著者
富田 昌平 小坂 圭子 古賀 美幸 清水 聡子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.124-135, 2003-08-15

本研究では,Harris, Brown, Marriott, Whittall, & Harmer (1991)の空箱課題を用いて,幼児の想像の現実性判断における状況の迫真性,実在性認識,感情喚起の影響について検討した。2つの実験において,実験者は被験児に2つの空箱を見せ,どちらか一方の箱の中に怪物を想像するように要求した。その際,実験者は披験児に怪物の絵を見せ,その実在性の判断を尋ねた。想像した内容についての言語的判断と実際的行動を求めた後,実験者は被験児を部屋に一人で残し,その間の行動を隠しカメラで記録した。最後に,実験者は被験児に想像した内容についての言語的判断と感情報告を求めた。状況の迫真性の影響は,実験者が事前に怪物のお話を問かせる例話条件,実験者が魔女の扮装をしている扮装条件,それらの操作を行わない統制条件との比較によって検討した。実在性認識と感情喚起は,それらの質問に対する回答と他の測度での反応との関連から検討した。以上の結果,(1)状況の迫真性の影響は場面限定的であること,(2)実在性認識の影響は言語的判断における信念の揺らぎに見られること, (3)感情喚起の影響は部屋に一人で残されたときの自発的な行動において見られることが示された。
著者
岩木 信喜/小坂 圭子/近藤 武夫/羽渕 由子 小坂 圭子 近藤 武夫
出版者
九州ルーテル学院大学
雑誌
紀要visio : research reports (ISSN:13432133)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-10, 2003-07-31

本研究では,互恵的利他行動の文脈における裏切り者の名前が,再発チェックのために効率的に検索されるのかどうかを検討した。16名の大学生が2セッションからなる実験に参加した。被験者には,第1セッションで互恵的利他行動が破綻する文章を読ませた。文章には,裏切り者と蔓切られる者,利害には無関係の中立者の3名が登場した(利害変数)。また,この文章読解では,被験者自身の名前が裏切られる者として登場するかどうかによって関与の有無を操作した(関与変数)。第2セッションでは,先の文章に登場した人物名かどうかを判断して選択的に反応する記憶探索課題を行った。もし裏切り者の検索過程が再発チェックのために効率化されるならば,その反応時間は少なくとも中立条件よりも短くなるはずであり,その程度は被験者自身に損害が及ぶと想定される場合の方が顕著であると予想された。実験の結果,関与有り条件では裏切り者に対する反応時間が中立条件よりも有意に短かったが,そのような差は関与無し条件では認められなかった。この結果は,先の予想を支持するものであった。