著者
小林 孝雄
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.89-98, 2016-03-30

セラピスト・フォーカシングは、セラピスト援助法としてその意義が検討されてきている。しかしながら、セラピスト・フォーカシングをロジャーズ理論の視点から検討されることは少なかった。本論では、ロジャーズ理論の「十分に機能する人間」ならびに「共感」「自己共感」の概念を主に用い、事例の提示も踏まえて、セラピスト・フォーカシングは、セラピストのありようの実現を通じて、クライアントに肯定的変化をもたらす意義があることを示すことを試みた。これまで、セラピスト・フォーカシングは、セラピーにおけるクライアントの変化に直接関連づけて論じられることが少なかった。セラピスト・フォーカシングのこれまで注目されてこなかった意義について議論した。
著者
小林 孝雄
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.43-53, 2018-03-30

ロジャーズによる「治療的人格変化の必要十分条件」論文は、ロジャーズ理論における最重要論文とみなされている。しかしながら、この論文は、自然科学的心理学の枠組みで記述することを要請されたもので、必ずしもロジャーズの意図に沿ったものではない。とはいえ、自然科学的心理学で認められることもロジャーズが望んだことでもあった。この論文は、記述されることになった経緯があるのであり、この論文単独では、ロジャーズ理論を正しく理解することはできない。本論考では、この論文の成立経緯と、前後のロジャーズ理論の展開について、主に「共感的理解」に注目し、ロジャーズ理論の正しい理解のために必要な論点を整理する。
著者
ナイフー チェン 小林 孝雄 佐井 りさ
出版者
日本経済国際共同センター
巻号頁・発行日
2006-08

銀行の貸出債権は流動性が低い.これは,貸出債権が貸出先企業のプライベート情報をふんだんに含むためである.一方,貸出債権から生じるキャッシュフロー自体は流動的であることが多い.近年のフィナンシャル・イノベーションは後者の点に着目して,銀行貸出債権を原資産とするクレジット・デリバティブやMBS,CMO,CLO,CBOに代表される証券を発行し,貸出債権を市場に売却することを可能にした.これによって,銀行は貸出債権の信用リスクを広範な投資家層に移転し,プライベート情報と信用リスクを凝縮したレジデュアル部分だけを保有すればよくなった。われわれの試算によれば,商業用貸出債権ポートフォリオを証券化するにあたって,銀行が留保するべきレジデュアル・トランシェはわずか3%前後である.これこそが,市場の論理から決定される銀行の自己資本比率である.この仕組みに加えて,決済システムの安全性を確保できれば,バンキング・システムは従来の金融仲介機能を果たしながら,完全に安全なシステムに生まれ変わることができる.かつてアービン・フィッシャーをはじめ幾人もの有力な経済学者達が主張した「100%マネー」のバンキング・システムは,新しいフィナンシャル・テクノロジーの登場によってその実現可能性を飛躍的に強めた.この新体系は,預金保険の利用に起因する銀行行動のモラル・ハザードに苛まれ続け,しばしば危機に晒されてきた従来の部分リザーブ型バンキング・システムより明らかに優れている.
著者
小林 孝雄
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
no.26, pp.67-75, 2004-12-20

The purpose of this article is to examine the definitions of empathic understanding made by Rogers(Rogers, 1957. 1959. 1975). He defined empathic understanding (or being empathic) as a "state" at first, and later as a "process". Some qualities of descriptions as follows were pointed out. The definition as a process includes descriptions about `to do', but some descriptions express the actions that can not be directly realized. The definition as a state describes the quality of subjective experiences that can be directly realized in nature, but have problem how to realize `as if' quality. The definition as a state is useful yet to consider realizing the therapists' conditions. And the definition as a process is useful rather in clinical practices.