著者
小林 雄一郎 天笠 美咲 鈴木 崇史
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.23-30, 2015-12-12

本研究の目的は,計量文体論の技法を用いて,日本の流行歌の時系列変化を明らかにすることであ る。具体的には,1977 年から 2012 年までに発表された 773 曲の歌詞における 26 種類の語彙指標(品 詞,語種,文字種,語彙レベル)を比較した。その結果,1990 年頃を境に,語種と文字種の頻度が大 きく変化していることが分かった。特に,外来語とカタカナの頻度が著しく減少し,漢語と漢字の頻 度が増加した。本研究は,計量文献学に新たな知見をもたらし,日本の現代文化を対象とする社会学 研究に客観的な資料を与えるものである。
著者
佐々木 充文
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.65-70, 2015-12-12

フィールド言語学では, ときに, 話者数・研究者数ともに少なく, 電子的に利用可能な辞書や言語 処理パッケージはおろか, 表記法すら存在しないような言語を記録・保存・分析する必要が生じ る. 本稿では, こうした少数言語のうち, 語形変化が比較的複雑な言語のドキュメンテーション を, わずかな労力で自動化する手段として, (i) 多層式の活用形総生成型辞書, (ii) 対話型の半自動 スクリプトの利用を検討し, その利用例として, メキシコの複統合的な先住民語であるナワトル 語 (Nahuatl) の未記述の一方言におけるグロス生成の例を報告する.
著者
石井 雄隆 近藤 悠介
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.71-76, 2015-12-12

本研究では,文書分類の手法と一般化線形モデルを用いて英語ライティングにおける文法的誤りの影響について調査した.日本人英語学習者のスピーキングやライティングのパフォーマンスを自動採点する試みが近年注目を集めているが,どの特徴量がどれほど評価に寄与しているかについては,まだ十分に明らかにされていない.本研究では,パフォーマンスを測る一つの指標である文法的正確さに焦点を当てて,その影響を調査した.その結果,エッセイ評価に影響を与えている文法的誤りは,動詞の語彙に関するエラーと語順に関するエラーの二種類の文法的誤りであった.英語学習者のライティング評価においては,動詞に関する誤りは,他の文法的誤りに比べて,エッセイの全体的評価に大きな影響を与えていることを示唆する結果となった.
著者
堤 智昭 小木曽 智信
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.179-184, 2015-12-12

近代文語 UniDic や中古和文 UniDic の登場により,近代以前の歴史的な日本語資料に対しても形態 素解析が可能となった.しかし,近代以前の現存する日本語資料は時代幅があり,ジャンルも多岐に わたる.そのため,資料ごとに文法・単語が適した辞書を用いて形態素解析を行う必要がある.日本 語研究者が形態素解析技術を用いた研究に取り掛かるには,煩雑な形態素解析実行環境の用意と辞書 を切り替えた解析作業が必要となり,その難易度が研究推進の妨げとなっている.そこで本研究では, 形態素解析を用いた言語研究の支援を目的とし,煩雑な計算機における形態素解析実行環境の用意を 必要とせず,容易に複数の辞書を切り替えて形態素解析が可能な形態素解析サポートソフトウェア, Web 茶まめの開発を行った.
著者
上阪 彩香
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.15-22, 2015-12-12

本研究では,江戸時代前期の俳諧師・浮世草子作者である井原西鶴(1642?~1693)の作品の文章 の特徴について,数量的な観点から検討を行った.西鶴作品は我が国の文学史における重要性から, 多くの国文学者によって思想や記述内容の検討,成立に関する歴史的考証が続けられてきたが,西鶴 作品の中でも浮世草子には,著者や成立年代等について今なお疑問が出され,解明すべき問題が残さ れている.西鶴は浮世草子のほかにも作品を残しており,役者評判記『難波の貌は伊勢の白粉』,浄 瑠璃『暦』『凱陣八島』,地誌『一目玉鉾』の 4 作品は西鶴著である.これらの作品は浮世草子と同 じ散文で書かれていることから,浮世草子に提出されている著者問題を検討する際に有効な情報とな る可能性がある.本研究では,浮世草子,役者評判記,浄瑠璃,地誌とジャンルの異なる作品におい ても,著者が西鶴とされている作品であれば,同一の文章の特徴を示すのかを主成分分析を用いて検 討した.
著者
曽我 麻佐子 冨増 康宏 藤田 憲孝
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.51-56, 2015-12-12

国内の寺院には歴史ある襖絵が数多くあり,博物館でこれら全てを展示することは困難である.本 研究では,寺院を対象とした博物館展示を支援するため,襖配置の CG 再現および体験型システムの 開発を行った.博物館の実物展示と併せて展示する体験型システムとして,VR ゴーグルおよび襖配置 システムを開発した.VR ゴーグルは CG で再現された部屋の全周囲を見渡すことができ,襖配置シス テムはタッチ操作で襖を移動させることにより様々な配置でのシミュレーションが可能である.さら に,CG を用いて過去の襖配置を再現した 4K 映像を制作した.制作した映像は,龍谷ミュージアムの 特別展「聖護院門跡の名宝」において上映し,開発した二つのシステムは特別展の関連イベントとして 3 日間展示した.
著者
安田 つくし 三原 鉄也 永森 光晴 杉本 重雄
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.255-262, 2015-12-12

マンガやアニメーションを題材とした創作やその交流に端を発する同人活動が急
著者
Tomohiro MORIOKA
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.1-8, 2015-12-12

CHISE 文字オントロジーで採用している多粒度漢字構造モデルは現在使われている漢字を整理する上 では一定の成果をおさめているが、前近代の多彩な漢字字形を対象にした場合にどうなるかについては明 らかでなかった。また、各包摂粒度の包摂範囲を合理的に規定するためには字体・字形用例の存在が重要 であり、CHISE 文字オントロジーにグリフデータベースやグリフコーパスを統合することが望ましい。そ こで、本研究では漢字を対象とした代表的グリフデータベースの一つである「漢字字体規範データベース」 (Hanzi Normative Glyphs; HNG) の CHISE 文字オントロジーとの統合を試みた。ここでは、その概要に ついて述べる。
著者
大門 利都子 萩生田 明徳 田中 友章 富井 尚志
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.239-246, 2015-12-12

近年,文化財の保存および価値の共有のために,多数のデジタルアーカイブの公開が進められている.それらは主に専門家による閲覧が目的とされており,簡易な作りが主流である.そのため,専門知識を持たない一般人には,その価値を理解することが難しい.したがって,広く文化財の価値を共有できるようにするためには,一般人でも文化財の価値を理解することができるようなデジタルアーカイブを構築することが望ましい. そこで我々は,貴重な文化財である小袖屛風を対象として,背景知識を取り入れた一覧型の閲覧シ ステムを構築した.構築したシステムでは,屛風に貼られた小袖を複数の軸を用いて比較し,結果を 2 軸比較表の形式で閲覧することが可能である.また,構築したシステムを用いることにより,デジタ ルアーカイブ上で専門家による展示のストーリーを閲覧することが可能であることを示す.
著者
間淵 洋子 小木曽 智信
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.125-130, 2015-12-12

国立国語研究所では現在,形態論情報を付与した『太陽コーパス』を構築している.文語から口語への文体移行期に刊行された総合雑誌『太陽』には,文語と口語という性質の大きく異なる複数の文体が混在する文章が多く含まれるため,文語文用解析辞書と旧仮名遣いの口語文用解析辞書のいずれかを指定して用いる従来の形態素解析手法では,精度を保つことが困難である.そこで,本コーパスの構築にあたっては,テキストが有する文体情報を利用し,複数の辞書を切り替えて,部分ごとに適応する辞書によって解析する手法を試みた.この手法の有用性を確認するため,評価用のデータを作成し,従来手法との解析精度を比較した結果,提案する複数辞書切り替え手法によって,解析精度が向上することを確認できた.
著者
高橋 恵利子 畑佐 由紀子 山元 啓史 前川 眞一 畑佐 一味
雑誌
じんもんこん2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.59-64, 2015-12-12

本研究は日本語学習者の発音の自動評価システムの開発を目的としている.そのための基礎調査と して,中国人日本語学習者の音声データと,それに対する母語話者の一対比較評価データから,課題 文及び評価方法の妥当性について検討した. 評価者の属性に関わらず母語話者の評価はほぼ一致して いたことから,一対比較による評価方法を用いれば,評価者の属性に関わらず,妥当な評価値が得ら れる可能性が指摘できる.今後,さらに評価対象とする音声データを増やして今回の結果を検証する 必要がある.また,一対比較による膨大な評価作業における評価者の負担を軽減するため,一般母語 話者を対象としたクラウドソーシングを採用することの意義と課題について言及する.