著者
富永 一登 佐藤 大志 朝倉 孝之 岡本 恵子 増田 知子
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.39, pp.195-200, 2010

古典重視を標榜した新指導要領の具体化において, 単に旧来の指導の踏襲ではない方向性を模索した結果, 近現代の作品を入り口にすることが親しみやすい漢詩・漢文の学習に繋がると提案した一昨年度, その具体的な授業構想に取り組み, 教材化への条件を明らかにした昨年度を承けて, 今年度は実際の授業を行った。王維「九月九日憶山東兄弟」詩は, 年齢が近いことからも理解しやすく見える作品だが, 実際には生徒にとって心情を理解するのは容易ではない。そこで, さだまさし「案山子」を合わせたところ, 一挙に身近な作品となった。また, 岑参「磧中作」詩は, 自身の実体験に基づく辺塞詩であるが, 生徒にとっては非日常の世界である。しかし, 大岡昇平「野火」との出会いで, 戦争はけっして生徒自身と無関係ではないこと, また生身の人間が生きているとはどういうことかを深く考えさせることができた。このように現代と繋がるとき, 漢詩・漢文は漢字を通じて一挙に現代に立ち現れる。他にも渡辺淳一の「孤舟」が広く中国文学に根ざした言葉であったことや, 綾香の歌う「三日月」と杜甫「月夜」との比較等, 近現代の作品を入り口にした授業のさらなる可能性を見ることができた。
著者
吉田 裕久 山元 隆春 朝倉 孝之 岡本 惠子 黒瀬 直美 新治 功 西原 利典 増田 知子 三根 直美 宮本 浩治
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.38, pp.111-117, 2009

本研究は高等学校の国語基本教材「羅生門」において, どのような読みの学力を育成することができるか, それを授業を通して明らかにすることを目的としている。方法として以下の3点を設定した。①初読における生徒の読解力の状況を調査する。②学習後, 生徒の読みがどう変化したか, 検討する。③どのような授業アプローチにより, 読解力が身につけられたのか, さらに基本教材においてどんな学力を身につけていくことが可能なのか検討する。そして授業実践として, 方法・形態の異なる3つの授業を設定した。1は, 「境界の物語として読む」ことを明示した上で, プレテクスト『今昔物語集』とテクスト「羅生門」の位置づけから, コードや象徴を読み解く方法である。2は, 「認識主体の育成をめざした」授業で, 「何が問題なのか」を発見する授業である。3は, グループ学習で, 「下人の行方を考える」学習課題を設定し, テクストから検証する方法である。これらの実践は, 「要点駆動の読み」を生み出すことをめざしたものともいえる。常に叙述を吟味しながら, 小説を読むことを探求していきたい。