- 著者
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富田 賢吾
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
1. 磁気流体計算コードAthena++の高速化を目的として、並列プログラミング言語Unified Parallel CとXcalableMPによる並列化の難易度や性能を従来のMPIに基づく並列化と比較した。どちら言語でも適切に記述すればMPIと同等程度の通信性能が得られるが、解適合細分化格子のような複雑な通信パターンが必要な場合には結局MPIと同レベルに通信を意識する必要があること、平易な記述が可能な一方通信の柔軟性には制約があることが分かった。どちらの言語でも現時点で最も高性能な実装はコードをMPIまたは通信ライブラリを含むC言語のコードに変換するトランスレータ形式のものであった。生成されるC言語の中間コードを解析した結果、自身で同等以上の並列化を実装することは可能であり、現時点ではAthena++コードを並列プログラミング言語に移行するメリットは十分ではないと判断した。一方、これらの言語内で利用されているRDMAによる通信は高速化に有望であり、今後の開発に取り入れることを検討する。2. Athena++コードのためにFull-Multigrid法に基づく一様格子上の自己重力ソルバを開発し性能評価を行った。その結果数千並列以上でも磁気流体部よりも数倍程度高速であり、大規模な自己重力流体計算が可能な高い性能と良好なスケーラビリティを達成した。今後これを解適合細分化格子に拡張する。3. 超大規模並列計算を行うためXeon Phiを搭載した大型計算機に向けたAthena++の最適化と性能評価を行った。Xeon Phiは通常のCPUと良く似た最適化が適用可能であり、最小限の調整で高い実行性能が得られた。最先端共同HPC基盤施設のスーパーコンピュータOakforest-PACSを用い、2048ノード・524288スレッドの大規模並列計算でも83%以上という高い並列性能を実現した。