著者
古城門 靖子 赤沢 雪路 曽根原 純子 武井 麻子 寳田 穂
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.19-28, 2016-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

看護師は日常的な感情労働の代償として共感疲労に陥る危険性が高く,職場における自らの感情面での健康状態に気づき,対処する必要がある.そのためには,感情知性(emotional intelligence: EI)と呼ばれる能力が重要であると言われている.そこで本研究では,病棟チームの柱となって働いている中堅看護師を対象として言語による交流を中心としたグループを毎月1回,計10回行い,そこで語ることが中堅看護師のEI育成に有用であることを実証的に明らかにすることにした.研究参加者は総合病院に勤務する実務経験4年以上の中堅看護師7名である.結果として,参加者たちは仕事にまつわる不安や管理者への期待と不満を徐々に語りだし,それが過去の体験とつながりがあることに気づいた.こうして彼らは,グループの中で新たな他者への信頼と自信を取り戻していった.
著者
出口 禎子 武井 麻子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.50-60, 2005-06-30 (Released:2016-11-16)

最近、日本でも自然災害や犯罪などの社会問題と共に心的外傷体験が注目されるようになって来た。日本では、太平洋戦争時に疎開を経験した人は58万人以上いるといわれているが、彼らの体験の実態やその体験がその後の生活にどのような影響を与えたかはあまり明らかにされていない。そこで私達は、7人の集団疎開の体験者に、当時の生活状況やその後の人生について聞き取り調査を行った。その結果、集団疎開は合法的な監禁状態にあったことや日常的に食物の盗みが行われ、一緒に暮らしている仲間同士で疑うという安全保障感の失われた環境になっていたことがわかった。また飢餓や寂しさは誰にも共通のものであったが、主に低学年の3年生がいじめの対象になっていたこと、直接いじめに加担していなくてもいじめを目撃したことが罪悪感となって心の傷となっている人もいることがわかった。また一方では、新しい価値を見出し、集団疎開の経験を生かして社会活動に参加しているひともおり、生活レベルでその記憶は今も息づいていることが明らかになった。
著者
武井 麻子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.7-13, 2002
被引用文献数
1

本稿は、2002年5月に日本赤十字看護大学にて開催された第28回保健医療社会学会での講演をもとにしている。看護師のバーンアウトの問題から感情労働としての看護という視点への転換の歴史、さらには感情労働という言葉への社会学者と看護師たちの反応の違いから、現在の医療の現場が直面する深刻な問題状況を論じた。
著者
武井 麻子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.7-13, 2002-12-25 (Released:2016-11-16)
被引用文献数
1

本稿は、2002年5月に日本赤十字看護大学にて開催された第28回保健医療社会学会での講演をもとにしている。看護師のバーンアウトの問題から感情労働としての看護という視点への転換の歴史、さらには感情労働という言葉への社会学者と看護師たちの反応の違いから、現在の医療の現場が直面する深刻な問題状況を論じた。
著者
寳田 穂 武井 麻子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.32-41, 2005 (Released:2017-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3

背景:各国で薬物乱用・依存に関する問題は深刻であるが、日本も例外ではない。しかし日本において、薬物依存症者への看護の意義や限界は明らかになっていない。目的:薬物依存症で精神科病院へ1回の入院を体験した人の語りを通して、入院体験の様相を描き出し、入院中の看護の意義・限界を明らかにする。方法:半構造化インタビューによる帰納的研究。5名の語りを再構成し分析した。結果及び考察:入院前、対象者は恐怖と孤立無援感の中で切羽詰まった状況にあった。入院によって、精神症状や身体状態は改善したが、処方薬や他の患者・スタッフとの関係で苦痛を体験していた。しかし、怒りや苦痛を最初から表現しなかったり、「仕方ない」と諦めた対象者が多く、孤立無援感は癒されていなかった。薬物依存症での初めての入院においては、「安全感」の回復と、「人間的つながり」の提供が必要であろう。
著者
武井 麻子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.28-34, 1992-06-15
被引用文献数
1

精神科治療においては最近さかんに議論されるようになってきたインフォムード・コンセントを徹底させることが困難な事例かおる。ある激しい拒絶的な患者を受け持った看護学生がスタッフの患者への対応を批判したことから、スタッフは看護方針の見直しを図ることになった。次に受け持った看護学生は同じ患者と良い関係を持つことができたが、患者が「どうしてもっと強くやってくれないのか。無理やりやられるのが好き」と語ったことから、一方的に見える患者-看護婦関係の患者側の問題が明らかになった。批判した学生も患者から拒絶され、患者の隠されたニードに気がつかなかったほどショックを受けていたのである。実習の場で学生が現場のやり方を告発することは、臨床の質を高める契機にもなるが、スタッフ側の問題だけでなく、患者の病理、学生の問題を指導者は掴んでおく必要がある。
著者
寳田 穂 武井 麻子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.32-41, 2005-05
被引用文献数
3

背景:各国で薬物乱用・依存に関する問題は深刻であるが、日本も例外ではない。しかし日本において、薬物依存症者への看護の意義や限界は明らかになっていない。目的:薬物依存症で精神科病院へ1回の入院を体験した人の語りを通して、入院体験の様相を描き出し、入院中の看護の意義・限界を明らかにする。方法:半構造化インタビューによる帰納的研究。5名の語りを再構成し分析した。結果及び考察:入院前、対象者は恐怖と孤立無援感の中で切羽詰まった状況にあった。入院によって、精神症状や身体状態は改善したが、処方薬や他の患者・スタッフとの関係で苦痛を体験していた。しかし、怒りや苦痛を最初から表現しなかったり、「仕方ない」と諦めた対象者が多く、孤立無援感は癒されていなかった。薬物依存症での初めての入院においては、「安全感」の回復と、「人間的つながり」の提供が必要であろう。
著者
出口 禎子 武井 麻子
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本では太平洋戦争時に58万人が学童疎開を経験した。本研究では、疎開生活の実態と疎開が人生に与えた影響について当事者にインタビューした。その結果、親から切り離された孤立無援感、飢餓、いじめなど共通の外傷体験がある一方、疎開地で友人の死を目撃し今も罪悪感に苦しんでいる人、東京大空襲で家族を亡くした人など、戦争による心的外傷は複合的に重なり、現在の生活に影響を残している事例があることが明らかになった。