著者
富田 勉 菊池 賢
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.670-677, 2018-09-20 (Released:2019-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

感染症の予防,流行の拡大防止に手洗いやうがいの慣行が推奨され,一般家庭用に多くの消毒剤入りの手洗い剤,うがい剤が発売されているが,これらの製品の病原体に対する殺菌不活化作用の検証はあまりなされていない.本研究ではこれらの製品の病原体に対する殺菌不活化作用を比較検討した.試験に用いた病原細菌はMRSA,O157,ウイルスはインフルエンザA,ノロウイルス代替のネコカリシウイルスで,各種製品の試験液と病原体液を手洗い剤については5:5 で,またうがい剤については9:1 で混和して15 秒間反応させ,反応の前後で生菌数またはウイルス感染力価の減少を希釈平板法,プラーク法で測定した.ポビドンヨードまたは酸性エタノールを成分とする製品が,どの細菌,ウイルスに対しても4 Log10 を超える高い減少値を示した.一方で次亜塩素酸系製品,通常の消毒用エタノール製品はネコカリシウイルスに対し,試験液と病原体の5:5 混合の場合,ほとんど効果がみられなかった.一方,混合比率を9:1 とし,共存する培地成分を排除したところ,強い殺菌不活化作用が確認でき,試験方法により,結果が大きく異なることがわかった.実際の使用状況を反映した条件下で確実な殺菌不活化作用を有する製剤は,感染症予防に有用であると考えられた.