著者
対馬 栄輝
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.9-13, 2001
参考文献数
15
被引用文献数
2

歩行時立脚期に股関節屈曲・伸展が変化する中で,股関節外転筋は骨盤水平位を保持し続けるため,ほぼ一定の筋力を発揮する必要がある。本稿の目的は健常者を対象として股関節屈曲伸展角度を任意に変化させた外転筋力値を測定し,その値は異なるか比較検討することである。対象は健常女性12名(平均年齢20.4 ± 0.5歳)とした。股関節屈曲位0゜,10゜,20゜,40゜(背臥位)と股関節伸展位0゜,10゜(腹臥位)における股関節0゜〜5゜外転位の最大等尺性外転筋力を測定した。これらの角度水準間でTukeyのHSD検定を行った結果,股関節屈曲40゜が他の水準間よりも有意に低い値を示した。股関節屈曲20゜〜伸展10゜の水準間には有意な差は認められなかった。大腿筋膜張筋は股関節屈曲位の外転で働くといわれ,発揮する力は中殿筋の約2分の1といわれる。このことが股関節屈曲40゜外転筋力の小さい原因であったと考えた。また,中殿筋は有効に働かないことも原因として挙げられる。股関節屈曲伸展中間位に近づくにつれ中殿筋の活動が有効に作用し,股関節伸展位では大殿筋(上部線維)の作用も加わるため,一定の筋力を発揮できたと考える。これらの考察の助けとして,今後は筋電図を用いた検討を課題としたい。
著者
対馬 栄輝 尾田 敦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.218-225, 1996-05-31
被引用文献数
13

変形性股関節症患者にみられる跛行の原因の一つとして歩行時股関節外転筋の反応が遅延,すなわち立脚期踵接地時における下肢筋の活動開始時期が遅延していると考えた。本稿の目的は変形性股関節症患者における歩行時下肢筋の活動開始時期を計測して,健常者と比較検討することである。変形性股関節症患者10名と健常者10名を対象として,自由歩行時の中殿筋と大腿直筋のEMG,並びにフットスイッチから信号を記録し,踵接地に対して股関節外転筋と膝伸展筋の活動が開始する時期を測定した。その結果,患者群は各筋における活動開始時期の間に有意な相関関係は認められず,各筋の活動開始時期に変調が起こっていると考えられた。また健常群と比較して各筋活動開始時期は有意に遅延しており,動作の予測制御(pre-activity)の遅延が生じていると考えられた。この結果から運動の協調性の改善を目的とした閉鎖運動連鎖での訓練を頻繁に取り入れていく必要性が予想された。
著者
杉原 敏道 郷 貴大 三島 誠一 田中 基隆 柴田 悦子 高木 麻里子 菊地 栄里 対馬 栄輝
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-16, 2005 (Released:2005-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
14 15 23

精度の高い転倒予測ツールの探求を目的にFunctional Reach Test(以下,FRT)を用いて高齢者の身体能力認識の転倒への関与を検討した。対象は日常生活に支障のない健常高齢者88名とした。各被験者にFRTの予測値を申告させた後,実際の計測を行い,予測値と実測値の差から個々の身体能力認識誤差を求めた。その後3ヶ月にわたり転倒の有無に関する聞き取り調査を実施し,身体能力認識の転倒への関与について検討した。多重ロジスティック分析の結果,3ヶ月以内の転倒に影響を及ぼす因子として,従来のFRT(p<0.05)と身体能力認識誤差(p<0.01)が選択され,2項目投入時の回帰の適合が最良であった。判別特性分析では6.5 cmの身体能力認識誤差を境として良好に転倒の有無を判別可能であった(判別的中率91.7%・感度80.9%)。このことから,身体能力認識は転倒を予測する有益な情報になると考えられた。