0度,外旋16.3度であった.総和の最低値は120度,最高値は130度,平均値は125.0度であった.立位法における股関節屈曲角度の平均値は71.9度,外転17.3度,外旋20.0度であった.総和の最低値は95度,最高値は125度,平均値は110.0度であった.<BR>【考察】<BR>今回の対象においては,術後14病日の時点で,上記のような股関節ROMの参考角度が示された.外旋法や立位法では,総和の最低値と最高値の差が大きく,股関節ROM以外の要因の関与が予想された.複合動作である靴下着脱動作には,肩甲帯や体幹の柔軟性,腹部と大腿部の軟部組織量などの股関節ROM以外の身体的要因が靴下着脱動作獲得に与える影響は大きいことが推察される.今後は,身体的要因を含めた指導方法選定の検討を行っていく必要があると考えられた.<BR>
著者
豊田 輝 山崎 裕司 加藤 宗規 宮城 新吾 吉葉 崇
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.67-71, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
11
被引用文献数
9 7

本研究では模擬大腿義足歩行を課題として,シェイピングとチェイニング法,プロンプト・フェイディング法を活用した練習プログラムを考案した。そのプログラムを課した介入群の運動効果と自身による反復練習を課した対照群の運動効果について比較検討した。結果,対照群,介入群の両群ともに練習後有意な10 m歩行時間の短縮と,膝折れ回数,外転歩行回数,および体幹の側屈歩行回数の減少を認めた。しかし,その改善度合はいずれの項目も介入群において大きく,伸び上がり歩行回数については,介入群でのみ改善を認めた。したがって,今回のシェイピングとチェイニング法,プロンプト・フェイディング法を用いた歩行練習は,口頭説明と対象者自身による反復練習に比べ,より早期に模擬大腿義足歩行のスキルを向上させるものと考えられた。
著者
山﨑 裕司 豊田 輝 宮城 新吾 吉葉 崇
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-9, 2007
被引用文献数
1

障害を生じた後に行う動作練習は,新たな動作の学習過程として捉えられる.よって,理学療法士は動作障害の原因分析と動作指導のために学習という視点を持たなければならない.本稿では,学習行動理論を基本とした動作障害の原因分析とその指導方法について概説した.失敗は,動作練習に対する意欲を減退させるとともに,学習効率を低下させる.動作練習の原則は無誤学習である.そのプログラムの創出のためには,シェイピングや,課題分析,連鎖化,プロンプト・フェイディングなどの技法が有効である.理学療法士は,対象者の障害や日常生活動作に適した指導プログラムを創出する技術を身に付けると共に,その方法を再現可能な形で記述し,それらの効果について検証していかねばならない.