著者
植村 豪 小寺 厚 津島 将司 河村 雄行 平井 秀一郎
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.222-229, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
8

CO2を用いた原油増進回収(Enhanced Oil Recovery, EOR)は,原油が取り残された油田にCO2を圧入することで原油回収率を高める技術であり,原油の増産と同時に二酸化炭素の隔離が可能な技術として,近年注目されている.EORでは油田中に圧入されたCO2が残存油に溶解することで,粘性低下,体積膨張など,油の物理化学的性状が変化し,原油回収率が高まるとされている.油へのCO2の溶解が原油回収率の向上と密接に関係していると考えられるものの,CO2の溶解に関するメカニズムは未だ解明されていない.このため,本研究では油へのCO2の溶解に関して分子論的な知見を得ることを目的とし,分子動力学シミュレーションを行った.単成分系を仮定した油(シクロヘキサン,C6H12)を用い,CO2が溶解した平衡状態において解析を行い,さらに分子間相互作用の一つであるクーロン相互作用が溶解現象に及ぼす影響についても考察した.その結果,油に対してCO2がクラスター構造を伴って溶解していることを示した.
著者
中山 雄二朗 小寺 厚志 宮崎 直樹 上妻 精二 瀧 賢一郎 大島 秀男
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.223-231, 2012 (Released:2012-04-25)
参考文献数
13

われわれは,過去5年間にArtzの基準で重度熱傷と分類され,熊本医療センターで手術が施行された46症例を対象として,在院死亡の予測因子を検討した.各因子の予測の精度はReceiver Operating Characteristic曲線下面積(AUC)で検討した.在院死亡は12例で在院死亡率は約26%であった.AUCは熱傷指数で0.88,熱傷予後指数で0.85,総熱傷面積で0.84,受診時の白血球数で0.84と,それぞれ高値を示した.白血球数は一般的かつ簡単に測定される検査値であるが,算出が複雑な熱傷予後指数や総熱傷面積と同程度に,重度熱傷患者の在院死亡の予測に有用な因子である可能性が示唆された.
著者
佐野 信行 仁尾 正記 佐々木 英之 小寺 厚志 大井 龍司
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.679-683, 2005
被引用文献数
1

複数磁石誤飲による小腸内瘻形成に起因した絞扼性イレウスの1例を経験した.症例は3歳4カ月の女児, 主訴は腹痛, 嘔吐.異物誤飲に関連するイレウスの疑いで, 発症36時間後に紹介となった.腹部症状は軽度で発熱はなく, CRPも陰性であった.CTで上腹部に径2cmのリング状に配列する金属片を認め, 家族からの情報で, 8個の磁石と考えられた.X線写真上, 前日と同じ部位に停滞しており, 複数磁石による腸管損傷の可能性を考慮して緊急手術を行った.腹腔鏡下に磁石カテーテルを用いて異物の位置を同定し, 臍部創から病変部腸管を体外に引き出したところ, Treitz靭帯より40cmおよび120cm肛側の空腸同士が磁石で圧挫され内瘻を形成しており, それに伴って生じたblind loopの一部が絞扼性イレウスに陥っていた.同じ創より絞扼腸管を切除した.内瘻の存在によりイレウス症状が軽減されていたものと考えられ, 稀な病態であった.術後経過は良好である.