- 著者
-
小久保 欣哉
- 出版者
- 一般社団法人日本PDA製薬学会
- 雑誌
- 日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.1-9, 2013 (Released:2013-08-31)
- 参考文献数
- 21
本稿は,定量的な分析を通じて国内大手製薬企業の企業間合併と技術提携がイノベーションの本源的要因に与える影響について明らかにすることを目的としている。分析には,国内大手製薬企業を対象に質問票調査回答を得た 43 社の結果データを用いた。分析の結果,(1) 国内大手製薬企業の戦略として,R&D 投資と M&A の実施には代替的な関係がみられる一方,技術提携と M&A は補完的な関係が見られた。また,技術提携は技術機会を多様化させる効果を持つことが明らかになった。(2) 国内大手製薬企業間の M&A においては,専有可能性を重要視しており,規模を追求するために水平統合的な M&A を実施している。専有可能性を追求するうえでは,「特許での模倣防止」「特許でのロイヤリティ確保」「販売・サービスで有利構築」を重要視している。(3) 国内大手製薬企業間の合併・統合は,専有可能性を高める一方,技術機会の多様化は図れないというトレードオフな関係が見られている。(4) 国内大手製薬企業は,水平的 M&A に加えて,バイオ医薬品の獲得を目的とした垂直統合的な M&A を実施している,などの示唆が得られた。 本研究には,検討すべき多くの課題が依然として残されている。第 1 に,定量分析としては,サンプル数が 43 社に留まっていること。第 2 に,本研究でのイノベーションへの直接的影響や因果関係については推定の域を出ないということ。第 3 に,本研究対象企業の分析は一時点に留まり,M&A や技術提携後の当該企業のパフォーマンスに関する追求がなされていないことが挙げられる。