著者
Amih SAGAN 長嶋 雲兵 寺前 裕之 長岡 伸一
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.75-77, 2011 (Released:2011-09-05)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

初心者向けの量子化学の教科書には異核2原子分子の例としてLiHが取り上げられ,その分子軌道エネルギー準位図が示されている.その図ではLiHの2σ軌道のエネルギーがH原子の1s軌道よりも低い軌道エネルギーを持つことが示されているが,非経験的ハートリーフォック法を用いるとそれが再現できない.本ノートでは非経験的ハートリーフォック法で描かれるLiHの軌道エネルギー準位図を示す.用いた基底関数は6-311++G**である.非経験的ハートリーフォック計算から得られる図では,2σ軌道の軌道エネルギー(-8.18749 eV)はLiの2s (-5.3392 eV)より低く,安定化しているが,Hの1s (-13.60 eV)より高く,不安定化している.2σ軌道はおもにHの1s軌道で構成されており,Hの形式電荷は約-0.4であり,H周辺にLiの2s電子が過剰にあるため,Hの1s軌道から見ると相対的に電子間反発で不安定化する.
著者
Amih SAGAN 長岡 伸一 寺前 裕之 長嶋 雲兵
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
pp.2011-0022, (Released:2012-06-06)
参考文献数
18

窒素分子N2は3重結合を持つ等核2原子分子として多くの教科書に紹介されているが,その電子状態に関する記述は最高占有軌道を σ 型とするものと π 型とするものがあり,まだ定まっていない.本論文では核間距離に関する分子軌道エネルギーの変化を示し,平衡核間距離付近の窒素分子N2最高占有軌道が π 型であることを示す.用いた計算方法はRHF/6-311G**である.平衡核間距離(1.0703 Å )近傍の最高占有軌道は π 型であるが,核間距離が1.045 Å より短くなると σ 型となる.
著者
田代 浩二 海野 美奈子 永瀬 茂 寺前 裕之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1404-1408, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

Allingerの分子力場計算(MM2)のための飽和ケイ素化合物の力場定数を,分子軌道法を用いて決定した。決定した力場定数を用いて計算した構造と生成熱は実験値およびab initio計算値と非常によい一致を与えることを示した。ケイ素化合物の構造と安定性を明らかにするために,環状化合物としてヘキサシラシクロヘキサン(Si6H12)とその誘導体を,鎖状化合物としてボリシランSinH2n+2(n=1~30)を取り上げ,類似の炭素化合物と比較した。ケイ素化合物の立体配座異性体間のエネルギー差は炭素化合物の場合よりもきわめて小さいことを見いだした。とくに興味深い結果は,直鎖パラフィン(CnH2n+2)では炭素鎖がまっすぐに紳びた直鎖構造をとるのに対して,ポリシランではn=7以上になるとケイ素鎖がらせん構造をとることである。
著者
小久保 達信 長岡 伸一 寺前 裕之 長嶋 雲兵
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.169-175, 2019 (Released:2020-01-28)
参考文献数
9

分子動力学プログラムLAMMPSは,分散並列処理により高い効率で実装されており,スーパーコンピュータ「京」でも,大規模なノードを使ってもよくスケールし,高性能を発揮している.LAMMPSの さらなる高速化を目指し,Mod -FixLan機能で利用されている乱数ルーチンのSingle Instruction Multi Data (SIMD/ベクトル) 化及びOpenMPでのスレッド並列化によるさらなる高速化の実現を試みた.乱数生成は逐次処理のアルゴリズムが基本でありSIMD化及びOpenMPによる並列化の難しい部分の高速化を新たに実装した.特に乱数ルーチンの実装の改良によって,全体で46%程度の性能向上が観測された.まだまだ,LAMMPSには高速化の余地がある.
著者
寺前 裕之 須田 岬 湯川 満 島野 洋佑 高山 淳 坂本 武士
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.56-57, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
1

近年、生物活性を有する2-アザスピロ環化合物が報告されているが、効率的な合成法は少ない。我々は、先行実験により化合物の超原子価ヨウ素試薬による環化反応をおこなうことで2―アザスピロ環化合物が得られることを見出した。しかし、この反応ではアリル基側鎖の置換基効果が顕著に見られることから、反応中間体であるフェノオキセニウムカチオンの高次元アルゴリズムによる安定構造計算からその反応機構を検討した。
著者
長岡 伸一 寺前 裕之 長嶋 雲兵
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.177-182, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

大学での教育においてMicrosoft Excelを用いた水素様原子の軌道の動径関数と動径分布関数及び水素分子イオン(H2+) の分子軌道や炭素の混成軌道の三次元等高線図を描画する実習を行った. 得られた等高線図の一部は多くの量子化学の教科書の図と矛盾しており, 従来の教科書の説明は誤解を招きやすいことがわかった.