著者
大門 利都子 萩生田 明徳 田中 友章 富井 尚志
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.239-246, 2015-12-12

近年,文化財の保存および価値の共有のために,多数のデジタルアーカイブの公開が進められている.それらは主に専門家による閲覧が目的とされており,簡易な作りが主流である.そのため,専門知識を持たない一般人には,その価値を理解することが難しい.したがって,広く文化財の価値を共有できるようにするためには,一般人でも文化財の価値を理解することができるようなデジタルアーカイブを構築することが望ましい. そこで我々は,貴重な文化財である小袖屛風を対象として,背景知識を取り入れた一覧型の閲覧シ ステムを構築した.構築したシステムでは,屛風に貼られた小袖を複数の軸を用いて比較し,結果を 2 軸比較表の形式で閲覧することが可能である.また,構築したシステムを用いることにより,デジタ ルアーカイブ上で専門家による展示のストーリーを閲覧することが可能であることを示す.
著者
富井 尚志
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

3DCGデータと、利用者の知識情報を一つのデータベース(DB)に統合化し、時空間情報を共有・検索できる「時空間情報の知識ベース」の構築方法論は、DB研究の中でも注目を集めているテーマである。本研究では、知識情報と3D形状データとを明示的に結びつけるモデル化手法によって実現手法を提案し、高度な空間共有システムの実現性を示してきた。平成16年度は、これまでの研究成果の総括として、本モデル化手法の応用事例の評価と検証を行った。すなわち、「オントロジー存在エンティティー生データ(三次元データ)」の3層構造スキーマモデル化手法を応用した「高度コミュニティ空間」システムを設計し、実装の上、評価を行った。応用事例その1として、「オフィスグループウェア」の設計・実装・評価を行った。具体的には、物を「しまう」など、単なる座標の変更の背後にある「操作の意図」を表現するモデルを導入し、データベースで共有できるような「オフィス仮想環境」の実装と評価を行った。これによって、その背後にある「意味」や「意図」を明示化し、共有・検索できる仮想空間ブラウザを実現した。応用事例その2として、診断支援を目的とした医用画像所見情報の共有を実現する、PET画像データベースの構築手法を提案し、評価を行った。PET画像は、CTやMR画像と本質的に異なり、画像内に生理学的・病理学的情報を含んだ新しい画像データで、読影に際して専門的な知識を要求する。これに対し、本手法によって、単にPET画像(=3次元画像データ)を蓄積するだけでなく、読影時の所見情報(=知識+存在に関するエンティティ)も登録しておくことで、後に診断支援となる検索を行うことのできるPET画像データベース構築手法を提案した。実際にプロトタイプ上でその実現性を示し、効果的な検索が実行できることを示した。
著者
石江 哲也 砂子 一徳 富井 尚志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1-13, 2005-06-15
被引用文献数
12

近年,FDG(2-[fluorin18]fluoro-2-deoxy-D-glucose)を用いたWB-PET(Whole Body-Positron Emission Tomography)画像診断がガンの有効な診断方法として注目されている.その読影は,1.関心領域(Region Of Interest: ROI)を設定し,2. その意味づけを行い,3. 画像所見を記載する,というプロセスによる.すなわち,読影は画像内の領域を意味づけすることである.しかし,PETは身体機能に注目した画像であるため,読影にはPET 固有な知識を要求されるうえ,大量の画像を操作しながらの読影は負担が大きい.一方,今日ではWB-PET が健康診断に適用され,大量に画像が生成されるため,データ活用の観点から適切な情報を統合して検索できるように編成することが有効である.本研究では,WB-PET 診断を,「DB による画像所見の共有」と「検索による画像所見の利用」という観点からの支援を提案している.本稿では,ROI を定性的,定量的に記述するためのPET 固有の知識の抽出,関心領域情報付き画像所見を蓄積・検索するためのPET 情報モデルの導入,およびプロトタイプシステムの実装を行った.さらに,読影支援に有効な検索を実行し,その結果と実行時間についての評価を行った.In recent years, diagnosis by whole-body PET (Positron Emission Tomography) images are considered as an effective method of finding cancer. Interpretation of PET consists of three processes, 1. setting ROI (Region Of Interest), 2. giving its semantics to the ROI, and 3. describing them into finding reports. In this study, we propose the WB-PET database system which supports WB-PET diagnostic imaging from a viewpoint of "management of findings by database" and "practical use of findings by retrieval". In this paper, we extract knowledge peculiar to PET for describing ROI qualitatively and quantitatively, and also we introduce the PET information model for associating finding data and image data. Finally, all data are stored into the PET DB, and can be retrieved from the DB. For the purpose of evaluation, we implemented a prototype system on practical DBMS. By using the prototype, effective queries in diagnostic support are performed and the execution times are examined.