著者
前川 進 寺分 元一 中村 直彦
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.251-259, 1980
被引用文献数
3 9

開花後濃色化する変色型バラ品種′絵日傘′(F1.)の花色素生成に及ぼす光の影響を調べるために, 鉢植え個体の花蕾及び単離花弁への種々の光処理を行った.<br>20°C下での単離花弁の培養において, 10~20%しょ糖培地で多くのアントシアニンの生成が得られ, 置床後3日間はその生成量も多かった.<br>暗黒及び可視光のみの照射のもとでアントシアニンは生成されず, 330nmより短いUVを含む光の照射によってはじめて生成が認められた.<br>UVの強さや照射時間が増すにつれて, 色素量は増加するが, 強いUVを短時間照射するよりも弱くても長時間与えた方が同じエネルギー量で効果が大きかった.<br>一方, 可視光はUV照射の前かあるいは同時に照射された場合, アントシアニンの生成に促進的に働き, UVのみの照射と比べて著しく色素含量を増加した. 更に, その可視光の強さが増すとともにアントシアニンも比例して多く生成された.<br>可視光とUVを交互に照射したとき, その周期が短いほど生成されるアントシアニン量は多かった.<br>栽培中のバラに対して, UVを夜間より日中に照射した場合, より多くのアントシアニンが生成された.
著者
稲垣 昇 津田 和久 前川 進 寺分 元一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.369-376, 1989 (Released:2007-07-05)
参考文献数
14
被引用文献数
4 11

暖地におけるアスパラガスの生理•生態的特性を明らかにし合理的な栽培体系を確立することを目的に, 本報では物質生産の基礎となる光合成特性について検討した.(1) アスパラガスの主たる光合成器官は葉状茎であったが, 側枝や主茎でも光合成が行われており, 特に0.5~1mmほどの太さの側枝では単位乾物重当りで見ると葉状茎の光合成速度の30%近い値を示した.(2) 光合成速度に及ぼす光強度の影響を見ると, 光飽和点は生育前期及び中期の株で40~50klx付近, 生育後期の株では10~20klxであった. また, 光補償点は1.5~2klx付近であった.(3) CO2濃度の影響を見ると, CO2濃度を上げながら (400→1,400ppm) 測定した場合は600~1,000ppm付近にCO2飽和点があることが観察されたが, CO2濃度を下げながら (1,400→400) 測定した場合は1,400ppmでも飽和しなかった. また, 後者はそれぞれの測定濃度での光合成速度において前者を下回っていた.(4) 光合成に好適な温度範囲は20±5°Cであることが推察され, アスパラガスが冷涼な地域に適した作物であることを示していた.(5) 光, CO2及び温度に対する各生育期間 (生育初期, 中期及び後期) の株の反応特性はほぼ共通していた.(6) 光合成の日内変動はポットの状態で測定した場合顕著に見られ午後に光合成速度が低下する傾向を示した. 一方根から切り離した状態で測定した場合はほとんど違いはみられなかった.
著者
寺分 元一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.245-250, 1970

材料には短日下で育苗した貝塚早生の3~5葉の苗を使用して実験を行なつた。<br>1. タマネギ苗の底盤下部より生長点を摘除し, 短日下で川砂中で培養し, 20日以上経過すると, 葉しよう基部は肥厚したが, これは葉しよう柔細胞の大きさが増したためで, 糖の蓄積の結果ではなかつた。<br>2. 底盤部より切り離された各葉は川砂中に葉ざしし, 短日下で20日培養すると, 葉しよう基部は著しく肥厚したが, 若い葉での肥厚は劣つていた。このような肥厚は葉しよう柔細胞の容積が増加したためで, 糖の蓄積は認められなかつた。<br>また暗黒下での葉ざし, または葉身を2/3切除して葉ざしを行なつた場合, 葉しようは肥厚しなかつた。<br>3. 生長点摘除と日長処理とを組み合した場合, 長日では短日の場合よりさらに肥厚が著しかつた。<br>また長日, 短日両条件下で葉身の伸長は生長点摘除によつてほとんど行なわれなかつた。
著者
前川 進 稲垣 昇 寺分 元一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.174-179, 1983
被引用文献数
1 3

キキョウ花色に及ぼすMoの影響を明らかにするため, キキョウ品種'サミダレ'を用いて, モリブデン酸ナトリウム溶液の切花浸漬処理や花弁への散布処理を行った.<br>Mo溶液に切花の切り口を浸漬処理することによって, 青紫色から真青色へと花弁の青色化が起こった.Moの花弁に対する散布処理によっても, 切花の浸漬処理同様の著しい青色効果が見られた.<br>Mo浸漬処理後の生花弁の吸収スペクトルは処理前のものに比べて, 吸収極大波長は長波長側へ移行し, さらに, その吸光度も増大した. このような吸収スペクトルの変化は抽出したアントシアニン溶液にMoを添加する <i>in vitro</i> での実験においても認められた. Mo処理によって青色化したアントシアニン溶液へEDTAを加えるとMoに基づく青色効果は減少した.<br>このようなことから, Moの吸収によるキキョウ花弁の青色化はおそらくアントシアニンの金属錯体の形成によるものと推論された.