著者
室岡 瑞恵 安藤 大成 宮本 真人 楠田 聡 内藤 一明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.247-257, 2023 (Released:2023-08-18)
参考文献数
31

養殖業は世界的にみて重要性を増している.北海道のサケマス養殖業も同様である.今後,北海道のサケマス養殖業を発展させていくために,養殖業のピークであった1991年と2019年の養殖場の分布を地形的な側面から明らかにした.水量は河川水の方が湧水よりも多いが,湧水の方が冬期の温度が高くサケマス類の成長に適し,河川水と湧水を併用している養殖場が多く存続する傾向にあった.水理地質図および地質図では,台地・段丘・扇状地におけるローム台地の境目の地下水量が豊富で採水が容易である所に養殖場が多かった.また,2019年の養殖場は火山フロントとほぼ一致しており,山麓で湧水が出やすい地点の養殖場が存続したと推察される.さらに,河川水を利用する養殖場はほぼすべてが石狩川,十勝川上流,沙流川上流にあった.また,標高の高い地域の養殖場が多く廃業していたことから,都市部から離れた厳寒地は養殖場には向かないと考えられた.
著者
柳井 清治 永田 光博 長坂 有 佐藤 弘和 宮本 真人 大久保 進一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.340-346, 2001-11-16
参考文献数
23
被引用文献数
4

北海道南西部を流れる積丹川において, 冬期間のサクラマス幼魚の生息環境と河畔植生の関係を1995年と1996年の2ヵ年にわたって調査した。調査方法として, 河川を1 m四方のメッシュに区切り幼魚の分布と物理環境を調べたところ, 川岸よりの流れが緩く積雪により押しつぶされた植生下で多く捕獲された。具体的な越冬環境の物理条件としては流速が0.2 m/s以下で高いカバー被覆率がある細粒の底質が好まれており, 水深に関しては一定の深さを好む傾向が見られなかった。さらに越冬時のサクラマス幼魚の胃内容物を調べたところ, 夏と比べて胃内容物指数が小さく, 周辺に生息する小型の水生昆虫をわずかに摂食しているにすぎなかった。メッシュを幼魚の密度により3タイプに分類し判別分析を行なったところ, 水中カバー, ついで表面流速などの環境因子が越冬場を決定する重要な要因として選択された。以上のことから, 冬季間サクラマス幼魚は流速の緩い積雪に覆われたカバー下を主に利用しており, こうした環境を創る上で倒木や河畔林から伸びる枝はきわめて重要な要素となることがわかった。