著者
田中 保平 藤原 慈明 渡邊 伸貴 山黒 友丘 富永 経一郎 新庄 貴文 太田 真 伊澤 祥光 米川 力 間藤 卓
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.58-61, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
7

75歳,男性。ハチ酒造りを趣味とし,これまで多数回のハチ刺傷歴があるが症状を呈したことはなかった。某日スズメバチに両肩を2カ所刺傷された後,意識消失した。血圧低下・頻呼吸・全身の膨疹を認め,アナフィラキシーショックとしてアドレナリンを筋注され当院に搬送となった。病着したとき,呼吸・循環動態は安定していたため,経過観察を目的に入院し翌日に退院した。ハチ刺傷によりアナフィラキシーショックをきたすことはよく知られ,通常は2度目以降の刺傷により発症率が増加すると思われる。一方で複数回の刺傷において無症状であればその危険性は低下していると考えられやすい。しかし本症例は多数回の刺傷歴があるものの無症状で経過し,今回に限りアナフィラキシーを発症した。残念ながらその機序を説明する所見を得ることはできなかったが,このような症例が存在することの重要性に鑑みここに報告する。
著者
米川 力 新庄 貴文 富永 経一郎 伊澤 祥光 阿野 正樹 山下 圭輔 鈴川 正之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.826-830, 2013-12-31 (Released:2014-01-15)
参考文献数
4

目的:近年病院前救護活動や災害時における情報伝達手段として様々な無線機器が存在する。各機器にはそれぞれ特徴があり,導入費用にも差が見られる。我々は近年普及が進んできたIP 無線を始めに各種無線機器を試用し,その特徴を生かした情報伝達手段構築について考察した。方法:当院のドクターカー活動に各種無線機を試用し,通信距離を比較した。さらに医療従事者が使用可能な無線機を調査しその特徴について比較検討した。結果:IP 無線はこれまで災害に強いと言われているMCA 無線と比較して遜色のない通信性能であった。また業務用無線やMCA 無線では通信距離を長くするために設備拡張などの追加費用が必要で資格や免許申請などの手続きも必要であった。考察:無線による情報伝達手段を考える際,活動範囲を考えた上で機器を検討する必要がある。比較的小規模な活動から災害時における広範囲での活動を考えた場合,IP 無線は有効なツールになり得る。
著者
田中 保平 伊澤 祥光 渡邊 伸貴 山黒 友丘 富永 経一郎 新庄 貴文 太田 真 米川 力 間藤 卓 青木 裕一 笹沼 英紀
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.314-317, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

症例は40歳代男性。仕事中に弾き飛ばされた3kgのアルミ塊が胸腹部に当たり受傷した。造影CTで肝内側区域に著明な血管外漏出像を伴う日本外傷学会分類IIIbの肝損傷を認めた。経カテーテル動脈塞栓術で肝動脈の一部を塞栓して止血が得られたため, 非手術治療 (以下NOM) を選択した。しかし入院6日目に胆汁性腹膜炎を併発し, 開腹ドレナージとENBD留置を行い, いったん全身状態は改善した。その後, 腹痛と発熱が再燃し, CTで肝壊死と肝膿瘍を認めたため経皮的ドレナージを施行したが, ドレナージ後も胆汁漏は持続したため肝左葉切除術を施行し, 最終的に良好な経過を得た。 肝損傷に対するNOMの成功率は高いが, NOM中に合併症のため手術が必要になる症例も存在する。特に重症度が高い損傷は合併症の頻度が高く, 手術が必要となる可能性も高いため, 厳重な経過観察と機を逃さぬ対応が必要なことを改めて認識した。