著者
江嵐 充治 野口 昌邦 福島 亘 太田 長義 小矢崎 直博 北川 裕久 宮崎 逸夫 山田 哲司 中川 正昭
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1522-1527, 1992
被引用文献数
1

最近,乳房切断術後,直ちに広背筋皮弁や腹直筋皮弁など自家組織を用いて乳房再建術を行う一期的乳房再建術が普及しつつあるが,予後に関する報告を見ない.今回,これら自家組織を用いて乳房再建を行った83例と乳房切断術のみを行った153例の生存率と非再発生存率を比較検討した.その結果,一変量解析で5年生存率および非再発生存率は乳房再建症例でそれぞれ92%, 90%,非乳房再建症例でそれぞれ92%, 86%であり,いずれも両群間に有意差を認めなかった.更に多変量解析で両群症例の背景因子を補正し検討したが,両群間に有意差を認めなかった.従って,一期的乳房再建術の有無は乳癌の予後に影響を与えないことが示唆された.
著者
福島 亘 八木 雅夫 坂本 浩也 伊井 徹 清水 康一 米村 豊 泉 良平 三輪 晃一 宮崎 逸夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.2185-2188, 1993-08-01
被引用文献数
7

症例は64歳の男性で, 昭和56年8月に胸部中下部食道癌 (A_0 N_0 M_0 Pl_0, Stage I) にて右開胸開腹胸腹部食道全摘術および胸骨後経路頸部食道形成胃管吻合術を受けた. 切除標本の病理組織診断は低分化型扁平上皮癌, 深達度 ep, n(-) であった. 術後10年目に嘔気と嘔吐を認めたため内視鏡検査を施行したところ, 門歯列より 26cm の再建胃管内に径 2.0cm の山田 III 型ポリープを認めた. 生検結果は中分化型腺癌であった. 超音波内視鏡検査で深達度 m と診断されたため, 内視鏡的ポリペクトミーを施行した. 切除ポリープは病理組織学的に乳頭状腺癌, 深達度 m で断端における癌の浸潤も認めなかったため治癒切除と診断された. 食道早期癌術後の再建胃管に発生した早期胃癌の本邦報告例は, これまでに自験例を含め3例のみときわめてまれであったが, 再建胃管癌46例の本邦報告例の検討からは, 早期発見のため術後の再建胃管の定期的な検索が必要であると思われた.