著者
菱田 吉明 土田 知也 西迫 尚 家 研也 佐治 淳子 田中 拓 奥瀬 千晃 松田 隆秀 田中 逸
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.153-160, 2019 (Released:2019-12-24)
参考文献数
29

44歳女性。2日間継続する発熱を主訴に近医受診し,尿路感染症の疑いで抗菌薬を投与されたが改善なく,翌日に全身筋肉痛と下痢を伴う40度の発熱とショックバイタルを呈し当院紹介となった。身体所見では結膜充血と顔面・四肢体幹にびまん性紅斑を認め,血液検査ではWBC 17,700 /μL,CRP 34 mg/dlと高度の炎症反応を認めた。身体所見及び,頸部〜骨盤部造影CTでは熱源となり得る有意な所見は指摘できなかった。月経期間中であったことや,以前からの生理用タンポンの使用歴からToxic shock syndrome (TSS) を疑い,多剤抗菌薬併用療法に加え,大量補液,昇圧薬による加療を開始した。血液培養は陰性であったが,腟細菌培養でmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) が検出された。他の所見に加えて,第7病日には両手足の皮膚落屑を確認でき,TSSの診断を確定した。黄色ブドウ球菌が産生する毒素により引き起こされるTSSは敗血症性ショックを呈する疾患の中でも多臓器不全をきたし致死的となる可能性が高いが,疾患を想定した病歴聴取がなされなければ診断が困難な場合がある。近年日本でも生理用タンポンの使用率は増加傾向にあることより,月経関連TSSはさらに重要性が増すことが予想される。
著者
土田 知也 家 研也 西迫 尚 松田 隆秀
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.134-140, 2019-09-20 (Released:2019-09-25)
参考文献数
21
被引用文献数
8

背景:特定の臓器に偏らず幅広い視野で患者を診ることができる総合診療医が日本には必要であるものの認定制度開始は近年のためその育成は急務である.目的:総合診療に興味を持ちつつ臓器別専門医を選択した医師にインタビューを行い,「進路決定に関する要因」を抽出し,より理想的な総合診療研修の方法を検討する.方法:2017年4月~2018年4月,5名の対象者へ現在のキャリア選択に至った経緯について半構造化面接をおこない逐語録化されたデータを,修正グラウンデットセオリーアプローチを用いて分析した.結果:臓器別専門医選択の理由は「学問としての魅力」「他の医師から頼られる存在」「専門性を得る安心感」があがり,総合診療医の障壁として「将来の不安」「臓器別専門医からの批判」などがあがった.結論:より理想的な総合診療研修のためには,充実した地域医療研修や専門医制度の確立,総合診療再研修の提案・実践を行うことが必要である.
著者
家 研也
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-104, 2021-06-20 (Released:2021-06-23)
参考文献数
9

本邦の総合診療領域でも,研究に興味を持ち大学に所属したり,研究の勉強会に参加する若手が増えてきている印象がある.しかし,日本の総合診療業界自体が若く,総合診療が発展した諸外国と比較すると,まだまだ研究の質,量,そして実践のノウハウも発展途上である.臨床に重きをおく総合診療領域で,そもそもどのように研究テーマを選んで行けば良いのか,そして研究が実践できるようになるために何から始めれば良いのか,といった悩みを若手から聞く機会も多い.本稿では,もともと開業志向であった一人の若手総合診療医が,診療所,市中病院,大学病院を含む様々な環境を経験するなかで,少しずつ研究への興味を深めながら実践を続け,ライフワークの一つとするに至った過程を実際の研究の取り組みも併せて紹介する.
著者
土田 知也 家 研也 西迫 尚 松田 隆秀
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.134-140, 2019
被引用文献数
8

<p><b>背景:</b>特定の臓器に偏らず幅広い視野で患者を診ることができる総合診療医が日本には必要であるものの認定制度開始は近年のためその育成は急務である.</p><p><b>目的:</b>総合診療に興味を持ちつつ臓器別専門医を選択した医師にインタビューを行い,「進路決定に関する要因」を抽出し,より理想的な総合診療研修の方法を検討する.</p><p><b>方法:</b>2017年4月~2018年4月,5名の対象者へ現在のキャリア選択に至った経緯について半構造化面接をおこない逐語録化されたデータを,修正グラウンデットセオリーアプローチを用いて分析した.</p><p><b>結果:</b>臓器別専門医選択の理由は「学問としての魅力」「他の医師から頼られる存在」「専門性を得る安心感」があがり,総合診療医の障壁として「将来の不安」「臓器別専門医からの批判」などがあがった.</p><p><b>結論:</b>より理想的な総合診療研修のためには,充実した地域医療研修や専門医制度の確立,総合診療再研修の提案・実践を行うことが必要である.</p>
著者
家 研也 岡田 唯男
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.157-161, 2012 (Released:2012-10-05)
参考文献数
9

要 旨 帯下異常の主因となる感染性の膣炎のうち, 最多の細菌性膣症の有病率は10∼40%1) , カンジダ外陰膣炎の生涯罹患率は75%2) と高頻度であるが, 帯下異常を主訴にプライマリケア医を受診する頻度は少なく3) , 患者・医療者双方に心理的障壁がある. 一方で, 帯下異常の主因を占める感染性の膣炎は診断・治療に関するエビデンスが集積されており, 膣鏡がなくとも膣【扁】平上皮を含む膣分泌物が採取できれば可能なアプローチも存在する. 本稿では疫学データや国内外の診療ガイドラインをレビューし膣鏡や経膣エコーのない施設でも実現可能な「帯下異常」へのアプローチを紹介する. なお妊娠中の治療および, 不正性器出血については紙面の都合上割愛しており, 詳細は成書をご参照頂きたい.