著者
寺田 治史
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.273-283, 2011 (Released:2017-05-10)

幸福度世界一のデンマ-クと同90位の日本(2006年.英レスタ-大学ホワイト教授調べ)。この違いはどこから来るのか。5度に亘るデンマ-ク訪問の結果、その底流に両国における教育の歴史に違いを見出す事が出来る。知と情と意を統合した"対話中心の教育"(筆者はこれを人間教育と称する)を貫くデンマ-クに対して日本の教育は、知育に偏しているように思われる。デンマ-クにおける調査、聞き取り、視察を通して考察した内容を提示し、わが国における今後の議論の糧となれば幸いである。
著者
寺田 治史
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.203-214, 2015-03

前著論文(II)では,「グルントヴィの事を誰よりも深く理解している方は池田先生です」と語るヘニングセンの言葉を紹介した。だが,何故にそこまで言い切れるのかについての疑問が残っていた。筆者自身5度目となる今回のアスコ-訪問では,故人となられたヘニングセンの後継者である南デンマーク大学准教授のイ-ベン・バレンティン・イエンセン女史に,これについての質問を行った。1)イエンセン女史の答えは,「グルントヴィは,言葉や理論よりも実践を大事にする人でした。池田先生は,グルントヴィの考えと同じことを現在において実践しておられ,その姿を見てヘニングセン先生はそのように評価されたと思う」と。2)「実践の人」との言葉を聞いた時,筆者の頭の中をよぎった言葉がある。それは,「道理証文よりも現証にはすぎず」という日蓮の言葉であった。3)この意味するところは,理論よりも実践,言葉よりも行動を重視して,現実の上に実証を示すことが大事であるという教えである。ヘニングセンから見て,グルントヴィも池田も人間教育の有言実行の人であることをイエンセン女史も認めていることになる。2013年8月23日,アスコ-校で開催された「アスコ-池田教育セミナ-」においても,ヘニングセンは,「最も優れた学力教育でも足りないものがある。平和,自由,民主主義こそが啓発を促す。池田氏が語る『教育』にも,この意味は全て備わっている。今日の世界的指導者として唯一そのことを世に紹介し続けている。勇気ある者であり,牧口の道を継ぐ者である」と語り,これが氏の生前最後の講演となった。4)グルントヴィ研究の第一人者と言われたヘニングセンをして,ここまで評価された池田が,そのヘニングセンとの対談において,多数の仏典を紹介しながら,自身の人間教育論に昇華し展開していることに筆者は着目した。何故ならば,内村鑑三をはじめ,グルントヴィとデンマークの教育を日本に紹介した先覚者は数多いが,いずれも仏教指導者ではなかったからである。5)今日,創価大学・学園などやアメリカ創価大学を創立した上に,広く世界に平和を訴えて,「教育のための社会」へのパラダイム転換を提唱し,推進し,行動しているのが池田であり,その意味ではグルントヴィをも凌いでいるのではないかと筆者は考える。本論文では,その池田の哲学的背景とも言える,仏典の引用と彼の人間教育論についての考察に挑戦してみようと考えた。
著者
寺田 治史
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.179-190, 2013

教育の目的は人間の幸福にあると考えたのは,デンマ-クではニコライ・フレデリック・セブリン・グルントヴィ(Nikolaj Frederik Severin Grundtvig 1783-1872)であり,わが国においては牧口常三郎(1871-1944)である。(1)近年,行われている各種の幸福度調査ではいずれの調査でもデンマ-クは常に上位を占め,わが国は下位に位置する。今後,我が国の教育を考える時,彼の国の教育理念を再認識し,大いに学ぶことがあるように思える。副題に掲げた「池田」とは創価大学・学園創立者,池田大作(1928〜)のことである。小説「人間革命」の著者でもあり広く世界の教育者と対談を重ね,2012年度で世界の教育学術機関から315を越える名誉学術称号が贈られている。また「ヘニングセン」とはHans Henningsen(1928〜)のことである。グルントヴィ研究の第一人者として著名であり,デンマ-ク教員育成大学協会理事長(1993〜2003)などを勤めた教育者であり,牧師でもある。1994年にはデンマ-ク王室より「国家ナイト十字勲章」の称号を贈られている。(2)この両者が対談集「明日をつくる"教育の聖業"-デンマ-クと日本 友情の語らい-」(2009 潮出版社)を編んでおり,本稿は,それに因んで,グルントヴィの教育理念が日本の教育に及ぼしてきた歴史を振り返りつつ,牧口の教育理念が池田によって新たな人間教育論へと展開されている背景を探ってみようと考えた。
著者
寺田 治史
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.183-194, 2014

前著論文(1)では,グルントヴィと牧口における人間教育の目的を「子どもの幸せ」にあることに言及した。その上で牧口,戸田を師と仰ぐ池田と,グルントヴィ,コルを師と慕うヘニングセンとの対談の内容を「対話」,「師弟論」,「生涯学習」の三つの視点から考察することを提案した。1)本稿では,対談集全体を上の三つの視点から考察するとともに,池田・ヘニングセン両者が持つ教育論および構想が深い理念部分で共鳴しており,且つ実践的に遂行されつつある様を紹介する。なお,筆者は2013年8月20日から10日間に渡って,14名の希望者を引率して6度目のデンマ-ク研修を行い,その途中,本論文を書くに当たって,ヘニングセン氏との語らいの場を持った。また,11月にはデンマ-クからの旅行者23歳の青年, E君のショ-トステイを我が家で受け入れ,デンマ-クに於ける若者文化について語り合った。さらに12月にはデンマ-クの女性シンガ-ソングライタ-,アンナケイを案内して広島市を訪れ,原爆慰霊碑に献花すると共に,市長をはじめ平和センタ-理事長らとの会談の場に同席した。筆者のこれら一連の行動も,池田・ヘニングセン対談に触発されたものである。両者における人間教育の思想理念が心ある人々の間で共有され始め,両国民の人間交流という形で友情,平和,連帯という方向に進み始めていることを実感している。本論文(2)では,両者の人間教育を志向する教育論が,子どもの幸せという教育のミクロから世界の平和,人類の幸福という教育のマクロまでを鳥瞰している様を読み解き,世界における「教育のための社会」実現の必要性についての考察を試みる。
著者
寺田 治史
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.179-190, 2013 (Released:2017-05-10)

教育の目的は人間の幸福にあると考えたのは,デンマ-クではニコライ・フレデリック・セブリン・グルントヴィ(Nikolaj Frederik Severin Grundtvig 1783-1872)であり,わが国においては牧口常三郎(1871-1944)である。(1)近年,行われている各種の幸福度調査ではいずれの調査でもデンマ-クは常に上位を占め,わが国は下位に位置する。今後,我が国の教育を考える時,彼の国の教育理念を再認識し,大いに学ぶことがあるように思える。副題に掲げた「池田」とは創価大学・学園創立者,池田大作(1928〜)のことである。小説「人間革命」の著者でもあり広く世界の教育者と対談を重ね,2012年度で世界の教育学術機関から315を越える名誉学術称号が贈られている。また「ヘニングセン」とはHans Henningsen(1928〜)のことである。グルントヴィ研究の第一人者として著名であり,デンマ-ク教員育成大学協会理事長(1993〜2003)などを勤めた教育者であり,牧師でもある。1994年にはデンマ-ク王室より「国家ナイト十字勲章」の称号を贈られている。(2)この両者が対談集「明日をつくる"教育の聖業"-デンマ-クと日本 友情の語らい-」(2009 潮出版社)を編んでおり,本稿は,それに因んで,グルントヴィの教育理念が日本の教育に及ぼしてきた歴史を振り返りつつ,牧口の教育理念が池田によって新たな人間教育論へと展開されている背景を探ってみようと考えた。