著者
犬塚 美輪 三浦 麻子 小川 洋和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.35-47, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

本研究では,大学での授業において,試験時に参照するためにノートをまとめ直す(事後ノート作成)方略に関する認知とその変化を検討するとともに,作成された事後ノートの質的特徴と成績の関連を検討した。研究1(n=171)では,講義科目において,試験時に参照できる場合に事後ノート作成の有効性や工夫の認知が高く,コストが低く認知されることが示された。また,作成された事後ノートの記述量と図の使用頻度が事実問題の成績を予測した。研究2(n=114)では演習科目において中間テストと事後ノート作成を繰り返した。期末試験問題のうち,事実問題には事後ノートの記述量と体制化の指標の正の効果,まとめ文をそのまま写すことの負の効果が見られた。知識適用問題と説明問題では記述量の効果は有意ではなく,体制化とまとめ文の写しの有無が成績を予測した。方略としての認知は,工夫の認知に有意な変化が認められたが効果量は小さかった。研究3(n=45)では,演習科目において事後ノート作成の繰り返しに加え明示的教示を実施した。作成された事後ノートの体制化の指標が知識適用問題の成績を予測する結果が得られ,方略の認知に関しては,工夫の認知が有意な上昇を示した。