著者
村田 伸 大田尾 浩 村田 潤 宮崎 正光 甲斐 義浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1O2020, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】高齢者や身体障害者の下肢・体幹機能を定量的に測定する方法は、等速性筋力測定機器やハンドヘルドダイナモメーターによる筋力測定、または立位における重心動揺の測定などが一般的である.しかしこれらの方法は、使用する測定機器が高価なものが多く、測定できる臨床現場は限られている.そこで演者らは、高齢者および脳卒中片麻痺患者の下肢・体幹機能を簡便かつ定量的に評価する方法として、市販体重計を用いた座位での下肢荷重力測定法を考案し、その測定値の有用性について検討したので紹介する.【方法】測定は座位姿勢で、足底に置いた体重計を垂直方向に最大努力下で左右別に3秒間押すのみである.測定は左右2回ずつ行い、左右の最大値を合計して下肢荷重力(kg)とし、体重比百分率(%)に換算して分析した.なお、下記に示す健常成人ならびに要介護高齢者には、研究の趣旨と内容および被験者にならなくとも不利益が生じないことを十分に説明し、同意を得て研究を開始した.【健常成人における検討】座位での下肢荷重力が、下肢や体幹の機能を反映しているのか否かを検討するため、健常成人31名(男性12名、女性19名、平均20.4±0.6歳)を対象に下肢荷重力、下肢筋力(大腿四頭筋筋力)、体幹機能(坐位保持能力)を測定し、それらの関連性を分析した.相関分析の結果、それぞれに有意な正相関(0.46~0.66)が認められ、下肢荷重力は下肢筋力および体幹機能と密接に関連していることが示唆された.【要介護高齢者における検討】座位での下肢荷重力測定法の再現性と妥当性を検討するため、介護老人保健施設に入所中の43名(84.8±6.5歳)の要介護高齢者を対象に、下肢荷重力、Barthel Index(BI)得点、歩行能力を測定し分析した.テスト-再テスト法による級内相関分析の結果、下肢荷重力はICC=0.823という良好な再現性が認められた.また、下肢荷重力とBI得点とは有意な正相関(0.75)が認められ、自力歩行が可能だった25名の下肢荷重力と歩行速度とも有意な正相関(0.53)が認められた.さらに判別分析の結果、歩行可能群(25名)と不可能群(18名)を最もよく判別する下肢荷重力体重比の判別点は42.9%であり、判別的中率は86.0%であった.なお、下肢荷重力体重比が50%以上であれば、対象とした全ての高齢者が歩行可能であった.【考察】これらのことから、本測定法は大まかな基準ではあるが、高齢者の簡易下肢・体幹機能評価法として有用であることが示唆された.とくに、坐位で測定が可能なため、立位や歩行が困難、あるいは治療上立位動作が許可されていない高齢者の予後予測に使用できる可能性が示唆された.なお学会当日は、脳卒中片麻痺患者を対象とした研究結果や本測定法の限界についても報告する予定である.
著者
宮崎 正光 西畑 美幸 村田 伸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E0378, 2007

【背景と目的】老人保健施設でのリスク管理において、最も重要な事項の一つに転倒による外傷や骨折の予防がある。認知症を有する高齢者は、立ち上がりや立位保持が不安定であるにもかかわらず、車椅子から不用意に立ち上がり、転倒してしまうケースも少なくない。そこで我々は、低コストで作製可能な、立ち上がると音が鳴るクッション"お知らせクッション"を制作したので報告する。<BR>【お知らせクッションの作製手順】作製に必要な材料は、窓アラーム(約90dB)、CARワックススポンジ2個、クッションカバー、クッション、接着用材(グルーガン、接着スプレーなど)とスイッチをクッション外部より操作するための細い針金を準備する。作製は、まずクッションのアラーム部分を入れる場所(中央やや後部)にCARワックススポンジが入る程度の穴を空ける。窓アラームは分解し、スイッチ部分が扱えるようにCARワックススポンジの中に入れこむ。スイッチを外部から操作できるように、スイッチ部分に左右から針金を引っ掛けグルーガンなどで固定する。上から順に「切り取ったクッション材」、「磁石」、「スポンジ」、「窓アラームが入っているスポンジ」を、磁石と窓アラームの距離やクッション材の厚さを調節しながらクッション用のスプレーのりで接着する(磁石は、アラームが反応する部分の上部に取り付ける)。接着したものをクッションの穴の部分に入れ込む。クッションカバーに針金を通すための穴をあけ、クッションをカバーに入れる。最後にクッションカバーから針金を外へ出し、スイッチを外部から扱えるようにして、ON.OFFの標示をつけて完成となる。<BR>【考察】認知症を有する障害高齢者に対して、車椅子から不用意に立ち上がることで起こる転倒を防止するために、立ち上がると音で知らせてくれるクッション、"お知らせクッション"を制作した。現在市販されている車椅子に敷くタイプのセンサーは、5万円程度と高額である。しかし、我々が制作したクッションは、その主たる材料を100円ショップで購入でき、クッション費用を考慮しても1,500円程度と安価で作製が可能である。また、感度に関しても手作りであるため調節できるというメリットもある。転倒リスクの高い施設利用者に対してお知らせクッションを使用したところ、使用期間中の転倒はなかった。また、介護職員に対して、クッションの使用に関するアンケート調査を行った結果、介助量の軽減に繋がったとの回答が得られた。学術大会当日は、"お知らせクッション"の作製方法を中心に、使用経験(事例紹介)やアンケート調査の結果についても報告する。<BR>