- 著者
-
富川 拓海
國吉 杏子
伊藤 史織
佐久川 さつき
石川 輝
齋藤 俊郎
小島 尚
朝倉 宏
池原 強
大城 直雅
- 出版者
- 公益社団法人 日本食品衛生学会
- 雑誌
- 食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.5, pp.190-194, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
-
3
シガテラ魚類食中毒は,シガトキシン類(CTXs)を含有する魚類による動物性自然毒食中毒で,主に熱帯・亜熱帯で発生している.日本では,沖縄県を中心に発生報告があるが,日本本土の太平洋岸産魚類による食中毒事例も散発的に発生し,原因魚種のほとんどがイシガキダイOplegnathus punctatus の老成個体である.イシガキダイにおけるCTXsの含有状況を調査するために,本州,四国,九州,奄美,沖縄,および小笠原の沿岸産176個体(標準体長:13.1~60.0 cm,体重:100~6,350 g,年齢:0~11歳)を収集し,LC-MS/MSによる分析を実施した.そのうち沖縄産2個体(全試料の1.1%)からCTXsが検出され,沖縄産14個体に限定した検出率は14%であった.CTXsが検出された2個体の魚肉中の総CTX含量は,0.014 μg/kgおよび0.040 μg/kgであり,いずれも米国FDAの推奨値0.01 μg CTX1B equivalent/kg以上であったが,ヒトの最小発症量(10 MU, CTX1B換算で70 ng)に達するには,1.5 kg以上の摂食が必要であるため,シガテラ魚類食中毒発症のリスクは高くないと考えられる.沖縄産イシガキダイのCTXs組成はCTX1B系列のみで,バラフエダイやバラハタなどの肉食魚が含有するCTX1Bおよび52-epi-54-deoxyCTX1Bに加えて,渦鞭毛藻が産生するCTX4AおよびCTX4BがCTX1Bと同程度のレベルで検出された.なお,CTX3C系列は検出されなかった.