著者
荻原 啓文 浅見 正人 加茂 智彦 湯口 聡 旭 竜馬 対馬 栄輝
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11981, (Released:2021-05-08)
参考文献数
30

【目的】YouTube で公開された脳卒中のリハビリテーション関連の動画の質を評価することとした。【方法】2021 年1 月にYouTube を使用して,脳卒中とリハビリテーションのキーワードから動画検索を行った。Journal of the American Medical Association Score(以下,JAMAS)と日本語版DISCERN を用いて,抽出されたYouTube 動画の質を評価した。【結果】JAMAS 合計は2.5 点,引用文献や情報源に関する記載を示すAttribution は平均0.2 点と低かった。DISCERN 合計は32.8 点,治療の情報源,リスク,選択肢に関する項目の平均点は2.0 点未満であった。【結論】YouTube における脳卒中のリハビリテーション関連の動画は全体的に低品質であった。多くの動画が,情報源や治療の選択肢,リスクに関する情報を提供できていないことが明らかになった。
著者
家入 章 対馬 栄輝 加藤 浩 葉 清規 久保 佑介
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.67-74, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
23

〔目的〕変形性股関節症(股OA)に対する徒手療法の効果について再調査することである。〔デザイン〕PRISMA声明を参考に作成したシステマティックレビュー。〔方法〕検索は,2022年3月31日まで実施し,MEDLINE/PubMed,Cochrane Library,Physiotherapy Evidence Database(PEDro)を使用した。対象は,40歳以上の股OA患者とした。〔結果〕4,630編の論文が特定され,適格基準を満たした13編の論文が選択された。本邦からの報告は無かった。12編はPEDroスケールで8点以上と高い研究の質を示した。徒手療法は,一般的治療や徒手療法を含まない治療と比べると股OAの痛み,身体機能,QOLの改善,質調整生存率(QALYs)の増加に有効であるとの報告が多かったが,効果を疑問視する報告も3編みられた。〔結論〕股OAに対する徒手療法の効果は他の治療と比べて明らかに効果があるとはいえない。本邦からの報告は皆無であるため独自の調査も望まれる。
著者
荻原 啓文 浅見 正人 加茂 智彦 湯口 聡 旭 竜馬 対馬 栄輝
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.440-445, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
30

【目的】YouTube で公開された脳卒中のリハビリテーション関連の動画の質を評価することとした。【方法】2021 年1 月にYouTube を使用して,脳卒中とリハビリテーションのキーワードから動画検索を行った。Journal of the American Medical Association Score(以下,JAMAS)と日本語版DISCERN を用いて,抽出されたYouTube 動画の質を評価した。【結果】JAMAS 合計は2.5 点,引用文献や情報源に関する記載を示すAttribution は平均0.2 点と低かった。DISCERN 合計は32.8 点,治療の情報源,リスク,選択肢に関する項目の平均点は2.0 点未満であった。【結論】YouTube における脳卒中のリハビリテーション関連の動画は全体的に低品質であった。多くの動画が,情報源や治療の選択肢,リスクに関する情報を提供できていないことが明らかになった。
著者
吉川 光司 対⾺ 栄輝
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
pp.202104, (Released:2022-07-13)
参考文献数
51

遠隔リハビリテーションとは,スマートフォンやタブレット,パーソナルコンピューターなどの情報機器と情報通信技術(以下,ICT)を⽤いてリハビリテーション従事者と患者が物理的に離れている環境でリハビリテーションを⾏う⽅法である。健康相談や評価,運動処⽅などを,ビデオ会議を介し実施することで遠隔地など医療の提供が困難な地域および通院が困難な患者を対象としているが本邦では社会的認知度が低い。 そこで本邦への情報提供を⽬的として2001 年から2020 年までの遠隔リハビリテーションを介⼊⼿段とした臨床研究を収集しレビューを実施,62 編の論⽂から情報を抽出した。結果,遠隔リハビリテーションの対象としては中枢神経疾患,運動器疾患,呼吸器や循環器疾患,難病や代謝性疾患,さらには⾼齢者のフレイルなど多種多様だった。また,研究数,研究実施地域および分野は徐々に増えていた。今後さらなる遠隔リハビリテーションの発展が⾒込まれる。
著者
小玉 裕治 対馬 栄輝
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.60-65, 2014-04-20 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
3

【目的】本研究の目的は,股関節屈曲・伸展角度の違いによって,股関節外旋・内旋筋力が変化する様相をあきらかにすることである。【方法】健常人32名(男女16名,平均年齢21.9±3.8歳)を対象として,股関節外旋・内旋の等尺性最大筋力を測定した。股関節外旋・内旋筋力は,股関節内外転0°・回旋0°,膝関節屈曲位90°で測定し,股関節屈伸角度は伸展10゜,屈曲・伸展0°(屈伸0°),屈曲45°,屈曲90゜の4条件に設定した。【結果】股関節外旋筋力は,屈伸0°よりも屈曲45°または屈曲90°が有意に大きい値を示した。このうち女性では伸展10°よりも屈曲45°が有意に大きい値であった。股関節内旋筋力は伸展10°よりも屈曲45°または屈曲90゜が,屈伸0°よりも屈曲45°または屈曲90゜が有意に大きい値を示した。【結論】股関節屈伸角度の条件の違いによる股関節外旋・内旋筋力の差をみると,股関節外旋筋力は屈曲角度の違いによる変化は小さく,股関節内旋筋力は屈曲角度が増加するにしたがって大きな値を示すことがあきらかになった。
著者
鈴木 圭一 対馬 栄輝 石田 水里 小玉 裕治 新野 雅史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

<B>【目的】</B>ボクシング競技において,非利き手を前方に構え打つ非利き手ストレートパンチ(非利き手パンチ)は,あらゆるパンチの基本であり,最初に習得するべき重要な位置を占める.この非利き手パンチ動作の技能は,経験者と未経験者で大きく異なると予想できる.そこで,非利き手パンチ動作において経験者と未経験者の上肢筋活動を計測し,筋活動の様式による違いがないか検討した. <BR><B>【方法】</B>経験群は国体,インターハイ出場レベルの現役高校ボクシング部員男子8名(年齢17.3±0.5歳,身長169±4.7 cm,体重57.4±8.7 kg,経験年数1.7±0.3年)とし,未経験群は男子大学生8名(年齢20.3±1歳,身長170±4.4cm,体重58.4±8.6 kg)とした.対象者には裸足,上半身裸となってもらい,構えをとらせた.経験群は各個人の構えを,未経験群は一般的な教則に従った構えとした.パンチ動作は,素手による非利き手パンチの素振りと,指定ボクシンググラブ(グラブ)を装着した非利き手パンチをトレーニングバッグ(バッグ)へ向けて打撃する2条件とした.さらにそれぞれの条件でスピード重視,強さ重視の条件で5回ずつ,計4条件20回の動作を行わせ,パンチ動作開始の合図は40回/分に設定したメトロノームとした.これらの動作において表面筋電計を用いて,非利き手の大胸筋,上腕二頭筋,上腕三頭筋長頭・外側頭,三角筋前・中・後部線維,僧帽筋上・中・下部線維,広背筋の筋活動を記録した.グラブがバッグに接触する際には筋電計と同期したスイッチを使用した.パンチ動作条件の順序は,疲労,学習効果による影響を相殺するために循環法を用いて配置した. <BR><B>【結果】</B>バッグ打撃・スピード重視の条件において,経験群の全対象でグラブがバッグに接触した直後に三角筋後部線維,僧帽筋上・中部線維に強い筋活動が確認されたが,未経験群(8名中5名)はグラブがバッグに接触する前から筋活動が認められた.また,同条件において,経験群の全てでグラブがバッグに接触する直前(平均28.8±15.7 msec)に上腕三頭筋外側頭の筋活動がみられなくなるのに対して,未経験群では8名中6名でグラブがバッグに接触した直後まで上腕三頭筋外側頭の筋放電が確認された.バッグ打撃・強さ重視の条件におけるグラブバッグ接触時間は経験群125.2±46.5 msec,未経験群168.2±75.2 msecで有意差が認められた.<BR><B>【考察】</B>非利き手ストレートパンチ動作において,一般的に,未経験者や初心者など,非利き手パンチ動作において肩や腕に無駄な力が入るとよくいわれる.今回の研究の結果から,未経験者は非利き手パンチ動作の打ち始めから接触後まで拮抗筋の余計な筋活動が起こるタイミングを確認することができた.こうした点をフィードバックするなど,パンチ動作の指導に活用することによって,より効率の良い習得方法を考案することが可能となるだろう.<BR>
著者
十文字 雄一 対馬 栄輝 小林 秀男 津田 謙矢
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11702, (Released:2020-05-28)
参考文献数
24
被引用文献数
3

【目的】投球によって肩の疼痛(以下,肩痛)を有する野球選手は肩関節可動域や肩関節外旋筋力が低下しているが,これらは野球選手における一般的な特徴としても知られており,肩痛の発生に対しての因果関係は明らかになっていない。本研究の目的は,これらの因子が肩痛の発生に影響するかを前向き研究により検討することである。【方法】高校野球部員を対象とし,オフシーズンに肩関節機能評価とポジション等の聴取を行い,シーズンインから2 ヵ月間を観察期間とした。その後,肩痛発生の有無に対して各評価項目が影響するかを解析した。【結果】肩痛を発症した者は84 名中24 名で,多重ロジスティック回帰分析の結果,肩回旋筋力比,ポジションが有意な変数として抽出された。【結論】肩痛発生に肩回旋筋力比の低下が有意に影響した。投球障害の予防には,ストレッチの他,回旋筋力のバランスにも考慮する必要があると考える。
著者
宮城島 一史 石田 和宏 対馬 栄輝 百町 貴彦 柳橋 寧 安倍 雄一郎 小甲 晃史
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.9, pp.1188-1193, 2021-09-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
14

はじめに:本研究の目的は,腰椎椎間板ヘルニア(LDH)術後超早期の腰椎伸展運動の即時効果を調査することである.対象と方法:対象は,LDH摘出術を実施した32例とした.術後2~3日目に10分間の腰椎伸展運動(腹臥位での腰椎持続伸展保持)を実施した.結果:手術によりいずれの症例も症状は改善したが,更に10分間の腰椎伸展運動を行うことにより,腰痛・下肢痛・しびれのVAS(mm)は有意に改善した(腰痛27.7→17.8,下肢痛4.5→2.2,しびれ11.4→7.7,それぞれp<0.05).改善15例(46.9%),不変17例(53.1%)であり,悪化例は存在しなかった.10分間の腰椎伸展運動後,8例(25.0%)で腰痛が即時的に消失,3例(9.4%)で下肢痛・しびれが即時的に消失した.また,1例は下肢症状の範囲が即時的に縮小し,下腿後面と足部の痛みが足部の痛みのみとなった.患者満足度(VAS)は81 mmと良好であった.結語:術後超早期の腰椎伸展運動は,悪化例は存在せず,即時的な腰痛の軽減が得られ,安全かつ有効な理学療法であることを示唆した.
著者
対馬 栄輝
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
15 6

最近,理学療法における研究報告では,検査・測定に対する信頼性を検討する機会が増えてきた。それと同時に適用上の問題も出てきたと考える。信頼性係数として級内相関係数(ICC),クロンバックのα係数,Cohenの一致係数(κ係数),Kendallの一致係数(W係数)を挙げ,これら信頼性係数の特徴を個別に検討し,シミュレーションも行って正しい適用を見出すことが目的である。 ICCは適用範囲の広い信頼性係数であるが,検者または繰り返し測定間と被検者・測定のばらつきの比によって値が決まるため,SEMの併記が必要となる。κ係数は,3人以上の検者の場合はFleissによるκ係数が適用となるが,それと比較するときは検者が2人であってもFleissのκ係数を使う方が妥当である。また,W係数とκ係数を同時に用いて両者の欠点を補うような使用が望ましい。理学療法では順序・名義尺度のデータを扱う機会が多く,ICCよりもκ係数やKendallの一致係数が適用となるケースの方が多い。しかしどの係数も利点欠点があるため,いくつかの注意点を勘案して適用する必要がある。なによりも重要なのは,データをよく観察することであり,また係数やその有意性のみに固執しないことが挙げられる。
著者
対馬 栄輝 尾田 敦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.218-225, 1996-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
9
被引用文献数
5

変形性股関節症患者にみられる跛行の原因の一つとして歩行時股関節外転筋の反応が遅延,すなわち立脚期踵接地時における下肢筋の活動開始時期が遅延していると考えた。本稿の目的は変形性股関節症患者における歩行時下肢筋の活動開始時期を計測して,健常者と比較検討することである。変形性股関節症患者10名と健常者10名を対象として,自由歩行時の中殿筋と大腿直筋のEMG,並びにフットスイッチから信号を記録し,踵接地に対して股関節外転筋と膝伸展筋の活動が開始する時期を測定した。その結果,患者群は各筋における活動開始時期の間に有意な相関関係は認められず,各筋の活動開始時期に変調が起こっていると考えられた。また健常群と比較して各筋活動開始時期は有意に遅延しており,動作の予測制御(pre-activity)の遅延が生じていると考えられた。この結果から運動の協調性の改善を目的とした閉鎖運動連鎖での訓練を頻繁に取り入れていく必要性が予想された。
著者
葉 清規 対馬 栄輝 村瀬 正昭 大石 陽介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11713, (Released:2020-02-20)
参考文献数
34

【目的】本研究目的は,頸椎変性疾患患者に対する,McKenzie 法(以下,MDT)と頸部深層筋エクササイズ(以下,DCME),物理療法の効果を分析することである。【方法】MDT 群51 例(MDT,物理療法),DCME 群43 例(MDT,DCME,物理療法),物理療法群18 例に対し,5 ヵ月後まで定期的にCROM,NDI,JOACMEQ,VAS(頸部症状),SF-8 を測定し,治療経過の差を解析した。【結果】CROM,NDI,JOACMEQ,VAS,SF-8 で交互作用がみられ,MDT 群,DCME 群で,1 ヵ月後以降に改善がみられた。物理療法群では,2 ヵ月後にVAS の改善がみられた。複数の評価項目の効果量で,MDT 群,DCME 群,物理療法群の順に高値であった。【結論】頸椎変性疾患患者に対し,MDT,頸部深層筋エクササイズを実施することで,物理療法のみと比較して,多面的な改善を得られる可能性がある。
著者
吉川 光司 対⾺ 栄輝
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.47-57, 2022 (Released:2023-03-20)
参考文献数
51

遠隔リハビリテーションとは,スマートフォンやタブレット,パーソナルコンピューターなどの情報機器と情報通信技術(以下,ICT)を⽤いてリハビリテーション従事者と患者が物理的に離れている環境でリハビリテーションを⾏う⽅法である。健康相談や評価,運動処⽅などを,ビデオ会議を介し実施することで遠隔地など医療の提供が困難な地域および通院が困難な患者を対象としているが本邦では社会的認知度が低い。 そこで本邦への情報提供を⽬的として2001 年から2020 年までの遠隔リハビリテーションを介⼊⼿段とした臨床研究を収集しレビューを実施,62 編の論⽂から情報を抽出した。結果,遠隔リハビリテーションの対象としては中枢神経疾患,運動器疾患,呼吸器や循環器疾患,難病や代謝性疾患,さらには⾼齢者のフレイルなど多種多様だった。また,研究数,研究実施地域および分野は徐々に増えていた。今後さらなる遠隔リハビリテーションの発展が⾒込まれる。
著者
葉 清規 ⾚坂 清和 横⼭ 茂樹 対⾺ 栄輝
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
pp.202302, (Released:2023-06-28)
参考文献数
6

【⽬的】本調査では,理学療法ガイドライン第2版における背部,股関節,膝関節,⾜関節・⾜部機能障害理学療法ガイドラインの認知度および実践状況について報告する。【⽅法】運動器機能障害の理学療法ガイドラインについて,回答者属性,ガイドラインの認知度および実践状況のアンケート調査を⾏った。そのうち背部,股関節,膝関節,⾜関節・⾜部機能障害について得られた回答を分析した。【結果】ガイドラインの実践状況について,患者への説明や理学療法の選択として実践していることが多かった。各CQ において,臨床課題と概ね合致しており,アウトカムの改善は,「とても改善が得られた」,「わずかに改善が得られた」両者の回答割合が多かった。【結論】背部,股関節,膝関節,⾜関節・⾜部機能障害理学療法ガイドラインについて,各CQ における臨床課題との合致度,アウトカムの改善から,その有効性が⽰された。
著者
宮城島 一史 対馬 栄輝 石田 和宏 佐藤 栄修 百町 貴彦 柳橋 寧 安倍 雄一郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.291-296, 2018 (Released:2018-10-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対する入院中の電気療法の継続効果を検討することである。【方法】対象は,腰椎後方手術後に下肢症状が遺残した50 例とし,症状部位に10 分間電気療法を実施した。入院中に電気療法を継続した例(電気継続群),電気療法の継続を中止した例(電気中止群)の2 群に分類し,下肢症状のVAS を調査した。【結果】電気継続群は39 例,電気中止群は11 例であった。電気継続群のVAS(術前→初回電気療法前→退院時)は70 →40 →14 mm であり,各時期で有意差を認めた。電気中止群のVAS は63 →45 →41 mm であり,初回電気療法前から退院時で有意差を認めなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時のVAS(オッズ比:1.04)が選択された。【結論】腰部疾患手術後の遺残下肢症状に対し,入院中に電気療法を継続した群は,退院時の症状の回復が良好であった。
著者
対馬 栄輝 石田 水里
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3160, 2009

<B>【目的】</B>股関節副運動の障害を把握するために,股関節屈曲(股屈曲)・伸展(股伸展)時の大転子の動きを触知・観察する方法が考案されている(Sahrmann,2005).異常のない者では股屈曲時に大転子は比較的一定の位置に保たれ,股屈曲で後方へのすべりが起こらないと大転子は前方(腹側)に移動するといわれる.この検査法は簡便であり,臨床的にも有用だと考える.しかし実際,健常者では股屈曲・伸展によって大転子は動かないのか,動くとすればどの程度動くのかを明確にしたい.そこで健常成人を対象に,他動的な股屈曲・伸展における大転子の動きを測定した.また下肢伸展挙上(SLR)の角度や,大腿骨前捻角評価としてのクレイグテストとの関連も検討した.<BR><B>【対象と方法】</B>対象は健常成人6名(男性3名,女性3名)とした.平均年齢は20.8±0.4歳,平均BMIは20.8±3.4であった.検者は股屈曲・伸展を行う者,非測定下肢と骨盤を固定する者,大転子の位置を触知する者の3名とした.検者と被検者には事前に研究目的,内容に関する説明を十分に行い,同意を得た上で参加してもらった.測定肢は左下肢とした.被検者を平坦なベッドに背臥位とさせ,股関節中間位での大転子位置を触知し,円形のシールを貼ってマークした.次に背臥位で(1)股屈曲45°のSLR,(2)膝関節屈曲位(下腿が床と平行な状態)とした股屈曲45°と(3)腹臥位において股伸展10°としたときの,それぞれ大転子の位置を円形シールでマークした.各運動は他動運動とし,股関節回旋が起こらないように注意した.被検者の左側矢状面に対して垂直に設置したデジタルカメラ(Panasonic社製DMC-LZ5)で,マークした股関節周囲部を撮影した.撮影像をもとに画像計測ソフト(PLocate V1.0k)にて,股関節中間位に対するSLR・股屈曲・股伸展時の大転子移動距離を計測した.その他,被検者の他動的最大SLR角度の測定,クレイグテストも行った.<BR><B>【結果】</B>SLRの大転子移動距離は後方(背側)に平均1.6cm(範囲-1.3~3.8cm),股屈曲では後方に1.1cm(-1.5~1.6cm),伸展時は前方(腹側)に0.4cm(0.0~0.8cm)移動した.各大転子移動距離とSLR角度との相関はr=-0.512~0.206で有意ではなかった.クレイグテストとは股屈曲時の大転子移動距離のみがr=-0.967で有意(p<0.01)となった.<BR><B>【考察】</B>SLRと股屈曲では,ほとんどの者で大転子が後方に移動したが,このことは前捻角の影響から予想していた.股伸展は小さい可動範囲のために,移動量も少なかったのだろう.しかしクレイグテストで得た前捻角の大きい者ほど,股屈曲において大転子が大きく前方に移動する矛盾が生じた.前捻角の大きい者は大腿骨アライメントが最初から内旋位となっている可能性がある.また,後方すべりが生じ難いのかもしれない.この点については今後さらに追究する必要がある.
著者
石田 和宏 対馬 栄輝 梅野 恭代 佐藤 栄修
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.731-737, 2011 (Released:2012-02-04)
参考文献数
17

〔目的〕本研究の目的は,brief scale for evaluation of psychiatric problems in orthopedic patients (BS-POP)における測定の信頼性を求めることとした.〔対象〕BS-POPには,“患者用”と“治療者用”が存在する.対象は,“患者用”で慢性腰痛者10名,“治療者用”で腰椎椎間板ヘルニア患者42名とした.〔方法〕“患者用” と“治療者用”の検者内・検者間信頼性を求め,各質問項目別ではκ係数,順位相関係数,一致度を指標とした.〔結果〕“患者用”のICC(1,1)は0.98,“治療者用”のICC(1,1)は0.90,“治療者用”のICC(2,1)は0.87であった.質問項目別では“治療者用”における検者間信頼性の2項目を除き,κ係数あるいは順位相関係数にて中等度以上の相関または81%以上の高い一致度を示した.〔結語〕BS-POPにおける測定の信頼性は全般的に良好であった.しかし,“治療者用”の一部の項目では,検者間信頼性が低かった.
著者
平山 和哉 有原 裕貴 対馬 栄輝 近江 洋一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.31-36, 2016-08-30 (Released:2016-09-07)
参考文献数
16

腰椎牽引療法によって効果を実感している患者の特徴を明らかにすることを目的として,横断的にアンケート調査を行った。対象は,当院において腰椎疾患の診断を受け,腰椎牽引を実施している51名である。アンケート内容は症状の詳細と牽引効果の実感についてとした。統計解析は,従属変数を牽引効果の実感,独立変数を症状の詳細および電子カルテから抽出した性別,年齢,診断名,画像所見,併用治療の有無として多重ロジスティック回帰分析を実施した。当院における牽引療法の対象者は高齢者,かつ長期通院者が多かった。対象者の72.5%が牽引による効果を実感していた。牽引による効果を実感することに関連する因子として,腰の重苦しさがある,運動療法の併用あり,罹患椎間数,年齢の4項目が選択された。今後前向き研究を行う際には,運動療法の併用や画像所見についても考慮すべきことが示唆された。