著者
小口 理一
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では、2次元クロロフィル蛍光装置を利用し、光阻害耐性に変異を持つ植物の探索を目的とした。薬剤処理で変異を誘発した個体とcontrolの野生型とを、2次元でのクロロフィル蛍光が測定可能なクロロフィル蛍光測定装置を用いて比較することで、光阻害の程度が有意に野生型と異なるものを探索した。これまでに約7000個体で、スクリーニングを行い、118個体の変異体候補が探索されてきた。この得られた変異体候補を用いて、詳細な形質評価を行う事で、どのような遺伝子が光阻害耐性に関わっているのかを明らかにし、光阻害および光防御のメカニズムをより詳細に明らかにして行く事ができると考える。
著者
小口 理一 菱 拓雄 谷 友和 齋藤 隆実 鍋嶋 絵里
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.71-82, 2009

本特集の基となった第55回日本生態学会福岡大会における生理生態学企画集会は、主に地上部を見て植物の生態を研究している研究者が地下部のどのような性質に注意をして研究をすすめていく必要があるのか、勉強する機会を設けるというコンセプトで開かれた。地下部の水透過性は環境に合わせて、アクアポリンを代表とするタンパク質の性質に依存し数十分のオーダーですばやく変化するとともに植物全体の水透過性に大きく影響する事、地上部の活動(蒸散)が地下部の活動(呼吸)と相関を持ち、地上部を見ているだけでは気づく事ができないコストが地下で発生している事、共生を介した栄養塩獲得能力が地上部と地下部を結ぶシグナルによって制御されている事、地下部にも地上部以上に機能分化したモジュールがありその機能ごとに場合分けが必要である事、これらの企画集会で紹介された研究結果は、地上部の研究者達にとって地下部は無視できないものである事を改めて認識させるに充分なインパクトがあったと思われる。本総括論文では、前半でまずこれらの研究成果について生態学的視点から振り返る。そして、後半では本特集によって見えて来た「地上部と地下部のつながりの理解のために必要な研究とはなにか」について、細根系の機能的ユニット、栄養塩吸収と水吸収のコスト、根の水分生理というトピックに分け、現状と展望を紹介していきたい。