著者
富永 一登 川合 康三 釜谷 武志 浅見 洋二 和田 英信 緑川 英樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

『文選』の伝承から見た文学言語の型の形成と継承を追究するための基礎作業として、まず『文選』詩編(12巻分)の訳注作業を完成した。原稿作成は25年度内に完了したので、近々にこれを出版社から刊行し、広く社会に公表する予定である。また、『文選』所収の主な詩人の経歴や作品についてのコメントをまとめた。これも刊行予定の訳書に付載する。更に近年の『文選』研究の整理や唐代宋代の詩人への『文選』の影響についても、学術雑誌などに掲載し、著書としても刊行した。また、台湾大学の柯慶明・蔡瑜の両教授を招聘して『文選』の文学言語の継承に与えた影響について討論を行い、研究成果の国際的交流を行った。
著者
富永 一登 佐藤 大志 朝倉 孝之 岡本 恵子 増田 知子
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.39, pp.195-200, 2010

古典重視を標榜した新指導要領の具体化において, 単に旧来の指導の踏襲ではない方向性を模索した結果, 近現代の作品を入り口にすることが親しみやすい漢詩・漢文の学習に繋がると提案した一昨年度, その具体的な授業構想に取り組み, 教材化への条件を明らかにした昨年度を承けて, 今年度は実際の授業を行った。王維「九月九日憶山東兄弟」詩は, 年齢が近いことからも理解しやすく見える作品だが, 実際には生徒にとって心情を理解するのは容易ではない。そこで, さだまさし「案山子」を合わせたところ, 一挙に身近な作品となった。また, 岑参「磧中作」詩は, 自身の実体験に基づく辺塞詩であるが, 生徒にとっては非日常の世界である。しかし, 大岡昇平「野火」との出会いで, 戦争はけっして生徒自身と無関係ではないこと, また生身の人間が生きているとはどういうことかを深く考えさせることができた。このように現代と繋がるとき, 漢詩・漢文は漢字を通じて一挙に現代に立ち現れる。他にも渡辺淳一の「孤舟」が広く中国文学に根ざした言葉であったことや, 綾香の歌う「三日月」と杜甫「月夜」との比較等, 近現代の作品を入り口にした授業のさらなる可能性を見ることができた。
著者
富永 一登
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、『太平広記』『古小説鉤沈』の字句の校勘と厳密な読解を行いながら、約7000話の中国古小説の話題事項を抽出し、それを分類整理した。これによって、中国古小説の類話を検索するための利便性が高まり、中国古小説研究のみならず、日本あるいはアジアの諸地域、広くは世界の説話との比較研究を行う上で、関連ある話題事項を提供することが可能になった。また、古小説の訳注作業を着実に進展させるという成果も得られた。