著者
宮沢 厚雄
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.211-221, 2002-03-31

図書館は補助金と許認可で守られた公営の保護組織である。図書館の提供するサービスは,国民の「知る自由」「知る権利」を保障することが前提となり,そのために無料原則が存在する。しかしながら複写サービスやILLサービスなど図書館の一部ですでに有料サービスが定着しているものもある。ネットワーク情報資源の提供にさいしても,「図書館の自由」,費用構造,媒体変換,「市場の失敗」の観点から有償化が認知されている。しかしながら図書館の無料原則はあくまでも民主主義の政治体制を支えるものと考えなければならない以上,その貫徹は必要なのではないだろうか。さらには図書館の持つ提供機能と保存機能とを分離させて図書館の運営形態を多様化させ,改めて図書館理念の再考を求める必要がある。
著者
宮沢 厚雄
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.231-245, 1999-03-31

こんにちの図書館は技術的環境の高度化と社会的要請の多様化に直面している。そのために図書館サービスも一部では有償化されている。中小規模大学図書館の一事例をみても,第一にゼロックス=コピーやディスケットへのダウンロードのような媒体変換,第二に相互貸借や外部のコンピュータ=ネットワーク資源へのアクセスのような他館資料の利用時に,課金されている。さらに第三点として新たな著作権の設定がある。オンライン型資料は,複製や改変が容易であればこそ,ネットワーク上での無断流通や不正アクセスを防止していかねばならないからである。インターネットの時代にあっては,図書館資料の範囲をコンピュータ=ネットワーク資源にまで拡大解釈して利用は無償とし,利用者が望んで行なう媒体変換には課金する必要がある。そして図書館側で著作権使用料を負担する措置を経て,電子図書館サービスにおいても無料原則の確立が望まれる。
著者
宮沢 厚雄
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.169-178, 2001-03-31

図書館法は五十年ぶりに改正され,第17条の無料原則にも「解釈」が加えられた。すなわちネットワーク情報資源の提供など,高度・多様化した図書館サービスについての有償化が容認されたのである。その根拠には「費用構造」「市場の失敗」「所得再配分」「費用-便益分析」「外部経済性」という公共経済学の理論が適用されるとともに,国や地方自治体の財政逼迫にさいしても図書館サービスの無料供給の優先順位は低く見積もられた。しかしながら公共経済学の拠って立つところは市場経済であり,図書館サービスに公共性があるか否かを決定するものではない。図書館サービスの公共性は歴史的に培われた理念であり,むしろネットワーク情報資源の提供などを無料原則のもとで提供できるような環境整備を論議すべきものではないだろうか。
著者
宮沢 厚雄
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.171-179, 2004-03-31

かつてのイギリス型の社会保障制度は,1970年代に財政危機と硬直化した行政運営を契機に行き詰まった。先進諸国では,1980年代には民間企業の手法を取り入れた公共サービスのあり方が試行された。日本でも行政改革の方向性が示され,図書館にも及んでいる。図書館では,1980年代の業務機械化を契機に人材調達が活性化した。同時に,業務委託も行なわれるようになり,その範囲は一般事務から専門業務まで及び,施設管理にまで至る。さらには,PFI事業による図書館や,NPO法人主体のPPP型の図書館も生まれ,図書館サービスに民間の活力が導入されている。図書館サービスは,公共性が確保されるのであれば,必ずしも行政が直接運営する必要はないという趨勢に至っている。課題とすべきは,ネットワーク情報資源の提供も踏まえて,労働条件の向上と図書館員の専門性の確保である。
著者
宮沢厚雄著
出版者
理想社
巻号頁・発行日
2010
著者
宮沢 厚雄 石川 徹也
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-124, 1995-05-01 (Released:2008-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

今日,図書館をとりまく環境が大きく変わりつつある。本論は先ず,これまでの人類の歴史を大きく三つに区分して図書館の変遷を概観した。神という普遍性に支配され聖書を頂点とする正典主義に基づく「中世ヨーロッパの図書館」,世界のあり様を形式的な論理規則に集約しようとした近代自然科学と同様に目録カードの集積が図書館の全体だとした「近代ヨーロッパの図書館」,コンピュータと遠隔地通信技術の発達により情報が新しい概念となった「現代の図書館」である。以上の分析を踏まえながら,高度情報化時代の図書館システムのあり方を考察し,個々の人間における「知」の営為との関わり合いを「これからの図書館」の課題として提言した。