著者
高橋 宏三 藤永 洋 小林 元夫 内藤 毅郎 飯田 博行 青木 周一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.643-647, 2002-11-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

高齢者においてリウマトイド因子陰性の多発性関節炎を診たときに, 考えるべき疾患はいくつかあるが remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema (RS3PE) 症候群もその1つである. これまで7症例経験した. 男2例, 女5例. 年齢は平均75.9歳 (67~82歳) と高齢で, 比較的急速な発症, 多関節炎, 両側の手背足背の pitting edema, リウマトイド因子陰性, 抗核抗体陰性ということが共通しており, McCarty らの提唱するRS3PE症候群とよく一致した. ただし本疾患は性別では男に多いとされているので, この点では異なっていた. 発熱を7例中4例に認め, 初診時CRP 0.9~27.8mg/dl, 赤沈70~140mm/hrであり, 全例が変形性関節症を伴なっていた. いずれも経過良好で, 有効治療はプレドニゾロン20mgが3例, 同10mgが2例, 非ステロイド性抗炎症薬が1例, 漢方薬が1例であった. 本邦での報告例は少ないが, まれな疾患ではないと思われる. 特に高齢者医療においてはこの疾患を知っていることが大切であり, 日常診療における注意深い観察が必要である.
著者
斉藤 功 小林 元夫 金井 鐘秀
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

矯正治療における歯の移動に際しては、機械的外力に対して歯根膜線維芽細胞が多様な生物化学的応答を示すことが報告され、それに引き続いて生ずる破骨細胞および骨芽細胞による骨の吸収・形成に何らかの影響を及ぼしていると考えられている。本研究では、in vitroの実験系を用いて培養したヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)にメカニカルストレスを加え、そ培養上清が骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1細胞)にどのような影響を与えているかについて検討した。HPLFは、13-16歳の患者の小臼歯から採取した継代8-12の培養細胞を、また骨芽細胞様細胞としては、継代17-19のMC3T3-E1細胞をそれぞれ実験に用いた。メカニカルストレスは、コンフルエントになったHPLFの細胞層上にカバースリップを置き、その上にガラス製円筒をのせ1.0g/cm^2で加圧した。HPLFをそれぞれ1, 3, 6, 12, 24時間加圧した後、conditionedmediumを採取し、stressed conditionedmedium (S-CM)とした。一方、加圧実験と同様の条件で培養して加圧を行わずに採取したHPLFのconditionedmediumをnon-stressed conditionedmedium (NS-CM)とし、さらに細胞培養していないmediumをcontrol medium (CM)とした。S-CM, NS-CM, CMをそれぞれ6well dish上でコンフルエントになったMC3T3-E1細胞に添加し、24時間インキュベーションを行った後、ALPase活性およびcAMP産生量を測定した。その結果、S-CMによってMC3T3-E1細胞のALPase活性とcAMP産生量とは、NS-CM, CMを添加した場合と比較して時間依存的に有意に上昇した。このことから、S-CMはMC3T3-E1細胞の細胞分化能ならびに細胞応答性を上昇させていることが明らかとなった。また、Indomethacinを添加することで、S-CMによるMC3T3-E1細胞のALPase活性が有意に抑制されたことから、S-CMによるMC3T3-E1細胞のALPase活性の上昇にはプロスタグランディンが関与していることが示唆された。